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1.

エイプリールフールは午前中しか嘘をついてはいけない。という話を聞き、思い浮かんだのがこのストーリーです。

感想をいただけると嬉しいです^^

 バスから見える街並みは、いつもと変わらない。


 俺は疲れが抜けることのない体を、バスの揺れに任せながら、生気のない目でボンヤリト流れる景色を眺めていた。


 バスはいつもと同じバス停で止まると、数人の客を排出して走り出した。


 幾度か発信停止を繰り返し、東坂あずまざか病院の前で止まった。


 俺はバスから降りると、病院へと歩き出す。


 どんなに疲れていても、どんなに辛くても、ここにくれば安心できる。


 広い駐車場を早足で通り過ぎ、正面玄関が見えてきたとき、俺は足を止めた。


 そこには、見事に枝を伸ばした桜の木が植えられているのだ。


 木は小さな芽をぎゅっとつぶっているように、固いつぼみをつけ、枝全体を白く染め始めていた。


 俺は大きなため息をこぼすと、再び歩き出した。


 俺の足は、はやる心を代弁するように急ぐ。


 エレベーターに乗り込むと、三階のボタンを押した。


 押し上げられるような揺れを感じるが、この揺れにも慣れた。


 始めの頃こそ、この揺れが嫌でたまらなかった。浮くような感覚に不快感を覚えたものだ。

 

 エレベーターというものが、子どもの頃からダメだったように思う。


 そうだ、子供の頃は親にしがみついて泣いていた。


 

「慣れるもんだな」



 エレベーターが三階につくと、扉が静かに開く。が、俺には扉が開く数秒間すらもどかしく、廊下が見えた瞬間にエレベーターから飛び出していた。


 弾む心を抑えながら、俺は304と書かれたドアを開ける。


 きっと、ドアの向こうでは彼女が優しい笑みを浮かべているはずだから。




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