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詩音 高校1年目の春2 頼まれた人より。

頼まれた人視点。→→→→

視界の隅に四角いアイコンが光っていたのを気づいたのは、この世界に接続直後だった。

どうやら現実での幼馴染みからのようで、厄介ごと再来かと肩を落として迷宮の地階目指して進む。

ぼんやりと淡い光が同じ場所をゆらゆらしているのを見て、あの場所かと思い、近づいていく。

うすぼんやりと闇に目が慣れて視界が広がってくると、その光は何であるかも見えるようになる。


「旗…?というかあれって噂の初心者RPロールプレイングプレイヤーじゃ?本気で初心者だったとかいうオチか?」

おいおい、どうするんだよアレ…と、見捨てて引き返したい思いに駆られる。

ここに幼馴染みがいないってことはつまり、『拾う神』にすら見捨てられた初心者もどきであって、自分の力量でなんとかなるとは思わないが、するしかないだろう。


地下階層ならまだしも地上階に長居するわけにはいかないのだから。



「旗を振っていたのって君かい?」

柔らかく声をかける。

向こうは反対側を向いていたから、見えなくてもありだけれど、いきなり殴られないといいなぁと思いつつ。



結果としては、上に跳ねた後横に跳んだ。

距離をあけてぎょっとした相貌に浮かぶのはこちらの真意を推し量っているようにも見える。


(おいおい、何言ったんだ…?)

「この旗凄いな!」

第一声が、それなことにもやや度肝を抜かれる。

が、それも致し方ないだろう。


旗は迷子案内人を待つ目印で、本来なら誰でも声をかけて案内するだろうが、悪声が広まりすぎた結果だ。

親切で声をかけた相手が、拾う神であってもなくても、どんな理由であれその手を拒むなら、元々最小限の交流でもなんとかなってしまうこの世界で、あえて交流しようと思うものはそんなにいない。


自分も頼まれなければ遠巻きに見てた。

初心者 RPロールプレイングに巻き込まれて時間を無駄遣いしたくないから。


「その旗は本当の初心者か、初心者を装った悪質プレイヤーを判断するツールだからね」

君は、本当に初心者だったんだね…と、続けてしまいそうになって慌てて言葉を呑み込んだ。



「えっ…」

驚いたあとの苦々しい表情、気になるのはその次に来る行動。

誰かを恨むのか、それとも…

心配を他所に、彼は旗を見ている。


「まあ、ここで話も危ないから出ようか」

入口を指して戻ることを提案すると従ってくれる。

後で幼馴染みに話を聞こう、詳しい話を。

この分なら、ちゃんと聞き分けがあるのに何で放置したままでヘルプ要請が来たのかがさっぱりわからない。


迷宮は暗い。

外に出た時の光が安心と気持ちよさを担当してくれるようだ。

じめじめはしてないし、適宜風は通っているから淀むこともない。


ホームタウンに戻って行きつけの居酒屋に入ると、要請元の幼馴染みの姿が見える。

手を振って呼ぼうとしたら、先に顔を背けられて、背中が語っているようだった。

《私は無関係》と。


深追いせず、奥の方にある比較的喧騒としていない場所を陣取り、相手にも勧める。


視界の隅で光るアイコン。それとなく操作してみると、

《私はいない方が話進むと思う》

なんだそれ?と思うけど、本人がそういうならそうなんだろうなと誘うのは諦めて話に入ることにする。


「まずは自己紹介から。僕は琉依-ルイ-。音の一弓ひとゆみ。君は、正午の詩音だよね、特徴は聞いてるよ」

言ってから気づく。そうだった、初心者だったんだっけ、と。

一弓ひとゆみっていうのは、言葉1、音楽9の人、数字じゃ詰まらないと自分の特技に合わせてよく自己紹介に使うよ。君の正午は丁度半分、55の割合のみ使える。 この世界では中々居ないから、全マップで保護対象として管理者権限を持つ一部のプレイヤーにはアナウンスされる」

彼は目を大きく見開いて何度目かの驚いた表情を浮かべる。

丁度テーブル脇を通った店員に水をもらい、軽く摘まめるものをたのむ。


「管理者権限?運営側の人間がいるのか?アナウンスって?道理で俺が名乗ってないのに知ってるのかと」

テーブルに両手をついて立ち上がる様子は軽い興奮状態。

言葉選び間違えたかなと苦笑する。

まあ、座ってよと彼に腰を下ろすことを促し、軽く水で喉を潤す。


「各ダンジョンに隣接した市や町には必ず《拾う神》と呼ばれるプレイヤーがいる。義務が発生するかわり一部管理者権限の譲渡が行われる。チュートリアルを出たアナウンス対象プレイヤーの情報が、各地にいる《拾う神》に通達され情報共有される。と言っても名前と外見位らしいよ」

自分のことに置き換えて考えてみると、ぎょっとするよねって思う。

知らない人が、自分を個別認識してあれは琉依だって名乗る前から知ってるなんて。

一人でこの世界に放り出されたなら余計にそう感じてもおかしくはないから。


正午はんぶんのバランスっていうのは理想的で誰もが狙っているといっても過言じゃない。迷宮攻略組からしてみれば喉から手が出るほどだろうな。だから、システムに保護されたチュートリアルマップから出た時点で、管理者権限の一部譲渡を受けた《拾う神》のいる市や町に保護される必要があるんだ。街中で誘拐は出来ないから。ここまでは理解できる?」

店員が話の切れ目に丁度タイミング良く、焼き鳥モドキを持ってきてくれた。

サービスだと言って少し多めに盛ってくれたようだった。

現実世界の鶏肉とは違い、この世界に創造された鶏に近い羽を持ったウサギモドキだ。

モドキがついているのは羽を持って飛ぶからだ。跳ねるのではなく、明らかに飛ぶ。

塩味の焼き鳥…改め焼き兎モドキを咀嚼しながら勧める。

見た目に騙されるならまんま焼き鳥だ。味は少し違うけど。


「頂きます。…まあ、なんか味の違うような焼き鳥?」

一人で食べるのも味気ないからついでに誘う。

店の方だってそれを見越して多めに盛ってくれたのだから。

一人で食べきるなら、半分はタレの方がいい。飽きる。


「まあ、鶏肉じゃないしね、羽が生えた兎モドキだから焼き兎モドキ?比較的初期から良く捕れるよ。味も悪くないし」

詩音はぎょっとして串を引き抜き、じろじろとみる。

まあ、兎に羽が生えた現物見ないと納得出来ないだろうなとは思う。

「その拾う神の居ない所は誘拐があり得るってことか?そんな一般プレイヤーに毛が生えた権限くらいで何が出来るんだ?」

彼のいうことは尤もだと思う。

拾う神を実際に見ていなければ、デスヨネーで終わる。

「ランダム変数に影響するんだ。同じ町でもいるのと居ないのとで4割位変化する。人がいる分迷子は増えても、すぐに見つかる。まあ、これは後々だな」

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