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童話っぽいお話

嘆きの歌姫と命の巻物

作者: 榎本あきな
掲載日:2012/06/16

※忠告

1.このお話を、民に話してはいけない。

  話せば、あなたはいじめられるであろう。


2.このお話の、道化師を探してはいけない。

  探せば、あなたの人生は台無しになるであろう。


3.このお話を、城の人に話してはいけない。

  話せば、あなたは殺されるであろう。


最後に。このお話を他国に伝えてはならない。

    伝えたらあなたは――――――


この忠告は、注意ではなく忠告だ。

破ってもいい。だが…ひどい目にあうのはあなただ。

そこを踏まえて、この本を読んでほしい。


名もない大陸に、ひとつのお城があった。


そのお城では、王様が泣いていた。……棺おけの目の前で……


王様の一人娘である姫が何者かに殺されたのだ。


毒殺なのか殺害なのか自殺なのか…それはまったくわからない。


そんな王様に近寄る影がひとつ…


何かと思い振り返ると…そこには道化師(ピエロ)がいた。


その道化師はいった。


「私が、あなたの涙を止めて見せましょう…」


そういい、ショーが始まった。


最初は、なぜこんなところにこんな奴がいるのだと、姫が亡くなったのに悲しみがなくなるわけない。


そう思っていた王様は…次第にショーにのめり込んでいった。


もう、目の前のショーしか眼中に入らない。そんな感じだった。


いつのまにか、王様の涙も止まっていた。


だが、そんなショーにも終わりが来る。


それが姫との別れと同じような気がして、王様はまた涙を流した。


すると、道化師がいった


「そこまで悲しむならば、これを差し上げましょう」


そういい道化師が王様に渡したものは…巻物。


王様が首を傾げていると、道化師が説明した。


「それは命の巻物。死人を…生き返らせることができます」


それを聞き、王様は飛び上がった。


姫を生き返らせることができる…と。


王様が巻物に目を通していると、道化師がいった。


「せいぜい使用方法には気をつけてください。…人形の王様(マリオネットキング)?」


何の名前か理解ができず、王様が道化師に聞こうとしたときは、道化師はどこかに消えていた。


そして、そんなことよりも姫を。と思った王様は、道化師を思い出すことはなかった。


***


王様がいるであろう部屋からは喜びの声が聞こえる。


そう。姫が生き返ったのだ。


ドタドタと王様の部屋へかけつけてくる人々が大勢いる。


その中で、一人だけ逆流している人がいた。


王様の側近だ。


彼は、道化師と王様の会話を盗み聞きしていたのだ。


側近は自分の部屋に戻り、とある人物に依頼をした。


「王を暗殺し、巻物を奪え」と…。




数日後、王は何者かによって殺された。


姫が生き返った直後に亡くなった事により、これは天罰だと人々は思った。


姫を生き返らせた代償なのだと。


人々は嘆き悲しみ、その元となったと思われる姫に罵声を浴びせた。


そんなときに出てきたのは一人の男性。


王の側近だった人だ。


側近はこういった。


「これは隣国の策略。姫を眠らせ、姫が起きた時に王を殺す。そうすれば人々は姫を恨み、暴動を起こし、わが国は内戦をすることになり、結果自滅する。そういう策なのだ」


側近の言葉を聴き、人々は我に返った。


それと同時に、人々の思いは隣国への怒りへとなった。


この国を陥れようなんて、なんて下劣な国だ。と…


嵌った。側近は誰にもわからないように にやり と笑った。


側近が言った言葉は全部嘘である。


隣国はそんなことは企てていない。むしろ平穏に過ごしているだろう。能天気に。


これは側近が王になり、この国が他の国を倒す第一歩なのだ。


そして…側近は人々を動かすための一本の糸を紡ぐ。


「腐りに腐ったあの隣国を…我らの手で潰そう!!」


この国に、人々の怒りと決意の轟きが響き渡った。


***


皆の支持を得、側近は王となった。


そして、民間の者や兵士などを集め、隣国へと攻め入った。


結果は勝利。しかし、こちらの被害も大きい。にも関わらず、側近は他の国に攻め入った。


絶対の勝利を確信して。


なぜなら…彼の率いる軍は全員(アンデット)だからだ。


そう。実際だったら負けていたはずが、命の巻物によって蘇らせた事で勝利を掴んだのだ。


だが、その見た目の悲惨さから、(アンデット)と呼ばれるようになったのだ。


やはり、そんなことが続くといつかはバレるというもの。


側近のこのことがバレ、市民は側近に戦いを挑んだが、結果は惨敗。


死を恐れない屍に勝てるはずもない。


その事実に、国の人々は嘆き悲しんだ。


いつになったら、私たちの大切な人々を眠らせてくれるのか。と…


***


姫は一人部屋の中で泣いていた。


どうしてこうなってしまったのかと。自分が生き返ったのが悪いのか。と…


そんなとき、どこからともかく風がふいた。


姫がふと顔をあげると、そこにはあの道化師がいた。


道化師はいった。


「泣いているだけじゃなにも始まらない。止まっているままじゃ、良い方にも悪い方にも進まない」


姫は、その言葉に涙をとめた。


嘆いているだけじゃ、ただの人。この争いをとめてこそ、この国の王族だと。


そんな決意を秘めた泣きはらした目を見、道化師は微笑んだ。


そして、この部屋を後にしようとしたとき、


「待って…!」


喉の奥から搾り出したかのような声に足をとめた。


「あなたは……誰?」


道化師は振り返ってこういった。


「この世の管理者。この世界のこの星の破滅をとめにきた者です。血塗れ姫(ブラッド・プリンセス)いや…この世界では嘆きの歌姫か」


その言葉に疑問を感じ、姫は聞こうとするが…誰かが自分を呼ぶ声にさえぎられてしまう。


一瞬、その声に気をとられ、道化師の方を見ると…そこには誰もいなかった。


まるで、元々そこにはいなかったかのようだった。


すると、さっきと同じ声が自分を呼び、姫は急いでそっちに向かった。


そのころには、なぜかすっかり道化師のことを姫は忘れていた。


***


姫を呼んだのは、幼いころから姫と一緒にいる侍女だった。


侍女の目は、赤く腫れていた。


すると、侍女が姫の手をひっぱり、一番高い塔の一番高い場所にある窓まで連れて行かれた。


何事かと思いながら侍女と歩いていると、急に姫の手を離し、窓の外を指差した。


首を傾げつつも窓を見る。そこには…



地獄絵図があった。



人々が怒りの形相で相手を切りつけ。


あるものは命乞いをし、


あるものは狂気に狂い、


またあるものは嘆き悲しんでいた。



姫は、いつの間にか涙を流していた。


それと同時に、何かをやらなければという気持ちにとらわれた。


この戦を終わらせる何かを…。


だが、何も思いつかない。


考えても考えても、何も思いつかない。


自分はなんて非力なんだろう。


この国の姫であるというのに…。そう思い、姫はまた涙を流した。


***


枯れてしまうんじゃないかというくらい涙を流した。


体中の水分が出て行ってしまったのかというくらい流した。


すると、その窓の近くに何かが落ちていた。


よく見ると、それは一枚の紙だった。


いつ入ってきたのだろう。そう思いながら紙を拾う。


何も書いてない。そう思いながら紙を裏返すと、文字が書いてあった。


「唄」


…そうだった。忘れていた。


私は歩けるじゃないか。私はしゃべれるじゃないか。


私は聞こえるじゃないか。私は―――



――――詠えるじゃないか。



私は非力じゃない。非力なフリをしていた人間だ。


姫は、自分が皆になにかをしてやれる。そのことに喜びを感じ、唇をかみしめた。


そして、泣きながら、鳴きながら、謡った。



怒り狂った人間も、狂気に満ちた人間も、嘆き悲しむ人間も、


すべてがすべて、姫の歌声に耳を傾けていた。


その様子はまるで…



争いが嫌いな天子のようだった。



***


戦が終わり、人々が正気に戻り、側近を倒した。


また、新たな平和がこの国に訪れたのだ。


無論、勝手に言いがかりをつけられ、国を攻撃してきたところもある。


しかし、相手はまったく勝てなかった。


屍でないにもかかわらず。


それは、姫のおかげだった。


戦を始めると、姫は泣き出す。


国の人々は、姫を泣かせたくなかったのだ。


この国を救ってくれた天子を、人々は泣かせたくなかったのだ。


だから、絶対に負けられない。絶対に死ねない。その思いが人々を強くした。


そして、この国は無敗の国になったのだ。



時が流れた。


夫もでき、子供も二人生まれた。


幸せに暮らしていた姫。


だがある日、暗殺者がやってきた。


隣国が、姫を殺せばあの国の結束力も弱まるだろう。そう思い、手配したのだ。


駆けつけた姫の夫…王が敵と交戦中に、姫は子供を抱きかかえた。


だが、抱きかかえた子供は一人(・・・)だけ。


もう一人は見つからない。


このままいたら腕の中にある、この国の未来を握るこの子も死んでしまう。


胸を引き裂かれる思いで、姫は城を抜け出した。



必死で、森の中にいる知り合いの元へと走る。


だが、姫の足では追いつかれてしまう。


それなら…。と、姫は子供を木の隙間へと寝かした。


餓死するかもしれない。動物に食べられてしまうかもしれない。


けど…ここで私と死ぬより、少ない可能性にかける。


姫はそう決意し、森の中を駆けていった。


その後、姫の姿を見たものはいなかった…。


***


城に残した姫の子供は、奇跡的に生きていた。


どこに隠れていたか…というのは、誰にもわからない。


暗殺者が帰ると、どこからともなくひょっこり現れたそうだ。


その子供はすくすくと育ち、王子になり、王になった。



そして、これは誰も知らない事実だが…


姫が木の隙間に置いた子供は今もどこかで生きている。


まあ、狼に助けられ、少々荒い姫の知り合いに育てられ、野生児になってしまったらしいが。


これは、この本の中だけの秘密だ。


…まあ、いじめられるのが怖くなければ知り合いに話してもいいし、


その姫の子供を捜すというのもいいだろう。君の勝手だ。


だが、この本を閉じる前に一つだけ読んでほしい。













最初の忠告だけは、絶対に破るな。














雰囲気作りに前書きとか本の忠告っぽいものをつけてみました。

雰囲気を作りたかっただけなので、別に話しても問題ないです。

だって、城とかないでしょう?

そもそも、こんな国もこんな御伽噺もないでしょう?

だったらOKです。

ってか、あったら自分が困ります。

ですが、皆さんが楽しんでくれたら幸いです。

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