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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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三羽と唐沢は急勾配の暗い階段を降りて、コンビニに隣接した出入り口から駅の方向へ歩き出す。

宵の口の繁華街を行き交っているのは、ネクタイを緩めたサラリーマンの群れや「これからが俺等の時間」とばかりに元気がいい学生たち、すぐにでもファッション雑誌のモデルになれそうなカッコいい女。

インターロッキング張りの歩道を肩を並べて歩く作業着の2人を追い越して行った。


「・・・ふざけたおっさんたちだよ、まったく」三羽がタバコに火を点けながら言う。

「ふふっ、でも帽子のおっさんのギターのフレーズは気に入ったぜ、俺は。・・・古くせえ昭和の歌謡ブルースみてえな」唐沢もポケットのタバコを出して点ける。

「リョウタが好きそうな感じのな。・・・そういやあいつ、バンドやりたくてウズウズしてるツラしてたな」

「お前も判ったかー?やっぱそうだよな、あいつ」


2人は近くの居酒屋の引き戸を開けて、「あとでもう1人来るから。」と4人掛けのテーブルで再び乾杯する。

さすがに金曜の夜だ、席はほぼ満席で、そこら中の座敷から喧騒が溢れている。小声じゃ会話出来ないぐらいだ。

「どうせリョウタも飲むだろうから」と麦焼酎をボトルで持ってこさせた。しばらくの間、2人はお互いの鬱憤話で盛り上がる。

1時間ほどして須川が合流して、3度目の乾杯の焼酎を飲み干す。

「・・・なんかさー、ローズ行ったらバンド本気でやってた頃の気持ちが甦ってきたわ。緊張っていうかさ、・・・ガラムの匂いで緊張して来るんだよ」唐沢が笑う。

「色褪せた俺等のステッカー、かわいそうんなったしなー。・・・またやろうかってコウヤと話してたんだわ」三羽は須川の表情を窺った。

「俺は大賛成だぜ!ってかおめえらがそういう気持ちにならねえかなって思ってたんだわ!」須川は酒の酔いも手伝って、上機嫌で大声を出した。


話が決まると3人は時間の過ぎるのを忘れて、バンド復活に託す思いを止め処なく語り合う。叶うはずもない夢のような計画まで飛び出し、ボトルは3本目を頼む。


不意に唐沢の携帯が鳴り席を外す。帰ってきたら今度は須川の携帯が鳴る。

「いいよな、おめえら。女から電話来てさ」三羽は本気で不貞腐れツラだ。

「コウヤは千夏、リョウタは紗希。・・・所詮ブスな女ばっかだけどさ。」三羽はマジに不貞腐れている。

唐沢と須川は(・・・タケルみてえに見た目おっかねえヤツに寄り付く女なんているワケねえじゃん。)と内心思ったが、「仕事上、出会う機会ねえから仕方ねえよ」と慰めにならない理屈で慰めた。

「・・・ああ、そこらにカワイイ女が落っこちてねえかなー。・・・したら拾って帰って、大事にすんのになー」三羽の目が据わって来たから、唐沢と須川は相手にしなかった。


午前1時、3人とも呂律の回らない挨拶をしてお開きにする。唐沢は自転車を押して、三羽は千鳥足で、須川は逆方向の帰路に向かって帰っていく。

「なんかひさびさに飲んだなー」「ああ、気分いい夜だっけなー」そんなことを言い合い、唐沢と三羽も別々の方向へ歩いていく。


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