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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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唐沢は女のただならぬ様子が気になり、玄関に駆け込む。

桜と女が背を向けている先に、誰かの上に倒れこんでいる三羽の姿が見えた。・・・背中にナイフの柄が突き立っているのが見える。

女を弾き飛ばし駆け上がる、「タケル!タケル!」・・・すぐそばで、桜が膝から崩れ落ちる。そのまま前のめりに倒れこんだ。

・・・山浦がヘルメットを片手に玄関から入ると、すぐに異変に気づき駆け寄ってきた。倒れてる三羽のそばに寄り、身体を触ったり呼吸を確かめている。

唐沢に振り向くと、「すまないが大至急、三羽を車で運んでくれないか。場所は・・・」言い終わる前に、唐沢は叫んだ。

「いったい何だってんだよ!あんたらは!タケルをこんな目に遭わせやがっ・・・」言い終わる前に、山浦の拳が唐沢の頬に飛んできて吹っ飛ぶ。

「悪いが、喚いてる時間はない。すぐに車で運んでくれ、頼む」そう言うと、美弥に目合図をした。

「コウヤ、言われた通りにしよう!早く運んであげなきゃ!」千夏は唐沢の肩を叩く。唐沢はすばやく立ち上がると、玄関を飛び出していった。

美弥が千夏に近づく、黙って渡したメモには長野市の住所が書かれていた。


唐沢がビルの前にミニバンを横付けすると、山浦と美弥、千夏が、蒼白になった三羽の身体を運んでくる。

後ろのシートにうつ伏せで寝かす、刺さったままのナイフが唐沢の目に映る。怒りなのか悔しさなのか、涙がこみ上げてきた。

「いいか、ナイフは絶対に抜いてはだめだ、激しく出血する」山浦が唐沢に言い聞かせていると、美弥が朦朧とした桜を連れてきて、三羽の横に乗せた。


「それじゃ頼む!俺たちは先に行って、用意をしているから!」山浦と美弥は、それぞれ2台のバイクにまたがり、暗闇の中を疾走していった。

「コウヤ、気をしっかり持ってね。さっきもらった住所、ナビに登録するから・・・」

蹴飛ばされたように飛び出した黒いミニバンは、目の前の車を次々と追い越し、二車線の国道から上信越道に入り、限界のスピードで疾走していく。




・・・モーターの軽い唸り音で、目を開けた。天井に煤けたようなプロペラが、ゆっくり回転している。

(これ、なんて名前だっけ。・・・扇風機じゃねえよな)三羽はボンヤリと見つめている。

ロバート・ジョンソンの古いレコードの音が、パチパチと針ノイズ交じりで聴こえる。

(ここどこだっけ、あれ?俺はなにしてるんだっけ)ゆっくり首を動かして、周りを見ようとすると、目の前に顔が顕れた。

「コウヤ!タケルくん、目を覚ましたよ!」でかい声が聞こえた。

突然、いくつもの顔が三羽の前に顕れ、360度、顔だらけになった。

(・・・コウヤ、千夏、リョウタ、紗希、桜・・・桜?」急に記憶が甦ってきた。・・・桜とビルを脱出する寸前、男に刺された。・・・あとは判らない。

「タケル、心配させやがって・・・バカ野郎」唐沢が顔をクシャクシャにして泣いていると、つられてみんな泣き出した。・・・桜の顔が急に見えなくなった。

「ここ、どこだよ?」そう言おうと思って口を開けた瞬間、全身に激痛が走った。


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