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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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「さあ急いで。この後処理は組織の者がやるけど、地元の警察が、偶然に嗅ぎ付けないとも限らないから」美弥は三羽と桜を急がせた。

三羽は美弥の妙な物言いが、気になった。

(・・・こんな戦地みたいな惨劇の状況の後処理を、専門にやる人間が存在する『組織』とは?・・・『地元の警察が偶然に』それは裏を返せば、地元より上の警察組織は了解している、ということにならないか?)

美弥は玄関の方向へ歩き出している。三羽は桜を先に促して、あとを歩く。

(・・・そういや、この騒ぎなのにパトカーのサイレンも聞こえてこない。民家のない場所ではあるが、そんなことあるのか・・・)

玄関の観音開きのドアガラスの外の暗がりに、唐沢と千夏が心配顔で立っているのが見えた。

(コウヤ、千夏、・・・)この騒ぎの中で、2人のことはすっかり頭から飛んでいた自分が、あまりにも自分勝手に思えてきた。そしてたまらなく申し訳なく思えてきた。


美弥が玄関ドアを開け、桜が続いて出ようとしている時、三羽の背後で気配がする。振り向こうとした瞬間、

奇声を上げて突進してくる黒い塊が、三羽の背中にぶつかる。(・・・!)衝突とともに背中の左下あたりに激しい痛みが走る。

刃物が突き刺さっていることは、直感で判る。身体の真ん中あたりまで、深く侵入している感じ。

三羽は無理やり身体をひねり、背後に向き合う。・・・ハイエースを運転していた若い男だ。男は刺し込んだ刃物の柄から手を離し、奇声を上げながら後ずさりで逃げようとした。

「ぐぐぅ・・・」三羽は尻ポケットのフォールディングナイフを引き抜くと、男を見据えたまま刃を起こす。

両手で握ったまま、男に身体ごとぶつかる。ナイフは男の皮膚を破り、肉を絶ち、その先の臓器へと達していく。そのまま男に覆いかぶさるように倒れた。


「タケルくん!」叫ぶ声、玄関のドアの方から駆けてくる靴音、自分の下の男の断末魔の喘ぎ声、三羽の視界はフェイドアウトするように白くなっていった。



唐沢と千夏は茫然とビルを見ていたが、じきに銃撃の音が止む。

「なんてことだ・・・タケル、死んじまったんじゃねえだろうな・・・」唐沢は呟いたが、緊張で喉がカラカラになっていて声が出ない。

千夏はひと言もしゃべらず、両手の拳を握ったまま震えていた。

「とりあえずちょっと行ってみる・・・」唐沢は千夏を車内に残し、恐る恐るビルに近づいていく。

(タケルが死ぬはずはねえ・・・タケルが死ぬはずはねえ)同じことを何度も、自分に言い聞かせていた。

玄関前まで来た時、突然男が飛び出してきた。唐沢は咄嗟に身構える。男も姿勢を低くしたが、唐沢の顔を見ると緊張の表情を解いた。

そして『協力しろ』のようなことを言って、暗がりに消えていった。

唐沢にとって初対面の相手なのに、向こうは自分を知っているような様子が気になったが、それどころではなかった。

・・・振り返ると自分の後ろに千夏が立っている、相変わらず蒼白な顔をしていたが、どこか毅然とした表情になっていた。

間もなく見知らぬ女が出てこようとしているのが薄暗いガラス越しに見え、その後ろに桜が見えた。・・・三羽が後ろから支えている。

「タケル!」「タケルくん!」2人は同時に叫ぶ、そして同時に震えの帯びたため息を吐き出した。

「このクソバカ野郎が!・・・」唐沢は鼻がツーンとなった。

だが、見知らぬ女が玄関ドアを開けたと思ったら、あわててまた中へ戻っていく。


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