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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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3階の広い会議室で、男は犬井と対峙している。犬井の他に3階にいた5人は、全員男の銃弾に倒れた。

「最後は貴様だけだ、犬井」男は銀のリボルバーを、腰のホルスターに突っ込む。

「ふん、遂にお前と対決することになったか。長い因縁だったな、山浦」犬井は黒いスーツのポケットに突っ込んだまま、スツールから立ち上がる。

山浦と犬井は互いに、ギラギラ光る獣のような眼を逸らさない。

「貴様らが西柳・・・いや、西田静司を殺った落とし前はつけさせてもらう。・・・先代への恩返しも含めてな」山浦の瞳は、積年の怒りに燃えている。

「ふん、貴様に俺が殺れるかな」犬井は眉をひそめて、じっと山浦を静視する。

山浦が唇をゆがめる。「貴様は今、『気』を発してるだろうが、俺には通用しないぜ・・・俺は一度爆死して甦えさせられた身だ。その時にお前と同じような能力が備わっていてな」

犬井は嘲笑う。「ふん、そうかい。死にぞこない野郎か」

「・・・お互い傭兵の身だ。最後は力で勝負をつけようじゃないか」山浦が言うと、お互いの間にピーンと緊張が張りつめる。


・・・先に犬井の長い右脚が水平に飛ぶ、山浦は身をかがめてかわす。懐に入り、アッパーを突き上げる。犬井がのけ反って避ける。

犬井の左足が飛ぶ、山浦は右腕でガードするが、そのまま横に飛ばされる、転がる、回転して立ち上がる。

山浦が立ち上がりざま、右のハイキックを犬井の肩に蹴りあげる。犬井はガードが遅れなぎ倒される。が、倒れながら右脚で足払いを仕掛ける。

山浦の身体が宙に浮き、硬いフロアーに叩きつけられる。・・・立ち上がるのは同時だ。

にらみ合う、山浦が先に飛び出す。渾身の右を出したが、かろうじて避けられる。瞬間、犬井は右手でナイフを振り下ろした。

山浦のジャンパーの肩が切れる、いったん後方へ退がり、左のハイキックを繰り出す。脚はきれいに決まり、犬井の右手のナイフを蹴り落す。

バウンドしたナイフを掴み、逆手で握り、犬井の喉元へ斜めに切り上げる。

激しい血しぶきが上がる。犬井は飛び出しそうな目玉で山浦を見下ろす。・・・そしてゆっくりと後ろへ倒れる。


美弥と三羽が階段を駆け上がってくる。会議室に入ったところで、山浦は2人に振り向く。

その瞬間、物陰から銃弾が飛ぶ。山浦の背中に命中し、衝撃で倒れる。・・・物陰から内田が顔を覗かせた。

三羽のベレッタが火を噴き、内田の額を吹っ飛ばす。そのまま後ろの壁に叩きつけられ、ずるずると崩れ落ちた。


三羽は蒼白になって山浦に駆け寄ると、ゆっくりと身体を持ち上げた。「防弾チョッキのおかげだ」背中の着弾部はまだ薄い煙を上げていた。

3人は急いで階段を駆け下りる。硝煙だらけの鼻をつく匂いのビルの中には、生きている者はもういないはずだ。

山浦は「美弥、三羽と一緒に、お嬢を連れてきてくれ」と言い、玄関のドアを開けようとすると、唐沢と鉢合わせになった。

仰天してる唐沢に、「ちょうどいい、お前も協力頼む」と言って、外に出て行った。


美弥は物置部屋の鍵を開ける、「お嬢、もういいわよ」と言い三羽の背中を押した。

桜はうつむき加減で出てきたが、顔を上げた瞬間、目を見張った。しばらく茫然とした後、叫んだ。

「タケルくん!」桜は全身でぶつかってきた。三羽と桜が初めて会った夜と同じように、目からは大粒の涙が流れていた。

三羽は初めて桜の声を聞いた、思わず胸が締め付けられて泣きそうになったが、我慢した。

「・・・お前、しゃべれんじゃん」そう言うと、上を向いたまま桜の肩を抱きしめる。小刻みに震える桜の身体から、懐かしい匂いがした。


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