表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライジング・サン  作者: 村松康弘
40/50

40

唐沢はイライラしていた。三羽のアパートの前に、自分の黒いミニバンを停めている。

日中、仕事の合間に電話をかけ続けたが、コールが鳴るばかりで出なかった。・・・駐車場にセリカも停まっていない。

千夏に電話を入れる。『オカケニナッタデンワハ・・・』「チッ!」電話を切る。

千夏は仕事中の時は電源を切っている、判りきっているが、唐沢はますますイライラしてきた。



三羽は童謡のチャイムで目が覚めた。身体を起こすと、公園で子供が遊んでる向こうに、西陽が傾きかけている。

全身が強張っていて、動かすとバリバリと間接が鳴った。

タバコに火を点け、携帯を確認する。唐沢と会社から何度も着信があった。

首をポキポキ鳴らしながら、タバコを消す。

・・・Black Birdが鳴る、唐沢からだ。

「タケル!今どこにいんだよ!」最初から怒鳴り口調だ。

「上越の犬井んとこの近くだよ」

「やっぱり!・・・お前、それは裏切りじゃねえのか!おい!」唐沢は咬みつきそうな勢いで、まくしたててくる。

「裏切り?・・・そうだな、考えてみりゃそうなるな。申し訳ねえ」

「バカ野郎!まあいい、千夏の仕事が終わったら、拾ってそっちへ向かうから、突撃するようなマネはすんなよ!いいな?」

「あ、ああ」

電話を切って周りを見ると、薄暗くなっている。遊んでた子供たちも消えていた。


闇が濃くなった。三羽は尻ポケットにフォールディングナイフを忍ばせて、セリカを降りる。

グローブボックスに黒革のドライブ用手袋があったので、それをはめて公園を出る。

犬井商事の両隣は町工場で、業務は終了していた。常夜灯のみ灯っている。

三羽は建物の裏手に回る、周囲をぐるっとネットフェンスで囲ってあって、裏は広い空き地になっていた。

フェンスと空き地の間に用水路が流れていて、1mほどの幅には雑草が茂っていた。・・・その茂みに身を伏せ、裏手から建物を眺める。

2階と3階の窓はカーテンが引かれているが、薄く明かりが漏れている。

・・・30分ほどじっとしていた。建物からは何の物音もしない。

三羽は意を決した(・・・桜、イチかバチかだ)

三羽がネットフェンスに手を掛けよじ登ろうとした時、いきなり肩を押さえつけられる。(・・・!)全身が硬直した。

「ちょっと待て」押し殺した男の声が耳元に響き、三羽が振り向く。

「あっ!あんたは!」男は自分の口に指を当て、「静かに」とささやいた。

―――アッシュトレイズ・ローズでのライブの時、一瞬だけカウンターにいた鋭い目つきの男。

「これで3回目になるか」男はビルを見上げながら呟く。

「3回目?」三羽は男の横顔を睨む。

「お嬢が連れ去られる時さ。・・・唐沢というヤツは気づいたようだが」三羽ははっとなった。「生垣の向こうに誰かいるぞ」と言った唐沢を思い出した。

2人は雑草に身を沈める。背の高い萱のような草なので、ビルからは見えないだろう。

「いったいあんたは何者なんだよ?」

「何者?・・・お前の立場からすれば、正義の味方かもしれんぞ」男はニヤリと唇を歪めた。

「・・・さっきお嬢って言ってたよな、桜のなんなんだよ?」

「今説明してる時間はない・・・が、お前と目的は一緒だ。・・・それよりお前、これ使えるか?」

男は何かを手渡してくる。・・・受け取るとズッシリ重くて黒い塊のようだ。

「拳銃・・・」三羽の背筋を悪寒が這い上がってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ