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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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片側二車線道路の路肩に、ちょうどタクシーが停まっていたので、その後ろにセリカを停める。

地下街出入り口からは、およそ30m。とりあえず車を降りて歩き、地下街出入り口から、階下を眺める。

唐沢がセブンスターに火を点けようとすると、後ろから声を掛けられた。

「ここでの喫煙は条例違反になるぞ」振り向くと制服の警察官が2人立っていた。

「君たちは未成年じゃないだろうな?」もう一人の警察官が聞いてきた。

火を点けていないタバコをくわえたまま、「免許証を見せるかい?おまわりさん」唐沢は言う。

「いや、それは結構だが、タバコは吸うなよ。ルールはちゃんと守れ」

・・・途端に三羽の顔色が変わる、それに気付いた唐沢が「行こうぜ」と三羽の左腕を引っ張っていく。


セリカに乗り込むと、2人は同時にタバコに火を点けた。

「なにがルールは守れだよ!クソくだらねえ!圧力が掛かりゃあデカい犯罪も見て見ぬふりしやがるくせに、どうでもいいような小せえことには目くじら立てやがる」三羽は窓の外に灰を落とす。

「まったくだぜ、ヤツらは立場の弱いもんには思い切り強く出やがる。だから警察とヤクザは、ろくなもんじゃねえ」唐沢も窓の外に灰を落とす。

「しかしさ、俺もコウヤも現場仕事だけど、今じゃタバコ吸えねえ現場ばっかだよな。第三者を立ち入り禁止してる現場で、誰に迷惑が掛かるってんだよ。・・・あんなもん吸わないヤツらのエゴだぜ」

2人は地下街出入り口の方を見据える。



内田がアッシュを呼び、タクシーを頼んだ。

(2人ともタクシーで帰るんかや?・・・とりあえずコウヤにメール入れるか)

須川が携帯を取り出そうとすると、背の高い男が内田に片手を上げて立ち上がる。190cmはありそうな長身だが、棒のように細い。

黒いスリムなスーツに黒いシャツの黒づくめだ。

コウヤにワンコールしている須川と紗希の背後を、足音も立てずに通り過ぎる。通り過ぎざま甘い香りが漂ってきた。



イントロクイズのように、BlackBirdの一節が流れすぐに切れた。

唐沢と三羽はセリカを飛び出し、足早に建物の陰に身を寄せる。

地下街の階段を上がってきた背の高い黒服は、ジャケットのポケットに両手をつっこみ、北東に続く通りを歩いていく。

(・・・出てきやがったな、黒服野郎め。たっぷりとお礼してやるからな!)唐沢の眼は獣のような三白眼になり、黒服との距離をジリジリ詰めていく。

三羽はその2m後ろを足音を消して、ヒタヒタと歩いていく。

(・・・桜を連れ去っていったのは、この野郎だろう。許さねえ!)

2人は黒服との距離を、20mぐらい取ってついていく。そのまま5分ほど歩いてると、黒服は左に曲がり小路に入っていった。



砦の電話が鳴る、アッシュは短い応対をして電話を切り、ボックスの方へ歩いて行った。多分タクシーの運転手だろう。・・・黒服が出て行ってから約10分。

井川貿易の内田営業部長は、ボックス席で支払いを済ませ、須川と紗希の後ろを通り過ぎる。

・・・年齢は40代後半から50、真っ黒な短髪に色黒の顔、細い目、薄い唇。社名の入った制服以外は仕立てのいいものを着ているようだ。


「さてと、今夜はお開きにするかー」アッシュは須川と紗希の顔を交互に眺め、意味深に唇をゆがめる。

「ごちそうさまでした、・・・でも蚕のサナギの煮付けは、もう出さないでくださいね」紗希は騙されて食わされたことを思い出して、しかめっ面をしてみせた。アッシュは少年のような老人のような顔をして笑っている。

「ごっそうさんでした、じゃまたジョイントギグのこと、考えといてくださいよ。闇夜鴉の2人には伝えときますから」

「わかったわかった、さあさあ早く帰んな」アッシュは手を振って追い出す仕草をしてみせる。


紗希と寄り添って階段を上がると、通りにはろくに人が歩いていなかった。

さすがに日曜の深夜、繁華街でも寝静まってるように見える。

冷えた空気を吸い込むと、唐沢と三羽のことを思い出した。

(・・・あいつら、どうなったんだろう)2人がいるはずもないと思ったが、つい周りを見渡してしまった。


須川は路肩のタクシー乗り場に向かおうとすると、紗希が腕を引っ張る。

「リョウタ、手つないでこ・・・」

春先と云えど深夜は冷え込んでいて吐く息も白かった。ホテルまで少し遠かったが、つないだ手は温かいから歩くのも悪くないなと思う。

途中の自動販売機で温かいお茶を買う。2人で交互に飲む。

「ねえ、なんで販売機のホットは『あたたか~い』て書いてあるんだろうね?」紗希は屈託のない顔で笑う。

「そういや、紗希は明日仕事じゃないの?」須川が聞くと紗希は手を振った。

「明日は休みをもらってるの、特別な日だもん。・・・リョウタも明日はお店、定休日でしょ?」

須川は黙って右手の親指を立てて笑う。

「なんか楽しいな、今夜は久しぶりに2人で夜更かしできるね」

2人の歩く先に、市街地でも高級といわれるホテルの灯りが見えてくる。




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