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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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須川が振り向いた先には2組のボックス席があり、手前の席では30代のサラリーマン風の男が3人、笑い声を上げている。

そして奥の席には2人の男が額を寄せるようにして、なにか話し込んでいるようだ。


「あの奥の客がどうかしたの?」須川は磨き終わったグラスを棚に片づけているアッシュに聞こえないように、小声で紗季に聞いた。

紗季も須川に顔を寄せ、「さっきトイレの入り口で、あの年上の方の人とすれ違ったんだけど、・・・あの制服の胸に『井川貿易』って書いてあったの」

須川はもう一度奥の席に目をやる。紗季とすれ違った男は、薄緑色のユニホームを着ていて上品そうな身なりをしていたが、狡猾そうな目をしていた。

もう一人の男は、男にしては長めの髪型で黒づくめの格好をしている。

華奢そうに見える体型だが、かなり背が高そうな感じだ。

・・・不意に須川の脳裏に、先日唐沢を襲った男の記憶が蘇った。

「・・・もう一人の男、こないだコウヤを襲った男に感じが似てねえ?あいつの話からすると」

紗季はボックスを振り返る。

「・・・そう言われればそんな感じもするね。・・・桜ちゃんのお父さんが勤めていて殺された井川貿易の人と、タケルくんと間違えてコウヤくんを襲った男・・・」


「じゃあこれ、俺から紗季ちゃんにバースデイプレゼント」アッシュがチーズケーキを載せた皿をカタンと置いた。

アッシュは顔と雰囲気に似合わず、スウィーツなども作るのだ。

紗季は今しがたの怪訝な表情を一瞬にして変え、「わーい!アッシュさん、ありがとう!」と言って手を叩いた。


手前のボックスで飲んでいた3人が「マスター、ごっそさんー」と言って金を払いにきた。

「・・・あーあ、休日出勤で明日も仕事だよ」酔って垂れ目になってるオッサンがブツブツ言いながら店を出て行く。


須川は隣でチーズケーキをほおばる紗季を眺めながら、「あの奥のお客さんて、常連すか?」と尋ねる。

「うーん、ユニホームの人は二ヶ月に一度ぐらい来てくれるかな。もう一人の人は・・・多分、初めてだと思う。・・・あの客がどうかしたんか?」

アッシュは象印のでかい箱マッチで、マルボロに火を点ける。

「いえ、ちょっと知り合いに似てたから。・・・そうだ!アッシュさん、バースデイの記念に俺等の写メ、撮ってくださいよ」と言って、須川は自分の携帯をアッシュに渡す。

そして、「カウンターの隅からのアングルでお願いします」と言って、アッシュを移動させ、自分も紗季をケーキもろともカウンターの端に移る。

「なんで移動すんだよ?」アッシュの問いに、「ここの方が、光の加減がいいかと思って」

アッシュは3回シャッターを切り、須川に携帯を返した。

「なんだ?タケルに見せびらかすんか?・・・あいつはすぐキレるんだからやめとけよ」と掠れ声で笑う。

須川は画像を確認する、そこには奥の2人も写っていた。

(・・・よし、これでバッチリ)

紗希に気付かれないように、トイレの前で唐沢にメールを打つ。ついでにメールの着信音も消す。


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