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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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「・・・先月、井川貿易って会社でガードマンが殺された事件、憶えてる?」

千夏は唐沢が作っている水割りのグラスに目をやりながら聞いた。

「ああ、そういやそんな事件あったな。・・・まだ犯人つかまってねえんだよな?」

唐沢はダブルの水割りを千夏の前に置く。

「あ、氷持って来るわ」と階下に行き、冷蔵庫からロックアイスを持ってくると、千夏はぬるいままの水割りをなめていた。


「あたしんとこの店の香織って子の家が、そのガードマンの自宅のすぐ近所らしいんだけど、その家は殺されたガードマンの人と娘の二人暮らしだったんだって」

「ふうん」

「で、事件のあとお葬式が終わって少ししたら、その子が行方不明になっちゃったって言っててさ」

唐沢は氷を放り込んだグラスにウイスキーをなみなみ注いで、指でかきまぜる。

千夏は氷をふたつ掴んで、自分のグラスにポトンと落とす。

「で、香織が話してた行方不明の子と、タケルくんちにいる子の特徴とか背格好がなんか似てるんだよね」

「・・・なんか気になるな、あれいつだっけ?・・・新聞残ってるかもしれねえから調べてみようか」


唐沢は階下の居間の押入れの新聞の束を持ってきて、部屋の真ん中にドスンと置く。

「2ヶ月分ぐらいはあるかな」新聞の束を半分に分けて、ふたりで手分けして調べる。

10分ほどで「あっ、あった!これだこれだ!」と千夏が声を上げた。

地方版の社会面に大きめの見出しが付いていたから、簡単にみつかったようだ。

「いい?読むよ。『勤務先でガードマン殺害される  2月25日午前5時頃、井川貿易(株)構内で同社警備勤務の西柳静司さん(45)が、背中を刃物で刺されて倒れているのを、交代勤務で出社してきた警備員が発見。西柳さんは病院に搬送されたが、死亡が確認された。所轄署では殺人事件として捜査をはじめている。』・・・だって」

千夏は新聞を四つに畳んで、唐沢に渡した。

「・・・あれから解決したってニュース聞かねえよな」唐沢は渡された記事に目を落とす。



三羽は溜息まじりの煙を吐きながらアパートへ戻る。周囲のことがまるで目に入らないほど虚ろだった。

短くなったショートホープを水路に弾きとばして、俯き加減で歩く。

「・・・あいつがいなくなった部屋に帰るのやだな」ブツブツ呟くように言いながら、(もしかして帰ってるかも・・・)と思いたくなった。

しかし一縷の望みは絶たれ、部屋の玄関は半端に開いたままだった。


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