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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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「馬鹿野郎!これじゃ儲けどころか赤字じゃねえか!なに考えてんだ、てめえは!」

宮岡は自分の席の前に立っている唐沢幸也を怒鳴りつけた。

唐沢は(・・・案の定の反応だな)と溜息が出そうになる。

「社長、索道を使わない施工なら、どうやったってこのぐらい掛かっちまいますよ、実際に始まってみりゃこの予算でも厳しいぐらいだ。・・・仮設を見直すべきですよ」

唐沢がそう言い終わる前に、宮岡は机上の「新建新聞」の束を手で払いのけ、さっき以上の怒鳴り声を上げた。

「馬鹿野郎!ろくに考えもしねえで仮設仮設って楽しようとしやがって!だからてめえら若えヤツらは仕事覚えねえんだよ!・・・索道張るのにいくら掛かると思ってんだ!」


索道とは、主に山と山の頂点にワイヤーロープを緊張させて、軌道の下に資材や機械を運搬するロープウェイ状のクレーンの一種だ。


宮岡が手のひらを叩きつけた机には、唐沢が作った「橋本砂防ダム工事実行予算書」が載っている。

(・・・クレーンもバックホーも入らねえような悪条件の現場だから、他の業者が避けてた物件を低価格で落札しやがったからこうなるんだよ。てめえと馬鹿部長のせいじゃねえか。)

唐沢はいい加減ウンザリして、無言で宮岡の前を立ち去る。


唐沢は工業高校の土木科を卒業して「宮岡建設工業」に就職。現場代理人として5年働いている。

この5年間はとにかく仕事を覚え資格を取るために、ただひたすら仕事に打ち込む日々だった。

唐沢は仕事が好きだったのと、「若い」というだけでなめられるのが嫌という理由から無我夢中だった。

その努力の成果か、同期入社の2名との能力の差は誰が見ても明らかになり、唐沢は下請け業者の親方たちにも信頼されている。


社長室を出て、自分の席がある部屋に戻る。椅子に座りパソコンを起動させると思わず溜息が出た。

「やられたかい?」隣の席の青木が声を掛けた、2歳先輩の痩せた男だ。

「まったく話にならねえっすよ、ウンザリだ」唐沢はセブンスターに火を点けて天井に煙を吐いた。

「おっさんの悪い癖だな、人が書いた予算や計画にはとにかくいろいろ言いやがる。・・・そんでいよいよになりゃ唐沢の計画通りに行かざるを得なくなる、自分じゃそれ以上の段取りできねえからな。・・・二代目社長の悪い癖だな」青木の言葉の最後の方は、呆れ笑いのようだった。


唐沢は天井を見上げて過去のことを思い出す。・・・やはり山中のダム工事の現場だった。

どうしても必要だった仮設架台なので、綿密に計画を立てて宮岡に打診した。

宮岡は「こんなもんにこんな銭掛けて儲けが出るんか!ちったあ経済考えろ!」と一蹴した。

唐沢は「それなら社長お願いします」と一切を任せた。宮岡が言葉通りの結果が出せるのか見たかったからだ。

宮岡に任せた部分は結局、唐沢の計画の1.5倍の資材と2.5倍の経費を掛けた。


「馬鹿に馬鹿呼ばわりされるのはマジでウンザリだ・・・」

唐沢はタバコを灰皿でもみ消すと、起動したばっかりのパソコンを落とす。

「青木さん、お先に帰りますわ」と手を挙げる。

いつもは20時過ぎまで残務整理してるが、今日は18時過ぎに会社を出る。


ドアの横に社名の入った薄汚れたADバンのエンジンを掛けて、国道に合流する。

すっかり日が長くなったことに季節を感じた。


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