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イントロダクション1「月」
最近はよく月が出ている。そして今夜の月は不気味に低くて濃い。あまりに低く浮かんでいるため、向こうの低いマンションの影に、すぐに隠れて見えなくなる。
俺は月の色や大きさを、よく観察するために、低い歩道橋を登った。
月はよく見えた。
しかし今日の最初に、俺が月に見つかった瞬間感じた恐ろしさは、もう既に失われていた。
俺は街灯の灯りに群がる、ざっと数百の羽虫に目を移し、つぶやいた。
「奴らが月を愛するように、あなたは俺の道標なのだ。なのになぜ、俺が頑張らなくちゃいけないこの時に、俺が頑張っているこの時を、わざわざ選んでなぜこのタイミングで、勝手に絶望してしまい、すべてを諦めてしまうんだ。なぜ俺を見て希望を見出し、元気にやっていてはくれないんだ。俺の本当に大事な人は、あなたくらいしかいないこと、あなたも知ってるはずなのに。」
視力が落ちつつあるのだろう、赤信号の赤い光、今日の濃ゆい月の光、また、羽虫群がる街灯の光の輪郭が、二重になってぼやけている。
でもなんだろう、街灯に、羽虫が群がり過ぎてはいないか。




