1:はじまり
(あ。俺、やっぱ極めてんな)
そう思ったのは、十年ぶりに参加したレイドボス戦での時だった。
多数の冒険者たちと参加するレイド戦。
圧倒的な強さを誇るボスモンスター「蒼き瞳の大白猿」が次々と、チンパンジーのような悲鳴をあげる猿……いや、ザコ冒険者たちを屠っていく。
その間にも俺は、着実な手段でボスモンスターにダメージを与え、『スコア』を稼ぐ。
現場を引退して十年だというのに、冒険者たちは相も変わらずチンパンジーのように一喜一憂しながら白猿と戦っている。
「どっちが猿なんだか」
そう言って、俺は今日使える最後のスキル『一万石』を唱えた。
一万石は名前のとおり、一万の石を自在に操りダメージを与える。
殺傷能力は低いが、なんと言っても『スコア』を稼ぐのに適している。
え? さっきから『スコア』『スコア』って何言ってんだって?
ああ、悪かった。俺はこれを読む君が来る前に居た――。
日本からの転移者であり、この異世界での戦いを極めた「先輩」とでも言っておこう。
話は戻るが『スコア』とは、対象のモンスターに与えたダメージと受けたダメージを差し引きしたものだ。
たぶん君も知っているだろうが、モンスターを倒せば、経験値や素材を得ることができる。
しかし、これには大きな致命的問題がある。それは……。
――新たな敵、つまりは次の標的を探さないといけないということ。
つまる所、モンスターたちだって生き物だ。冒険者たちが無作為に狩れば、その数だって減っていく。ゲームのように草むらを歩き回ればリポップするわけじゃないんだ。この異世界は。
この世界にだって食物連鎖が存在し、この手紙を渡してきた白猿にも家族がいる。
きみはどちらを選ぶ?
俺のスキル『一万石』を受け継ぎ、レイド戦の裏で糸を引くか。
白猿の命を終わらせ、終わりのない殺戮を猿どもと続けるのか。
ー
「あの~。要するに『スコア』って何なんですか?」
僕は手紙を渡してきた白猿に聞いた。
すると白猿は、大きなため息をつき――。「ちと、待て」と言うと大きな体を光らせ、体を縮ませて人型となった。
大きな猿の時は性別なんて気にしなかったが、人型になり――。胸の谷間が目に入ってしまえば話は別だ。
「『スコア』についてだったな?」
「はい! いいスリーサイズですね! あ、続けて下さい」
きゃっと、胸元を隠した白猿は続ける。
「スコアとは簡単にいうと契約じゃな。一定以上の実力は示すが、トドメは刺さず。時には我に助力する契約。持ちつ持たれつの関係じゃ! これを書き残したお父……いや先代は、母上とそれはそれはうまくやっておったと聞くぞ!」
「でも、それってDVじゃ……?」
「ディ、デイブイ??」
「だって、石を奥さんにぶつけるんですよね? つまり、奥さんに暴力――」
「なにを言っておる! 母上はお父とのレイド戦は体のコリが癒えると言うておったゾ!」
なるほど……。少しずつだが話が見えてきた。
つまり、僕の目の前にいるこの子は異世界転移の「先輩」と大白猿の娘であるということ。
そして、『スコア』というものには特に何の意味もなく。この手紙を残した「先輩」は自分の娘を選ぶのか、殺戮を続けるのかを問いているのだ。
ならば――。
「ふつつか者ですが、これからよろしくお願いします」
「うむッ!!」
こうして僕は伝説のスキル「一万石」と白猿の獣人を妻として迎えた? ってこと??




