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虹の彼方へ  作者: みかん
8/11

瞬間

とうとう全く何の攻撃もないまま上弦の月の夜を迎えた。


タイムリミットまであと1週間・・・。


ホントは今すぐにでも琉冠星に戻りたい。


お兄様が気掛かりだから。


でも


一度戻ったらもうココには戻って来れないって言うから、まだ琉冠星には戻れないや。


だから今は様子をただ見守るしかない。


bossを信じて。


神楽と如月の部屋で、3人で寝るコトにした。


神楽と如月に同じベッドで寝てもらって。


眠くなるまでずっと3人で話してた。


琉冠星のコトを色々聞いたりして。


聞いてるウチにイメージが浮かんできて、アタシはある“決意”を思い始めた。


まだ如月にも神楽にも言わないよ。


明日を思う存分楽しみたいから。


明日は昼前から璃音と4人でお出掛け。


その後、璃音はウチにお泊まり。


多分コレも最後だよね…。


悔いの無いように思いっきり楽しむぞぃ!!!っと。





結局何も起きないまま朝を迎えた。


でも油断は出来ない。


璃音と一緒の時に何か起きたらどうしようって、常にハラハラしてる。


「おっはよぉ♪」


神楽の車で璃音の家にお迎えに。


アタシも璃音も思いっきりオシャレして。


向かった先はショッピングモール。


4人でって言ってもはしゃいでいるのは璃音となぜか如月だけ。


アタシの心中は依然ハラハラ。


恐らく神楽もだと思う。


昨夜“決意”を思い始めた時にもう1つ思ったコトがあるんだ。


あるジュエリーショップの前を通った時、アタシは璃音の腕を掴んで中に入った。


「どうしたの?」


驚く璃音に、アタシは璃音を更に驚かせる発言をする。


『お揃いでピアス買おっか!』


驚きのあまり璃音は立ち止まり、大声を発した。


声に反応して璃音の顔を見ると、璃音はものすごく目が飛び出しそうな顔になっていた。


あまりの凄さに思わず吹き出してしまった。


でも、璃音の反応は無理もない。


今までアタシは何度璃音に“ピアスを開けようよ!”って言われても拒否し続けてきた。


自分の素性がわかるまでは開けない!と心に決めていたから。


だからそうとは知らない璃音が驚くのも当然だろう。


「じゃ誕生日プレゼントにアタシが買うよ」


店の外でつまらなそうにしている如月と笑顔でこっちを見ている神楽。


アタシと璃音はその2人を尻目に、キャッキャ言いながらピアスを選ぶ。


「妃杏、コレは?幸運の石だってよ?それとも単純に誕生石にする?あっ、妃杏コレがイイんじゃない?恋愛運アップだってよ」


「お揃いでしたらこちらお勧めですが」


あーでもないこーでもないと大騒ぎしているウチらに見かねてか、店員さんが寄ってきた。


店員さんが勧めて来たのは“絆”を深める力のある石だった。


絆・・・


ちょっと胸が熱くなる。


数種類ある中でダイヤもあったんだけど、ファーストピアスでダイヤは無いだろうと言うコトでファーストピアスに相応しく、ガーネットにした。


「毎年1つずつ増やしていこうね」


レジで無邪気に笑う璃音に、アタシは泣くのを堪えるので精一杯だった。


その後併設している皮膚科で穴を開けてもらい、アタシは人生初のピアスを着けた。


『トイレ行ってくるね』


如月と神楽に告げて、アタシと璃音はトイレに入った。


鏡の前で2人でピアスを改めて見る。


「いいね、お揃いで♪」


喜んでくれてる璃音のあどけない表情、モーレツにたまらない。


泣くのを堪え過ぎて時折吐きそうになるよ。


「次ドコ行く?オトコ2人つまらなそうだよ」


なんて笑い合いながら手を洗っていた時だった。


「妃杏??」


璃音の顔が見れない。


璃音の声がひきつっていて。


しかも、自分の視線を動かせられなくて。


水が流れているアタシの指先が透けて行く。


全身の力が指先に集中してる。


ストーンが真っ黒になっている。


トイレを出ようとする璃音の手を掴んだ。


手の透けが収まっている・・・


ストーンの黒い光も収まっている。


ワケが分からなかったけど、とりあえず安心。


璃音も、戸惑いながらも何も無かったかのように接してくれてる。


だけどアタシの心中は、かなり動転しまくっている。


今も心臓、凄まじいコトになってるよ。


「妃杏様?」


神楽が不安げにアタシを見る。


「お顔の色が宜しくありませんがどうかなさいましたか?」


エッ?


何故か無意識に自分のほっぺたを触る。


「熱、あるんですか?」


さらに不安げになる。


いや、違う!!。


『気のせいじゃない?大丈夫だよ。』


アタシ、苦笑い。


でも、神楽は見抜いてた。


アタシが無意識のウチに手やストーンをしきりに見ているコトを。






ジュースやお菓子やケーキを買って店を後に、車に乗り込んだ。


と、その時!!!!!


ストーンが再び真っ黒になった。


アタシ、すかさず立ち止まる。


「妃杏?また??」


先に乗っていた璃音の声が緊迫している。


思わずアタシは手を後ろに隠してしまった。


でもストーンが黒いコトには、神楽も如月も気付いている。


「妃杏様?またって」


如月が思わず“様”よばわり。


「様?」


当然璃音が反応。


心拍数、スピードMAX!!


何もかもが終わったみたいな絶望感。


運転席に座ろうとしていた神楽が険しい表情でアタシの手を掴んで勢い良く歩き出した。


!!!!!!!!!!


アタシたまらず立ち止まる。


足まで透けてきてるから。


どうしよう、璃音がいるのに。


恐怖で声が出ない。


少しするとまた光は収まり、手足の透けも治っていた。


「妃杏様、またとはどういう意味ですか?」


当然神楽の声が厳しい。


顔も険しい。


『その前に、璃音が』


ひきつり全開の顔でアタシは車に目を向けた。


「璃音様にお話しになりますか?」


顔は険しいままだったけど、声はどことなく優しかった。


『話さないワケにはいかないでしょ。2回も見られちゃってるんだから』


心のウチでは堪らなく泣きたいのに、何故か泣けなかった。


表情は泣きそうだけど。


「かしこまりました。どのみち妃杏様が琉冠星にお戻りになられたと同時に璃音様の記憶からは全て消えますので。ワタクシがお話し致します」


“全て”?・・・


モーレツに胸が苦しくなったけど、泣かないよ。


神楽に“全てって?”って聞きたいけど、今は聞かないよ。


璃音に分かってもらう方が先だから。


車に戻ると、如月と璃音は何事も無かったようにいつもの様にイチャイチャしていた。


「遅いよ2人共ぉ!暑いんだからぁ!」


いつも通りの璃音に、胸が熱くなる。


「エンジン掛けてってよアニキぃ!」


如月もいつも通り。


「ゴメン。」


ひきつり笑顔の神楽は、エンジンを掛けてすぐにカラダを後ろに向けて座った。


アタシは如月のトコロへ行き、如月と場所を代わってもらう。


如月は助手席へ。


『璃音、驚かないで聞いてね』


アタシのメチャクチャ渋い顔に、怯みながらも璃音は優しく微笑んだ。


「何を話そうとしてんのかは分かんないけどさぁ、大丈夫だよ。実はこの前妃杏が早退した日、如月と神楽サンが話してんの聞いちゃったし、さっき劇的にスゴいモノ見ちゃったから。多分聞いてもワケ分かんないだろうからイイよ。妃杏が妃杏でいるコトには変わらないでしょ?」


ケロッとして言う璃音に、アタシは我慢の限界を振り切りその場で号泣、如月は目に涙を浮かべ、神楽はただただ微笑んでいた。




その後車内は依然大盛り上がりの後ろ2人のお陰でいつも以上に賑やかな雰囲気に。


『2人のこの仲の良さはフォールアップの影響じゃないよね?』


バックミラーで2人を見ながら神楽に尋ねた。


「ここまで来るとそうだと思います。コレはおそらく素だと思われます」


自然な笑顔の神楽。


何だか嬉しくなるよ。


璃音が凄く愉しそうで。


と同時に、切なくもなるな。


こんなに楽しい時間が永くないなんて。


「妃杏様のご親友だけに璃音様も大した御方ですね。脱帽です」


信号待ちで神楽がアタシの方を見て言った。


思わずドキッとする。


ダブルで照れちゃうよ。


『付き合い長いからね』


バックミラーに映る璃音に向かって答えた。


神崎家に来て、幼稚園に転入してすぐに声を掛けてきてくれたのが璃音だった。


“養女だから”って避けるコもいる中で、璃音だけはずっと一緒だった。


遊ぶのも勉強するのも習い事もずっと一緒で。


異常な程に一緒だったね。


小5の冬に、恭新に行くって言い出せないでいたアタシに、璃音ママから聞いたって言って一緒に目指してくれて。


性格も趣味も好きなタイプも全く別だけど、ココまで合うとは思わなかったよ。


何故かバックミラーの璃音をずっと眺めていた。


はにかみながら。




家に着いてすぐに神楽は部屋に向かった。


アタシと如月と璃音はパパママと夕飯の準備。


実は今日はアタシの誕生日パーティー。


如月が璃音を誘ってくれて、如月と神楽でパパママに話してくれたんだ。


2人には感謝してもし尽くせないよ、ホントに。


リミットまであと6日、誕生日まであと5日、


アタシ、もう神崎家では誕生日を祝えないかもって諦めてた。


いつ突然にお兄様やレジスタニアに攻撃されるか怖くて。


だから祝ってもらえるダケでモーレツに嬉しいの。


正直、さっきはホントにもうダメだと思ったよ。


終わりだと思った。


だから、今まだココにいるのがモーレツに嬉しい。


こんなに嬉しいコトがこんなにもあるのかってくらいにとにかく嬉しい。


でも逆に、さっきの事件でアタシの決意は強固なモノになっちゃったっ!


明日、璃音が帰ったら2人には話すよ。


だから今夜はとことん楽しむぞぃ♪♪♪




準備が一段落して入浴タイムに突入する為一旦部屋に戻った。


ウチらが部屋に入ったのが声で分かったらしく、神楽がアタシを呼びに来た。


隣の神楽達の部屋に行く。


『何?』


ごく自然に尋ねる。


「琉冠星にしか存在しないものはこの時代の方には見るコトが出来ないのですか、bossに相談して調べましたトコロ、こちらの石がこの時代にも存在するコトが分かりましたので、特別に璃音様には見えておりませんが、妃杏様とお揃いと言うコトで、妃杏様のブレスレットと同タイプにbossが依頼して作って頂きました」


神楽はそう言って箱を出した。


何のためらいもなく、手をかざして箱を開ける。


中には水晶のブレスレットが入っていた。


石の数、石のカットの形、しかも名前が入っているコトとエンブレムの刻印までアタシのと同じだった。


「余りにも感動致しまして、璃音様の先程の話をbossにしましたらbossも大変感動致しまして」


みんなの優しさに、目頭が熱くならないワケが無かった。


「妃杏様のコトは恐らくお忘れになると思います」


やっぱり・・・、ね。


アタマを殴られた様な衝撃は受けた。


だけど、泣かなかったよ。


覚悟はしてたし、さっきのコトバのお陰でそんなの怖く無くなったし。


それどころか、


“もしかしたら璃音に限って”


的な期待も持ちつつ。


「ですので、せめてと言うコトで」


神楽の顔が今まで以上に優しかった。


泣かないよ!?絶対泣かない!!。


この約3週間でかなり泣いたもん。


もう泣いてばかりいられないモン!!!!!


笑顔で部屋に戻った。


『ちょっと!!何やってんのよ!』


部屋に戻ると、如月と璃音がアタシのアルバムを話しながら見ていた。


「想い出話よ」


そうじゃなくて。


まぁいっか!!


別に璃音に見られちゃマズい写真なんて、何一つ無いしね。


「殆どの写真、璃音と一緒なんだね」


璃音に気付かれていても何食わぬ顔で普通に話してくれる如月の嬉しそうな表情に、アタシも璃音も崩れるくらいの笑顔で答えた。


「如月、風呂」


え゛っっっっっ?????


もしかして一緒にってコト?


「エッ?あっ、はい!」


思わず敬語になってしまうくらいに動揺しているのは如月だけじゃ無かった。


アタシと璃音もだった。


「時間短縮!」


真面目な表情でビシッと言い放つ神楽に、アタシと璃音は吹き出してしまった。


如月と神楽がいなくなった部屋で、アタシは璃音にブレスレットを渡した。


お別れは言わないよ。


どうせ忘れちゃうなら悲しませない方がイイからね。


ただ、これだけは言わせてね。


『璃音、今までありがとう。コレ、アタシから。これからもずっとよろしく』


ギリギリ涙声。


ぐずぐずはしたけど。


「エッ?いつの間に??」


驚く璃音。


『秘密!』


なんてね。


「って、何で?何記念?」


かなり慌ててたけど。


アタシは泣きたいのを史上最高の笑顔でごまかす。


「誕生日の前渡し。見た瞬間に、“璃音にあげなきゃ”って、直感的に思ったの。繋ぎ目のプレート見て?」


《rion&hian》


名前は名前でも、2人の名前が刻印されてたんだ。


見た時は、さすがに涙目になっちゃったよ。


「何?何コレぇ!」


目が飛び出そうな璃音。


「何かさっきのアタシのプレゼントがちゃっちく見えちゃうじゃん!凄いぉぉぉい!!」


かなり声を弾ませて喜んでくれてる。


良かった。


神楽とbossにひたすら感謝だわ。


渡す前、隣の部屋で水晶を握り締めて祈ったんだ。


“璃音が幸せになりますように”


って。


アタシのストーンと一緒に。


効き目があるかどうかは分かんないよ。


でも、お兄様の意識にイントルード出来た事実に期待して。


『月明かりに照らしてみたりしてね』


アタシのストーンじゃないけどね。


「アンタさぁ最近ヘンだよ?まさかいなくなるの?まさかねぇ」


う゛っっっっっ!!!!!


や゛め゛で、、、泣けてくるでしょ!!


唇を噛み締める。


うつ向いてアタマを何度か左右に振った。


璃音、分かってるようで分かってない??


いゃ、こんなに鈍感じゃ無いハズだぞ?


まさかワザと?


だったら憎いマネするな!!


こっちは我慢してんだからぁぁぁ。






パーティーも一段落してみんなまったりし始めて、パパのご機嫌もかなりよろしくなってきた頃、パパがおもむろに立ち上がった。


部屋に行ったかと思ったら、すぐに戻ってきた。


『ハイ、妃杏』


紙袋を差し出された。


袋にはジュエリーブランドの名前が入っていた。


「凄いじゃない妃杏!ラズキスだよ?」


胸に込み上げる熱いモノを抑えるのが限界寸前だった。


まさに破裂寸前!!!!!


ラズキスはラズベリーキスの略称で、女子高生に大人気の、女子高生にはちょっとお高いブランド。


中を開けると、中にはリングが入っていた。


アタシは堪らず歓喜の声をあげた。


「凄ぉい!」


はしゃぐ璃音。


アタシも目がキラキラしちゃう。


涙と喜び両方で。


リングの裏を見るとシルバーの刻印の横に名前が刻まれていた。


ダメだ、限界!!!!!


涙が溢れてきた。


しかも、側面には小さな石が数個埋め込まれていた。


『コレって・・・』


さっきピアス探してた時に見たよ?


「ラピスラズリだよ!幸運の石!!」


璃音も覚えていた。


ダメだ、ヒクヒク言い出してきたよ。


肩を震わしちゃうよ。


アタシは泣き声のままパパママに言った。


『パパもママもありがとう。ホントにありがとう』


何度も何度もありがとうを繰り返した。




























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