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虹の彼方へ  作者: みかん
7/11

夜明

神楽が一生懸命PPを夢中で操作していたのは、お兄様が言っていた“デッドストーン”について調べていた為だった。


そんな中で、アタシはあるコトに気付いてしまっていた。


下弦の月の夜にアタシとお兄様の夢がシンクロした。


新月の翌日にお兄様の強い想いがあたしの潜在意識を呼び込んでしまった。


と言うコトは、上弦の月の日か翌日辺りに何かまた起こる。


もしかしたらアタシの意思で出来るんじゃないか---


そう行き着くのも不自然な話じゃないよねって。


そう思ったら、当然今度はアタシがお兄様の潜在意識に入り込む方法を探りたくなる。


たまらず神楽と如月に相談してみた。


「何をおっしゃるんですか妃杏様!!!」


真っ向から否定する如月。


「プラチナムストーンは選ばれた御方しか所持出来ない上に、所持している方それぞれに発するパワーが異なる為、想像以上のパワーを発します。ですので可能性を否定は出来ません。強く念じてみれば叶うかも知れません」


神楽はそう言ってくれた。


「チーフ!!!」


如月は否定派のようだ。


『ありがとう如月。でも、やってみたいんだ』


アタシがそう言ってしまうと従うしかなくなる如月には申し訳ないけど。


如月はアタシの気持ちを知ってるからこそ神楽に噛み付いてでも言ってくれてる。


泣きたいくらい嬉しいけど、アタシが神楽の気持ちを知っちゃってるダケにとってもフクザツだったりするんだな・・・。


正反対なコンビだからこそいいのかもね。






今日は終業式。


実質的には最後の登校なんだよね。


込み上げてくるモノがあるよ。


でも泣かない!!


第一、周囲から怪しまれるし。


とは言ってもやっぱり潤んではいるよ。


ぐずってるし。


「妃杏、風邪引いた?」


璃音が心配そうに声を掛けて来てくれる。


『鼻風邪かなぁ』


なんてごまかしてみて。


朝、制服に着替えた時からちょっとキテる。


『璃音、写メ撮ろっ!!』


怪しむ璃音をヨソに、アタシは至るトコロで撮りまくった。


想い出の場所で。


駅前や校門、教室で。


ちょうど夏休み前の最後の役員会があったから、生徒会メンバーとも撮影。


メチャクチャ我慢したよアタシ。


自分でも驚く程に。


初めは“人間てどれだけ泣けるんだろうか”ってくらいしょっちゅう泣いてたけどね。


今じゃ我慢出来てる。


成長したな、アタシ♪


「大丈夫ですか?」


如月が隙を見て声を掛けて来てくれる。


だけど、我慢してる時の“大丈夫?”は想像以上に効き目が大きいんだよね。


今にもダムが決壊しそう。


頑張れ!アタシ。


何だかこの時代からいなくなるって、イマイチ実感が無いクセに泣けてくるのはなぜだろう。


コレが“本能”ってヤツ??


サヨナラ。


中学から5年間、お世話になりました。


校門を出る寸前で振り返り、心の中で別れを告げた。




「妃杏様!」


帰り道の途中、如月が突然ひきつり気味の表情でアタシの胸元を見た。


如月の視線はアタシのPPだ。


PPが光っている。


エッ?どうすんの?


慌てるアタシ。


「大丈夫です妃杏様。手をかざしてみて下さい」


冷静沈着な神楽の指示に従う。


PPはこの時代に無いモノだから、周囲の人にはアタシがPPを操作しているしぐさは見えないんだっけ。


落ち着いてPPに手をかざす。


アタシの目の高さにPPから光が伸びて、TVモニターの様なモノが現れた。


久々だから記憶がリセットされてるかってくらい新鮮に驚く。


bossだ。


「妃杏様、皇子様の件なんですが」


『分かったの?』


つい声が大きくなってしまう。


「大変申し訳ありません、申し上げ難いのですが、ワタクシ1人の力ではちょっと厳しいモノが御座いまして…、」


嘘ぉぉぉん。


ちょっと目の前が暗くなった。


「皇王様に御伝えしても宜しいでしょうか?」


一瞬にして心臓がペシャンコに潰された。


アタシはbossのコトバを途中で遮り即答した。


『ダメ!!!絶対ダメ!!!!!お母様もダメ!!お願い!!!!!!』


アタシはbossに手を合わせて懇願していた。


「かしこまりました。では皇大王様は…」


お祖父様?


お祖父様・・・・・かぁ。


アタシはしばらく考えた。


歩きながら。


どうしても誰かに言わなきゃいけないんだとしたら、やっぱりお祖父様かなぁ。


神楽の顔を見上げる。


神楽はただ笑顔で頷いた。


『bossがそう言うならイイよ。その代わりお祖父様だけね』


言った後、神楽をもう一度見た。


神楽ももう一度笑顔で頷いていた。


如月を見ても反応は同じだった。


「ワタクシの力不足で御迷惑をお掛けしてしまうコト、大変遺憾に存じます。妃杏様の苦渋のご決断、大変感謝致します」


bossの姿が消えた後、アタシはなぜか溜め息をついていた。


ホントはこの4人で片付けたかったな。


無意識のウチに空を見上げていた。


お兄様。


手はストーンを握り締めていた。


ここのトコロお兄様のコトを思うとなぜか自然とストーンを握り締めている。


神楽のコトバが効いているんだと思う。


“強く念じてみれば叶うかも”


って。


暇さえあればストーンを触ってる。


お兄様の潜在意識にイントルード出来たトコロで、酷くショックを受けるかも知れない。


でもアタシはお兄様のホントの“ココロ”が知りたい、ただそれだけなの。




夜、星空を眺めていると、視界の隅で光を感じた。


視線を下に落とすとまたPPが光っていた。


bossだった。


「何度も申し訳ありません。皇大王様がどうしても直接お話がしたいと仰いまして」


え゛!!!!!!!!!!


表情が固まる。


今誰かの顔を見たら確実に決意が揺らぐよ。


でも15年逢ってないんだもんな、変わってるよね。


どうせ聞くなら伝え聞くよりは直接の方がイイしね。


『どうぞ』


数秒もしないでお祖父様が現れた。


一気に涙が込み上げてきたけどグッと唇を噛み締めて我慢する。


「妃杏、ここまで長い時間が掛かってしまったコト、大変申し訳なく思う」


お祖父様の優しい声にさらに唇を噛み締める。


声に出したら泣いちゃうから、首をヨコに振る。


「立派に成長したと聞いて大変安心しているよ。今回のコトもコトバが出ない程に感心したがどうしても黙っていられなくてな。妃杏の気持ちを考えるとこうするべきでは無かったんだろうが」


お祖父様の表情が、悩んだコトを物語っていた。


また首をヨコに振って、大きく深呼吸したあと口を開いた。


『アタシこそ身勝手なコト言ってごめんなさい。どうしてもココにいるウチに解決したかったから』


言った後、もう一度深呼吸した。


「大きくなったな」


お祖父様は目を細めた。


「まさか琉雅(りゅうが)(お兄様)がそんなコトをするなんて、まさに青天の霹靂で正直困惑している。と同時に妃杏に何と言ってイイか、本当にコトバが無い。申し訳無い」


はぁぁぁ!


お祖父様がアタマを下げてる。


『ヤメてお祖父様!お祖父様が謝るコトじゃないもの。誰のせいでも無いよ』


つい心臓がバクバクしちゃったよ。


「妃杏と琉雅の様なケースは過去にもあって、そのうち何度かやはりトラブルにはなってしまっていたがこういう形は例になく、どうしたら良いか判断に悩むトコロだ」


そりゃそうでしょうねぇ。


まさか時空を越えて、しかも惑星まで越えるなんて、そうそう前例があるハズも無いよな。


「琉雅が過去に行った惑星等を調べてはいるが、なかなかデッドストーンの謎にたどり着かないのが現状だ。もしかしたら合成の可能性もある」


『見た感じは熔岩みたいな感じ』


「熔岩??」


お祖父様の顔がイッキに険しくなった。


「一刻も早く解明する」


真摯な表情で言ってくれた。


間もなくお祖父様の姿が消えた。


その後、アタシはベッドに入るまでずっと空を見上げていた。


手にはストーンを握り締めて。


ベッドに入ってからもストーンは手はそのままストーンに触れていた。






あれ?


ココどこ?


夢?・・・だよねぇ。


もしかしてお兄様の潜在意識の中???


アタシ、空飛んでる?


下に建物が見えるから。


、、、もしかして生家?


皇室??


どうなってんの?一体。


神楽ぁ!!!如月ぃ!!!bossぅ!!!


無反応だ。


当たり前だよな。


アタシ、勝手に移動してるよ。


完全に夢だな。


ってコトはやっぱりお兄様の夢か潜在意識の中だな。


今夜、上限の月じゃ無かったのに。


でも、神楽の言うコト信じてみて良かったな。


なんて考えてるウチに、アタシは王室の中に入っていた。


またしても今まで失っていたハズの記憶が、実際の光景を見て怒涛の様に甦ってくる。


アレ、地下にむかってる?


地下なんて行ったコト無いよ?多分。


エッ?アレはもしかして、お兄様?


子供の頃のお兄様に見えるけど。


「琉雅様ぁ!」


うわっっっ!!!誰か来る!!どうしよう。


お兄様を呼ぶSPらしき声と足音がする。


ヤバッ、隠れなきゃ!


エッ?


お兄様はある御部屋に入っていった。


しかも扉に何かを触れさせて。


だいたい地下ってアタシ、行っちゃいけないって言われてたよ?


どうしてお兄様が?


ゲッ!SPが降りてきた。


しかも2人も。


万事休すだ!


仕方無い、開き直って教えちゃえ!


『お兄様はこ・・・』


聞こえてない?


アタシの姿も見えてない?


嘘でしょ?


ん?


アタシ、浮いてるってもしかして幽体離脱??????????


んなワケないよね。


ってコトはあの御部屋に入れちゃう?


!!!!!!!!!!


壁抜け…、扉抜けしちゃったよ!


中にはお兄様がいた。


何歳のお兄様だろう。


ってお兄様、何してんの?


えぇぇぇぇぇ?????


全身を駆け巡る言い知れぬ悪寒。


薄暗い室内でお兄様はある物体をひたすら見つめていた。


狂気にも見える表情で。


しかも廻りには同じモノがたくさんある。


もしかして、デッドストーン?????


お兄様がこの前持っていたモノよりもはるかに大きいけど。


デッドストーンの正体って何なの?


うわぁぁぁ!


石が喋った!!


【後継者は妃杏では無い。琉雅、お前だ】


いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!


あまりの恐怖に声が出ない。


「後継者はオレ」


お兄様?????


心拍数があり得ないくらいに速い。


息が出来なくなりそうなくらいに。


何なのコレは?


そして何でアタシの存在に気づかないんだろう。


ん?


場面が変わった。


ココは?


ドコか分からないけどまたアタシは空にいる。


地上にはたくさんの人がいる。


??????????


あの服装はレジスタニア!?


心臓がいくつあっても足りないよ!!


あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


レジスタニアの集団の前にはお兄様が立っている。


しかもさっきよりは大きくなってるけど今のお兄様では無い。


何歳だろ。


「妃杏様がいない今こそ後継者の座を琉雅様に!」


全身の血の気が瞬速で失せた。


気すら失うくらいに。


何度も全員で連呼している。


こんな恐怖、感じたコト無いよ。


金縛りみたいな感覚に襲われている。


身動きが出来ない。


でも解ったよ、解決法が。


早く神楽達に教えなきゃ。


って、どうやって?


あっっっ!


神楽とか如月の名前を強く呼べばイイんだなきっと。


神楽!如月!神楽!!如月!!


何度も何度も繰り返す。


早く助けてよバカぁぁぁ!


神楽ぁぁぁ!!!




「妃杏様!?」


『神楽ぁぁぁぁぁ!!!』


目の前に神楽がいた。


風景もアタシの部屋になってて。


泣かないって決めたのにまたしても泣く。


しかもかなり号泣。


目の前の神楽に抱き着いちゃって。


さすがにあんなの見ちゃったら、今だけ泣かせて下さい。


ひたすら泣き続けるアタシを、神楽はただ黙って優しく包んでくれていた。


隣には如月もいて。


如月はさりげなくSMTを差し出してくれた。


『ありがとう』


「何となく妃杏様の声が聞こえてふと目が覚めたらチーフも目が覚めて」


アタシの“バカぁぁぁ!!!”が通じた?


アタシは声を震わせながら全部話した。


「地下のお部屋、、、ですか?」


神楽も如月も不可解そうな顔。


「我々も立ち入るなと言われておりますので」


と首を傾げる如月。


「bossに報告させて頂いてよろしいですか?」


神楽の眉間のシワが重大さを物語っている。


アタシまで眉間にシワが寄っちゃうよ。


「ストーンが喋るって奇怪ですよね?」


いつの間にか如月はPPを操作していた。


アタシが全部話し終わった頃には部屋の空気はどんよりとしていて暗くて重かった。


「やはり妃杏様のご推察通り、皇子様をお助けしなければなりませんね」


神楽の表情が少しだけ和らいだ。


「でもレジスタニアのトップにまさか皇子様がいらしたなんて」


如月らしからぬ神妙な顔。


『さすがにこのコトはboss以外には言わないでね』


アタシ、低いトーンで言った。


神楽も如月も大きく頷く。


いくらお祖父様にだって言えないよ。


理由はどうであれ、お兄様がレジスタニアだったなんて。


どんなに悲しむか。


『そんなにストーンって絶対なの?』


アタシ、上目がちな眼差しで尋ねる。


おどろおどろしく如月が答えてくれた。


エージェントの中でまことしやかに囁かれている噂によると、過去にアタシ達のように上下逆転して後継者になったケースの中で、後継者じゃない方が継承したコトがあったらしいんだけど、その直後に、噴火するハズのないプラチナムマウンテンが噴火して、理論的には考えられない自然災害が起きちゃったんだって。


慌てて後継者を本来の方に戻して事態を収めたらしいんだけど。


琉冠星の人間である以上、ストーンには逆らえないってワケか・・・。


アタシにとってはお守りだと思っていたペンダントが、今は何だか重く感じる。


『神楽には兄弟は?』


「姉がおります」


上かよ!!でも女性か。


『御姉様か。イイね!』


ウチも女同士だったらモメなかったかな。


『もしさぁ、神楽がお兄様の立場ならどうする?』


神楽に聞くのが間違ってそうな質問をあえてぶつけてみる特攻野郎なアタシ。


“「ワタクシはストーンの示す通りに忠実に行くだけです」”


とか何とかシレ〜っと言って退けちゃうんでしょ、どうせ。


って、考えてるぅぅぅ!?


「出ました!」


突然如月が叫んだ。


如月、いつの間にPP操作してたの?


「地下には、過去に追放された皇室の方の追放された際に発生した塊が厳重に保管されているそうです」


周りの空気が一変した。


『お兄様はデッドストーンとレジスタニアに操られているだけなのよ!!』


アタシは叫んだ。


「直ちにbossと皇大王様に処分して頂きましょう」


すかさず神楽がPPに手をかざした。


メール?


時空も惑星も飛び越えて?


理解不能だワ。


何、この記号だらけの暗号みたいなのは。


そう言えばアタシ、神楽にしろ如月にしろPPを操作している姿は良く見るけど、どんなコトしてるかなんて気にしたコト無かったなぁ。


全く何を書いているか分かんないや。


「でもチーフ?あの御部屋をどう処分するかは別として、皇子様やレジスタニアが余計に反乱を起こす可能性は無いでしょうか?」


如月がしかめっ面で言う。


「当然可能性としては否定出来ない。だがその塊がデッドストーンの正体である以上、放っておくワケにはいかないだろう。その辺の対策も含めて報告する」


何だかココ何日かの如月、メチャクチャ頼りになるんだけど。


ついに(やっと)開眼した?


妄想男如月、いよいよ本領発揮か!?




その後ウチらは結局一睡もしないまま朝を迎えた。


あの地下室が、お祖父様のストーンの力で消滅されたと言う報告を受けたのはその日の夜だった。


お兄様はあいにくなのか幸いなのか琉冠星にはいなかったらしい。





















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