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虹の彼方へ  作者: みかん
3/11

運命

「寛大なお心遣い、誠にありがとうございます。誠心誠意、妃杏様にお仕えさせて頂きます」


如月が土下座してきた。


『そんな大袈裟な』


ひきつるアタシに、神楽はボソッと言った。


「また1人、妃杏様に忠義を尽くす者が増えちゃいましたね」


神楽、含み笑い。


ん?


首を傾げるアタシに、意味深な笑いでごまかされたみたいだ。


ナニ???“また1人”って。


ヘンなヤツ・・・。





“フォールアップ”、実に恐るべき。


夕飯の時5人で食卓を囲んだけど、パパママ、フツーに神楽や如月と接してて。


まるでホントに初めからこの5人で生活しているみたいで。


アタシだけ1人、馴染めずに取り残されてる気がする…。


ついていけないヨ。。。


食後は3人で後片付け。


『ずいぶんと手際がイイんだね』


テキパキこなす2人をアタシは感心気味で見ている。


アタシの勝手な予想でいくと、この人達の時代くらいになると何でもオートマチックなんじゃないかって思っちゃうから。


「アカデミアでやらされますから」


苦笑いして如月が教えてくれた。


こんなコトもやるんだ。


ちょっと衝撃的。


あれ?何だかイイ香り。


いつの間にか神楽がコーヒーを淹れていた。


すんごいイイ香り。


「マグカップは合ってますか?」


ちゃんとそれぞれのマグカップに入れてくれてる。


見れば色とかで何と無く分かるかな?


それにしても、、、


『すんごいイイ香りなんだけど』


興味津々で神楽の隣に行く。


「これですよ」


いつも使っている、そこの棚にあるドリップコーヒーだった。


アタシは目を丸くさせた。


『ホントに!?』


いつもと全く同じコーヒーなのに、いつもと全く違う香り。


すんごい上品な香りで、コーヒーショップみたいな香りがする。


『こんなコトもやるの?』


如月に耳打ち。


「コレはチーフの特技です。センターでも凄い評判です」


へぇぇぇぇぇ。


感心し過ぎて呆気に取られる。


部屋に戻ると神楽も如月も入ってきた。


・・・・・・・はぁぁぁ。


コレがずっと続くの?


もう一度溜め息。


とりあえず、いつも通りベッドに腰を下ろす。


立ったままの2人。


「妃杏様、ちょっと失礼しますね」


えっ?


如月がアタシの手首にあったブレスレットを外した。


そう言えばそうだったね、コレ、如月のだったね。


『ありがとう。お陰で助かったよ』


「恐縮です」


何か如月、ちょっとおとなしくなった?


そんなに効いてるの?


神楽に箱を差し出された。


これもまたSMTみたいに開け口も継ぎ目もフタも見当たらない。


まさか、、、


「お手を」


やっぱりかぁぁぁ。


言われるがまま、箱に手をかざした。


はぁぁぁぁぁ。


手をかざすと、箱の上部が消えて中のブレスレットが現れた。


コトバが出ないよ。


動きも止まっていて、アタシは呆然となった。


「妃杏様?」


神楽の声がアタシを引き戻してくれた。


『ごめんなさい』


ブレスレットを手にして散々眺め尽くした後、右手首に掛けた。


コレもまた肌が触れるとスッと装着されちゃう手品みたいな作りだった。


如月が外す時も、何だか一瞬でスッと外れたもんね。


技術の進歩イコール手品?


目を見張るモノだらけだ!!


「それから、本来は我々エージェントのみのアイテムなのですが、如月の暴走のせいで妃杏様が御一人になる可能性が御座いますので、皇王様の許可を頂きまして妃杏様仕様を御用意致しました」


神楽はもう1つ箱を差し出した。


もう驚かないよ?


むしろ好奇心♪


中には神楽達と同じペンダントが入っていた。


「ポータブルプレーヤー、通常PPです」


ポータブル“コンピューター”じゃあ、無いんだね。


ポータブル“ミュージック”プレーヤーでも、無いんだね。


“本来はエージェントのみが持つアイテム”か。


コレってさっき神楽がbossを出したヤツだよね?


目をキラっキラさせて手に取る。


3ミリ程の厚さに10円玉程の大きさのシルバーのプレート(でも、全く重さを感じない。)にあのエンブレムが刻印してあって、裏にはストーンと同じ石が埋め込まれている。


ちょっとスクエアが入っていて、ジュエリーショップで売ってても何らおかしくないデザインでイッパツで気に入ったよ!


簡単に使用法を教わった後、アタシは1人ベランダに出てストーンを眺めていた。


皇王様、か。


さっきの神楽のコトバを思い出していた。


お父、“様”なんだよね、きっと。


顔は出てくるけど、あくまでも10年以上も前の話だしな。


ふと空を見上げた。


ストーンを眺めている時と同じぐらい、空を見上げている時も心が安らぐ。


お母様・お兄様・お祖父様お祖母様みんなの顔が浮かんでくる。


10年以上前の記憶だけど。


何だか複雑。


1階にはパパママがいるのにね。


「星空、今でも御好きなんですね」


神楽が隣の部屋の窓からベランダに出てきた。


『今でも?』


「ハイ。皇妃様からお伺い致しております」


皇妃様、お母様か。


「幼い頃から空を見ると泣き止まれたり、何かあると空を御覧になっていたそうです」


そんな昔っからだったんだね。


『ピアノも、今でもなさるんですね。リビングにありましたし御部屋にもキーボードが』


ピアノも?


そう言えば襲われた日もアタシ、ピアノ弾いてたよね?


2歳そこいらでピアノって・・・。


「妃杏様は大変優秀でいらっしゃいまして、1歳で読み書き6ヵ国語の日常会話をマスターし、2歳でピアノをマスターなされたそうです」


おぃおぃおぃおぃおぃ。


どんだけウルトラスーパーハイパーキッズなんだよ。


「でもその名残が今でもおありなんですね」


隣の部屋にいたハズの如月がいつの間にかアタシのデスクの前にいた。


デスク前に模試の結果を貼ってあるのを見ていた。


「如月!!勝手に何をしている!」


神楽の鋭い声が如月を一喝する。


『見えるように貼ってある方が悪いのよ。それよりいつの間にいたのよ』


ビックリしたわぁぁぁ。


「全国3位とかですよ?凄いですよね、さすが妃杏様!賞状もたくさんリビングにありましたし」


確かにそうだけど、何だか恥ずかしい。


ちょっと赤面。


確かにひだまり園にいた時からキーボードを弾いてて先生達に驚かれてたっけ…。


日常会話は、それ以降あまり専門的な勉強をしてないからあまり進歩してない気がするけど…。


その名残だったのね。


自分の過去が次々に明るみになってきて、ホントなら嬉しいハズなのに複雑。


「妃杏様がこんなに御立派になられてて、皇王様方もさぞかしお喜びになられるコトでしょう」


心臓が飛び出しそうになった。


顔も硬直。


今はそう言う話題、ちと辛い。


お父様やお母様のコトを考えるのが。


逃げても仕方無いし、逃げて済む問題じゃないし。


でも、まだキツいな。


何せ昨日の今日なんだもん、無理に決まってんじゃない。


アタシ、そんなに強く無いよ。




強くないからなかなか眠れない。


眠れないまま時間は過ぎ、現在午前3時過ぎ。


ベランダから見える隣の部屋の如月は、、、爆睡中。


今まで使っていなかった隣の部屋は、1日(?いや、数時間か?)にしてれっきとした男子2人の部屋に変わり果ててしまったのだ。


フォールアップ、恐るべしその2。


神楽はアタシが寝るまで側にいるって、アタシのデスクでPPを操作中。


“寝れそうに無いから休んで”って言ってるんだけど、“ご安心下さい”って言うだけで。


この神楽の“ご安心下さい”って、神がかり的な安心感があるんだよね。


何も言い返せなくなる。


1人で家を出ていったハズなのに、帰ってきた時には神楽がいて、家の中には如月がいて、知らないウチに如月と神楽が兄弟になっていて。


グレートな1日だったよ。


普通に生きてたらこんなコト、経験できないよ。


ん?この香りは??


振り向くとトレイを持って笑顔で神楽が立っていた。


「いかがですか?」


コーヒーだ。


『コーヒーなんて飲んじゃったらますます寝れないじゃない!』


なんて。


逆に、飲んだ方が眠れたりして。


だから言っときながらコーヒーに手を伸ばす。


「ミルク多目にしておきました」


くぅぅぅ、泣かせる気遣い。


んんん〜♪やっぱり美味しい!


!!!!!!!!!!


突然ペンダントが点滅し出した。


イッキに緊張が走る。


「ワタシの手を離さないで下さい!」


強くアタシの手を握って神楽はそう言った。


神楽がPPに手をかざし、昼間の白いドーム状のバリアを出すまでの時間は、瞬きするより速かった。


瞬速?音速??光速???


次の瞬間には、もうベランダにはいなかった。


あの時アタシの前からいなくなった時と同じだ。


何だか、いつも見ている風景が歪んで見えてる。


もしかしてコレが“時空の歪み”?


心臓、ドキドキしている。


超高速で。


ペンダントの点滅が更に激しくなっている。


神楽はPPに手をかざし、蒼白い光の玉のようなモノを出した。


神楽の手のひらで浮かんでいる。


科学の進歩って超能力者も真っ青だよね。


景色の歪みが治まった。


パネルに“サーチアップ”の文字が出ると光の玉は一瞬にして神楽の手のひらから暗闇の中を閃光のように駆け抜けて行った。


かと思ったら、数メートル先で薄赤の光に色を変え大きくなり、中に人の姿が見えた。


レジスタニア??


光はまっすぐ天に向かって延び、遥か彼方に消えていった。


次の瞬間、眩い光と共に元いたアタシの部屋のベランダへ戻っていた。


この間、実際はきっとたったの数秒間だったんだと思う。


けど、アタシには何時間にも感じた。


長い長い時間だった。


「本来であれば妃杏様をお連れするべきでは無かったのですが、如月を起こしたり、パワードームと申しますあのバリアを出すよりは妃杏様を御一人にするくらいなら恐縮ながらもお連れした方がイイかと思いましたので。申し訳ありませんでした」


神楽は深々と頭を下げた。


『謝る必要無いよ』


まだ心臓バクバクしてるけど。


コーヒーを口にするとコーヒーは全く冷めてなくて、さっきと変わらない熱さだった。


やっぱり一瞬の出来事だったんだね。


マグカップを口に当てたまましばらくぼ〜っとしてしまっていた。


「妃杏様?」


神楽の声がした。


『アタシが戻ればこんなコトは無くなるんだよね?』


視線は変えずに尋ねた。


言いながらも胸が痛む。


ん?


神楽の声がしない。


気になり顔を上げると神楽の顔は気難しい顔になっていた。


「ご自分を責めるのはお止め下さい。レジスタニアを壊滅出来ない我々の責任以外にございませんので」


アタシの方をジッと直視していた。


反国家組織かぁ・・・。


いつの時代もいるモンなんだね。


「皇王様から“可能な限り、妃杏の意思を尊重しろ”と厳命されております」


“可能な限り”???


気になるワードが。


そして衝撃の真実が。


「先日の満月の際に時空間の歪みが出来たコトにより、次の満月がリミットになるでしょう」


気を失うかと思った。


実際、クラクラした。


次の満月・・・・・。


約1ヵ月。


「ちょうど妃杏様の17歳のお誕生日の翌日にございます」


アタマに物凄い衝撃を受けた気がした。


“ガン!!!!!”


って、一瞬にして鈍いんだけど鋭くもあり。


“誕生日の翌日”??????????


さすがに今回は立ち直れなかった。


夜が明けても全然眠れず。


日の出をベランダから見ていた。


あのワンピースを手にしたままで。


“17歳のお誕生日の翌日”


って聞いた直後、アタシはカラダが勝手にクローゼットに向かっていて、ワンピースを出していた。


ワンピースを見つめて、ただ呆然として。


そしたら夜が明けて。


日の出を見ていたら少しは気が晴れてきたから1階のパパママの部屋に行ってみた。


「ワタクシはリビングで待機致しております」


って、神楽も一緒に下に降りてきて。


神楽だって寝てないのに・・・。


神楽を心の隅で気に掛けながら、パパママの寝室でアタシは2人の寝顔を見ていた。


さすがにベッドに侵入は驚かせちゃうから側に寄り添って。


涙が止まらなかった。


声を殺して泣き続けた。


今までのコト、色んなコトが浮かんできて。


声に出さないように泣いても止めどなく出てくる涙には勝てなくて、アタシはそっと部屋を出た。


やっぱり無理だ、声にしないで泣くなんて。


我慢出来ない程の大量の涙が、どうしたって出て来ちゃうから。


そのまま洗面所で顔を何度も何度も洗い流した。


水なんだか涙なんだか分かんないくらいグシャグシャだったけど。


ん?


リビングに行くと、笑顔の神楽がいた。


いつの間にかアタシのマグカップにはミルクが注がれていて。


神楽の笑顔を見たらまた涙が出て来たよ。


神楽はまるで子どもにするみたいにアタマをぽんぽんと優しく撫でてくれた。


これがまたアタシの涙腺を刺激する。


パパママもこうしてくれたコトあったから。


部屋に戻り、今度はアルバムを全部テーブルの上に並べた。


神楽が見たいって言うから。


すると神楽はPPに手をかざし、小さいメモリーカードのようなモノと、次にもうちょっと大きめのカードを出した。


2つのカードから緑の光が出て神楽はその光を写真に当てていく。


まさかとは思うけど、取り込んでる?


唖然としながらも、アタシは写真の説明をした。


さっき散々泣いたからなのか、今度は涙の代わりに飛びきりの笑顔しか出なかった。


楽しい思い出ばかりだから。


泣いちゃうかなって覚悟してたけど大丈夫みたい。


たぶん、このカードに対する好奇心のお陰だワ、きっと。


今で言うSDカードとかmicroSDカードみたいな感じなんだろうけど、ハイテク過ぎる・・・。


アタシには手品にしか見えないヨ。


「妃杏様は皆様から愛されてるんですね」


ひやっっっっっ!!!!!


そんな眩しい笑顔でしかも照れちゃうようなコト言わないで!!


ドキドキしちゃうじゃないのよぉ!


心臓に悪いワ、神楽のこの笑顔。


気が付くと、もう6時を過ぎていた。


外は完全に明るい。


何だかようやく眠くなってきたぞ?


大きなアクビが出た。


「お休みになりますか?」


『洗濯してからにする』


ついでだからやっておこう。


「それならばわたくしが」


『んなワケ無いでしょ!じゃあお風呂掃除お願いしていい?』


あぁ、ビックリして吹き出しちゃったよ!


いくら何でも洗濯はちょっと。


「かしこまりました。」


・・・って、お風呂掃除なんて出来んの?


出来てるよ。


アタシはぽかーんとお風呂掃除をする神楽を眺めていた。


神楽にバレないよう、アクビを連発しながら。


それにしてもお風呂掃除まで出来ちゃうなんて。


何でもやるの?エージェントって。


どんなトコなんだよ、一体。


洗濯を終えて朝食を済ませたら一気に眠くなってきちゃったよ。


アタシはその後夕方まで爆睡したのだった。






翌朝---


ん?


部屋のドアを開けると下からいい匂いがしてきた。


やばっ!!


いつもならアタシがやるのに!!!!!


慌てて下に駆け降りる。


キッチンには如月と神楽が立っていた。


『ごめ〜ん!』


慌ててエプロンを、、、無い!!


ダイニングテーブルの椅子に掛けてあるハズのアタシのエプロンが無かった。


ふと顔を上げると如月がアタシのエプロンをしている。


神楽はママのエプロンしてるし!!


『ちょっと!』


2人の元に駆け寄る。


・・・出来てる。


しょうがないから盛り付けするか。


いくら何でもオンナのアタシが何もしないで男子2人がお弁当準備って。


って、弁当箱が5つある!


何と出来過ぎな。


しかし何なの?この未来人達は。


ホントに未来人なの?


アタシの勝手な未来イメージがもろくも音を立てて崩れ去っていくよ。


でも、如月と神楽がいるコトが当たり前な雰囲気に違和感を感じてるのはアタシだけなんだよね。


この、現代の科学では説明不可能なコトを普通にしてる辺りは、未来人なんだよね?


ワケわからんわ。




『行って来まぁす!』

「行って来まっっっす!!」

「行って参ります。」


3人で家を出る。


のはイイんだけど(良くないけど!!)、、、、、


『何で同じ制服着てんのよ!』


如月に噛みつく。


家で吼えたかったケド、何かタイミング逃しちゃって言えなかったから玄関のドアが閉まってすぐさま吼えた。


如月、ウチの学校の男子の制服着てんだモン!!!。


「離れていたら警護も出来ないじゃないですか!?」


如月には全く悪びれている様子が無い。


そりゃ仰る通りですが。


『だったら何で神楽は私服なのよ!?』


ドス混じりに。


「チーフは年齢的に高校生は無理です。オレはまだギリで間に合いますから、オレは妃杏様と同級生・チーフは同じ大学の院生と言うコトで」


『同級生?????』


がっくり肩を落とした。


アタシが養女って事実まで変わってる?もしかして。


むちゃくちゃだよ。


しかもむちゃくちゃはこれに留まらなかった。


「見て見て♪神崎3兄弟だよ!!」


はぃぃぃぃぃ???


思わずアゴを突き出してしまう。


“神崎3兄弟”ぃぃぃ??


アゴ外れそう。


隣の神楽も愕然としている。


「3人全員恭新学院だなんて、出来すぎだよね。」


道行く人達(ほぼ女子中高生)の、明らかなウチらに対する風評?評判??が耳に入る度、見えない重い石が肩にのし掛かる。


「執行猶予、取り消しますか?」


上機嫌に見える如月とは正反対の神楽。


かなり怒り心頭そう。


見た目はメチャクチャ穏やかだけど。


内心ははらわた煮えくり返ってそう。


やっぱり如月の仕業なのね。


アタシは何も言わず首を横に振った。


あまりにもくだらなすぎて、“うん”て言えないよ。


そうこうしてる間に、いつもの待ち合わせ場所で待ってる璃音が見えてきた。


璃音もやっぱり違和感無く如月達と接するんだろうか…。


「おっはよぉぉぉ!!」


えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?????


またしてもアゴが外れそう。


璃音はウチらの顔を見るなり飛び付いてきた。


溢れんばかりの笑顔で・・・、


如月に。


思わずまた神楽を見る。


アタシが畏縮しちゃうくらいのド迫力だった。


鳥肌が立った。


「成績優秀・容姿端麗の院生の長男・神楽に、スポーツ万能の次男・如月、成績超優秀・生徒会副会長の末っ子の妃杏。完璧な兄弟だよねぇ」


全身にグサグサ何か鋭いモノが突き刺さってる。


まさに耳が痛い。


気が付くと、アタシも神楽も無数の溜め息をついていた。


少し前を行くご機嫌な如月と璃音。


その後ろをどす黒いオーラでぐったりしながら歩く神楽とアタシ。


2人とも溜め息連発で。


校門をくぐり、神楽とバイバイ。


「何かあったらすぐ連絡下さいね!!」


別れ際、アタシの目をキッと見据えて言った。


アタシはただ笑顔で頷く。


確かに如月じゃイマイチ頼りにならないもんね。


え゛っっっっっ?????


璃音とイチャイチャ話しながら、あろうことか如月はウチらの教室に入っていった。


えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??


席が1つ増えてるし!!!!!!


クラスまで同じ???


すかさず如月に詰め寄る。


「違うクラスじゃ意味がないじゃないですか!?」


、、、、、確かに。


クラスのみんなに何ら違和感無く溶け込めている如月に違和感を感じながら、頬杖をついてぼんやり窓の外を眺める。


何だか、言い様の無い疎外感みたいなモノを猛烈に感じるアタシ。






昼休み---


「行くよ、妃杏!!」


はぃ??


授業が終わるや否や、音が立つかのような勢いで立ち上がった璃音が張り切ってアタシに言ってきた。


『どこに?』


きょとんとするアタシに璃音はあきれ気味に答えた。


「何すっとぼけてんの?お昼はいつも神楽サン達とセンターホールで一緒に食べてんじゃん」


初耳ですが・・・・・。


どんどんどんどん疎外感。


アタシの知ってる、今まで過ごしてきたハズの日常なのに、


アタシ、まるで浦島太郎みたい。


トシは取ってないけどね。


馴染めないアタシがいけないんだろうけど。


こんなにイッキに日常って変わるモノ?


馴染めるハズがないよね。


璃音と如月はやっぱりイチャイチャしていて、センターホール(学院共有のフリースペース)に移動している間も、センターホールで食事してる時もイチャイチャ。


璃音が楽しそうだからイイけど、璃音を取られたみたいでちょっぴり嫉妬。


璃音も如月もアタシを気に掛けてくれるから孤独感は無いんだケドさ。


教室以外は神楽がいるしね!


今までずっと璃音とばっかりつるんでたから、ちょっとは刺激があっていいかな。


なんて、アタシってばスーパーポジティブ!!!!!


・・・・・そう思わないと持たないワ、マジで。




















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