覚醒
「璃音、お待たせ!」
ある晴れた土曜の午前中。
アタシ、神崎 妃杏は親友の笹崎 璃音との待ち合わせ場所にいた。
今ちょうど璃音が来たトコロ。
いつもは登校時に一緒なダケで、帰りはお互い部活(璃音)や生徒会やバイト(アタシ)で、バラバラなの。
だから2人で出掛けるのは物凄く久し振り。
だから2人でムダにはしゃぐ…。
あーでもないだのこーでもないって、どうでもいいくだらない話を2人で話ながら歩いていると、1人の男の子(推定5〜6歳)が突然手を付いて転んでしまった!
結構離れていたにも関わらずアタシはその男の子の元へ駆け寄る。
「妃杏!!」
璃音の声にも耳を貸さず、見てみぬフリのオトナにも気にせず。
親らしき人は見当たらず、後から友達らしき男の子2人が現れた。
我慢してグズり気味の男の子にアタシは笑顔で声を掛ける。
『痛くないよ、大丈夫!』
擦りむいているから、膝からは少し血が出ている。
手のひらも擦りむいちゃって。
バッグからウェットティッシュを出して、男の子の手と膝を拭いてあげて、絆創膏も貼ってあげて完了!
小さい頃に、“困っている人を助けてあげるのがアナタの役目です”って教わって来たから昔っからこーゆーのってほっとけないんだけど。
「妃杏!」
腕組みしながら眉間にシワを寄せた璃音が現れた。
璃音はアタシのこの“クセ”を全くと言ってイイ程に良く思っていない。
「どーしてアンタはいつもそうなのよ!今のご時世、イイコトしたって認められるとは限らないのよ?」
って、耳にタコが出来る程に言われてる。
だからアタシはその都度、決まってこう答える。
「んなのほっときゃいーじゃない!」
ってね。
アタシはスッと立ち上がって構わず歩き出した。
「ったくもう!」
すっかり呆れる璃音。
ママに言われたコトバじゃないコトは分かってるんだけど、それが脳裏に焼き付いて離れないの。
外が暗くなり始めてからアタシのテンションはMAXに近付く。
なぜなら今日は満月だから!。
特段天文に興味があるワケでは無いんだけど、空を見るのは大好きなんだ。
コレも昔から。
だから星や月がきれいな夜空は特にたまらなく大好き。
それだけでテンションが上がっちゃう↑
こういう日は早々にバスタイムも食事も済ませて部屋にこもるの。
紅茶かコーヒーを持ってベランダに出る。
その後はしばらく空を眺める。
ただ見るのもたまらないけど、それよりももっとたまらなく楽しみなコトがあるんだ!
アタシが肌身離さず着けている天然石のペンダントがあるんだけど、これを月にかざすとこれがまた神秘的で幻想的な光を放つの。
その光を見るのが一番テンションアップするかな。
このペンダント、カットも研磨もされてない、おそらく原石。
うっすら紫がかったクリアな楕円形の、3センチくらいの石。
石を眺めているだけで心が落ち着くんだよね。
アタシの御守り的な存在。
でもこの石、とってもunbelievableなコトにアタシ以外の人には一切見えないみたいなんだ。
初めは信じられなかったよ?
でも、そうみたい・・・。
アタシ、5歳の時にこの家(神崎家)に養女としてやって来たの。
その前に2年くらい、ひだまり園ていう児童養護施設にいたんだけど、そこに連れられてきた時のコト。
名前・誕生日・年齢は言えたモノの、それ以外のコトは何も答えられなかったの。
で、職員さんに“「何か手掛かりは?」”って聞かれた時に、ペンダントを手に取って見せたんだけど、
不思議な顔されて、“「何?」”って言われちゃったんだよね。
ペンダントの継ぎ目のトコロに小さいプレートがあって、そこに
“妃杏 7.30”
って刻印されてたから誕生日が言えたんだけどね。
漢字で書けるのもこのプレートのお陰だったし。
人には石どころかプレートもチェーンも見えてないみたいで。
不思議と気味悪さとか恐怖とかはその時から感じなかった。
“アタシにとって、命並みに大切なモノ”
ってのも何と無く脳裏に焼き付いてんだよね。
施設の人や仲間達・神崎のパパママ・璃音や学校関係の人にも見えないらしい。
だから、この石が何なのか自分で何を調べても分からないけど人に聞くコトが出来ないから石の名前も分からない。。。
石かどうかも分かんないしね。
実はプラスチックのおもちゃだったりするかもね。
…なんて、罰当たりかな。
アレ?
えっ??
何???
石がぼんやりと白っぽい光を放っている。
こんなの初めてだよ?
!!!!!?????
急にアタマに激痛が!!
アタマを抱えてしまうくらいの激痛。
・・・・・・・・・・治まった。
石の光も治まってるし。
、、、何だったの?一体。
あの白っぽい光もアタマの激痛も初めてだった。
何らかの石の力?・・・。
石のコト、不気味とか全く違和感を感じたコトないけど、たまにある不安を感じるコトがあるの。
“アタシ、人間なんだろうか”
“日本人なんだろうか”
って。
間違い無く人間なんだろうけどさ。
髪も目も黒いし名前だって漢字だからから日本人なんだろうけど。
何せ大事なコト、何一つ憶えてないモンで…。
名字も家族のコトも住んでた場所のコトも。
でも、神崎家の娘でいるコトに何一つ不満も不安も無いよ。
むしろこんな正体不明なアタシを引き取ってくれて、愛情満タンに育ててくれてるから感謝しか無いし。
だから、あまり深く考えるコトはしないようにしてるけどね。
そろそろベッドに入るか。
辺り一面真っ白。
壁も天井もない、ただホントに辺り一面真っ白な世界にアタシはいた。
足元も真っ白。
前方にうっすら見える赤茶けた建物が、何か懐かしさを思わせる。
コレは、、、夢?
!!!!!!?????
石が光ってる!!
しかも黄色?金色???
どうなっちゃってんの?コレ・・・。
何かを示してんのかなぁ。
さっきの白っぽい光も何かを示してるのかも…。
アタシは建物の方に向かって歩き出した。
ゆっくり、一歩一歩踏みしめて。
何だか良く分からないけどあの赤茶の建物、やっぱり懐かしく思える。
でも、、、思い出せないなぁ。
建物は、歩いても歩いても近付いて来ない。
真っ白な世界も、いつまでも続く。
どこまで歩けば近付けるんだろう。
何で近付かないんだろう。
石はずっと光ったままで。
どのくらい歩いただろう。
周りに何も無いからどのくらい歩いたか分かんないけど、感覚としてはもうかなり歩いた感じがする。
建物は、やっぱり遠いままで。
どこだろう、ココ・・・。
えっ?あれっ???クラクラする。
倒れそう。
目の前にはいつもと同じ風景があった。
自分の部屋だ。
やっぱり夢だったってコトなの?
石は光ってない、いつもと同じ状態に戻ってる。
ワケ分かんないよ!?
壁の時計に目をやると、まだ3時。
もう一眠りしようっと。
その後はぐっすり眠れたモノの、目覚めてからアタシのアタマの中は昨夜の夢の、あの建物のコトでアタマがいっぱいだった。
気を抜くとすぐぼんやり考え込んじゃって、フッと思い出したように我にかえってをただひたすら繰り返して。
どうやっても思い出せないんだけどね。
【妃杏】
ひゃっ!?!?!?
石が一瞬光ったよ?
しかも今呼ばれた???
授業中、先生の説明の真っ最中だってのに、動揺のあまりガツンと勢い良く席を立ち上がっちゃった!!
ざわめく教室内。
『すみません!』
恥ずかしくって、真っ赤な顔で叫んでその場に座り込む。
恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!
石はすっかり元の状態に戻っていた。。。
「神崎さん、大丈夫?」
先生が怪訝そうな顔。
恥ずかしさのあまり顔を上げれずに、手を挙げて返事した。
まさに、“穴があったら入りたい。”状態。
無くても自力で掘ってでも入りたいよ!!!!!!
何なの?昨日から!!!
今まで何も無かったのに!!
やっぱり何かを示してるの?
だとしたら何?
それとも“プラスチック”なんて言った罰?????
だったらごめんなさい!!!冗談です!!!謝ります!!!もう言いませんからぁ!!!
心の中で泣き言を言いながら懇願。
多分そんなんじゃないとは思うけど。
何だかそんな気がするんだな。。。
勘でしか無いけどね。
それにしてもさっきの光の影響で夢のコトはすっかりどこかに消え失せちゃったワ。
あんな恥ずかしい思いそうそう無いからねっ。
今は、“また光ったらどうしよう”って不安と“次は光っても動揺しないぞっ!”て気合が半々。
ペンダントを手のひらに乗せてぼんやり眺める。
「妃杏?」
璃音が机の下からアタシの顔を覗き込んできた。
『ビックリするじゃない!』
突然視界にぬぅっと顔が現れたらそりゃ驚くっちゅ〜の!!
心臓に悪いワ!。
「妃杏、今日ヘンだよ?大丈夫??」
『えっ?』
「授業中いきなり立ち上がるし今だってぼんやり手のひら眺めてるし。何かあった?もしかすると恋?」
眉を下げ気味で心配してくれてたかと思ったら何を言い出すんだよこのコは。
メチャクチャ嬉々とした顔してるし。
まぁ確かに、璃音からすりゃ“手のひらを眺めてる”ようにしか見えないんだよね。
“何かあった?”はあながち間違いじゃないけどね。
『ん〜ん、大丈夫。恋は無い!』
きっぱり。
“恋多きオンナ”璃音は、いつも誰かに恋をしている。
アタシと言えば、ココ最近(高校に入ってから)は全然無い。
“男友達”はそこそこいるんだけど。
何かね、“恋愛感情”に発展しないんだ。
“一緒にいて楽しい”止まりで。
何だろ、“ときめく”コトはあるんだけど。
ちがうよ!?
男性恐怖症じゃないよ!
“カッコいい”って思う人は出てくるよ。
芸能人でも周りの人でも。
でもそこ止まり。
良くは分からないけど、“楽しけりゃそれでイイや”的な考えがあるみたい。
璃音から言わせればアタシは重度のオクテらしいけどね。
自分ではそう思ってないから。
気にしない気にしない!
「じゃね、妃杏!」
部活の妃杏とはいつも教室でバイバイ。
アタシは今日は生徒会。
僭越ながら、副会長なのです。
「神崎ぃ〜」
隣の4組の相野クンが呼びに来た。
2年生役員チーム(アタシと男子2人)で一緒に生徒会室に行くのが通例。
2人で1組の須宮クンを呼んで生徒会室へgo!
【妃杏】
ぬっっっっっ!!!!!
まただ!!
すかさずペンダントに目をやる。
…光ってる。
その場にビタっっっっっと立ち止まり、直立で胸元のペンダントを直視。
「神崎?」
気付いた須宮クンが数メートル先で立ち止まって呼んでくれる。
慌てて2人の元に走る。
『ごめん!』
ひきつり笑いでごまかす。
ふぅぅぅぅぅ.....
大きく溜め息。
心臓、バクバクしてるワ。
ハンパ無く心臓に悪いよ。
今日2回目だよ。
何だっての?一体。
さっきのアタシを呼ぶ声も、授業中に聞こえた声も、何か、“サーッ”てノイズみたいな音の中で聞こえたの。
授業中にしてもさっきの廊下にしてもノイズなんておかしいよね。
授業中はパパくらいの男性の声。
さっきのはママくらいの女性の声。
でも、パパの声でもママの声でも無かった。
聞いたコトの無い声。
さすがに今度ばかりは動揺が治まらないワ。
何時間経ってもずぅ〜っとバクバクしている。
視線は自然とチラチラペンダントに移る。
ん?
んん??
今、不意にある光景が脳裏を過った。
白のレースのカーテンが大きな窓から入る風に揺られている。
壁は薄ピンクでピアノがあって。
これまた懐かしい感じがする。
でもやっぱり思い出せないなぁ。
何だろう。
駅からの1人の帰り道。
みんなと話しながら帰って来てたから“謎の声”のコトなんて忘れて音楽を聴きながら帰宅中。
【妃杏】
ひゃあああああ!!!!!
まただよ!!??
しかもヘッドホンで音楽聴いてるのに!!
今回もノイズ付き!
う゛ぁっっっっっつ!!!!!!
石が光ってる!!!!!
黒?
クロぉぉぉぉぉ?????
クロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ??????????
黒って、勝手だけど良くない気がしてきて胸騒ぎがして、小走り気味に家に急いだ。
今回は前とは違う男性の声だった。
ん!!!!!
んん!!!!!
また脳裏にある光景が浮かんできた。
今度は人の辺り一面の色とりどりの花畑。
空は真っ青で。
やっぱり懐かしく、温かい感じがした。
何なの今日は!!!!!
気が全く休まらないよ。
せっかくみんなとお喋りして気が紛れたってのにまた心臓がバクバクしてるしぃ!!
またぼんやりしてふと我に帰っての繰り返し。
視線はチラチラペンダントに。
「妃杏?」
食事中にもぼんやりしちゃってた。
ママに声を掛けられる。
テーブルの一点を見つめていつまでも口を動かしていた。
口の中には何も入ってないのに。
ダメだ、精神的に良くないワ。
入浴中は入浴中で、バスタブの中でペンダントを見入ってしまってのぼせる寸前まで考え込んじゃうし。
危ない危ない。
でも、こんな時でもこの石はやっぱりアタシの味方だった。
どんな精神状態でも、この石を見ていると次第に気持ちが落ち着いてくるの。
スーッとモヤモヤが消えていくような気がするから。
落ち着いて来たら眠くなって来ちゃった!
今日は1日精神的に忙しかったからな。
今日はもう寝るか。
う゛う゛う゛う゛う゛.....あ゛だま゛がい゛だい゛ぃぃぃぃぃ。
割れそうなくらいの激痛。
見える景色は自分の部屋だ。
3時、、、8分。
い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
ガンガンする。
痛みのせいでうねりのような音も聞こえてくる。
息苦しいし・・・・・
見える景色も歪んで見えてきた。
気が遠くなる・・・・・
痛みが一瞬にして消えた。
目を開けるとそこにあったのは辺り一面真っ白な世界だった。
また?????
コレ、昨夜の夢と同じじゃない?
何なの?
あっっっ!ペンダント!!!
視線を下に向けると石は不思議な色に光っていた。
赤?黄?緑?青?白?紫?ピンク?オレンジ?
代わる代わる、色んな色に光ってる。
何コレ。
でも、あまりのキレイさに見とれちゃうな。
「妃杏様!?」
はぃ?
妃杏“さま”?
誰?それ・・・
アタシ以外に誰か居るの?
、、、、、見渡す限り、居ないよねぇ。
ノイズ無しにクリアに聞こえたと思ったら、“様”って。
アタシじゃないコトは確かだな。
「妃杏様!!」
う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!
驚きすぎて表情が固まっちゃった。
目の前に突如として男性が現れたんだもん!!!!!!!!!!
心臓が焼けるように熱い。
瞬間的に舌痺れるし。
って、誰?
「妃杏様?ですよね?」
爽やかイケメンのこの男性、溢れそうなくらいのとびきりの笑顔で話し掛けてきている。
やっと表情が動かせられるようになったアタシはこの男性に反するかってくらい全力のひきつり顔。
『名前は合ってるけど、アタシ、様呼ばわりされる様なキャラじゃないですけど』
アタシのコトバが耳に入っているのかいないのか、男性はいきなりその場に跪いた。
何?
映画とかでは見たコトあるよ?こーゆーの。
家来が王様の前に現れた時とか、男性が女性にダンスのお相手を申込む時とか。
ソレをなぜアタシに?
「インペリアルゲートから妃杏様をお迎えに上がりました、ワタクシ如月と申します。長い期間お待たせしてしまいまして誠に申し訳ありませんでした」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
んんん???
アタマの中、点々で埋め尽くされてる。
何言ってんの?この人。
あっっっっっ!ちょっと待って?
この男性、良く見るとイケメンなだけじゃなくかなりのルックス。
・・・・・、
はっっっ!!!
もしかして?????
『どこかのお店のホストさん?』
閃いたアタシは何のためらいもなく尋ねた。
“如月”って名前もホストっぽいし。
そしたら
「はぃ???」
って逆にヘン顔されちゃって、しかも
「何ですか?ホストって」
って、時代錯誤極まりない質問をしてきた。
アタシの顔が更に歪む。
ホストを知らないのはさておき、格好がホストっぽくないか。
白のエナメルっぽいツナギみたいな格好。
「憶えておられないのですか?」
悲しそうな顔してる。
「予想されていたとは言え、最悪の展開だ」
何やら1人でブツブツ言ってる。
「その胸元のペンダントが動かぬ証拠です」
『えっっっっっ!!!!!!』
思わず声を張り上げて驚いた。
『ペンダントが見えるの?』
アタシのすっとんきょうな声に如月サンは口を開けてぽかんとしている。
『だって、ペンダントが見えたの、如月サンが初めてだから!』
“コレでもか!”ってくらい、両目を見開いて驚きを表す。
「…そうでしたか。おそらくそのプラチナムストーンがこの惑星のモノでは無いからかも知れませんね」
何トンもの強い衝撃を感じた。
“「この惑星のモノでは無い」”
って。
アタシ、やっぱり人間じゃないの?
・・・・・・・・・・、
あ、、、れぇ?
アタシは如月って人の着ているツナギみたいな服の胸元を見て固まった。
あの刺繍されてるエンブレム、、、
『そのエンブレム』
エンブレムから目を離せないままアタシは言い出す。
すかさず如月サンが切り返してきた。
「思い出されましたか?」
メチャクチャ目を輝かせてる。
思い出したも何も・・・
『全く同じエンブレムの刺繍の入ったワンピース、コドモの頃に着てたから』
今でも部屋のクローゼットにしまってあるよ。
「このエンブレムは王室のエンブレムです」
王室ぅぅぅぅぅ?????
!!!!!!!!!!!!
今またアタマに景色が浮かんだ。
如月サンと同じ服を着た人がたくさん縦一例にずらぁ〜っと並んでいる光景。
呆然としてしまう。
でも…
『王室って?アタシ、日本人じゃないの?髪の毛も目も黒いのに?名前だって』
何やら背中を向けていた如月サンは、あたふたしながらも平静を装い淡々と説明してくれた。
このペンダントの石はプラチナムストーンって言って、“エターナルプラネット(琉冠星)”って惑星に存在する天然石らしい。
琉冠星は今から約100年先に発見される、地球と全く同じ環境の惑星らしい。
アタシはそこの王女らしい。
全部、“らしい”。
『ってコトは、アタシは未来の人間なの?』
理解したようで、理解出来てない。
「はい」
“はい”って、何てコトなくシレッと答えた。
1つ溜め息。
ワケ分かんないよ。
『何で?何か言ってるコトメチャクチャじゃない?』
アタシ、キレ気味。
エンブレムのコトもペンダントのコトもこの2つに関しては信じて良さそうだけど。
「先日、ストーンが光りませんでしたか?」
ドキ-----------ん!!
小さく頷いた後、光った例全て話した。
「その満月の夜に光った際、時空の歪みが出来て、その歪みから妃杏様のストーンのパワーを我々がキャッチしました」
はぁ・・・・・。
「ノイズと共に聞こえた声は、恐らく皇王様と王妃様つまり妃杏様のお父様お母様の想いが時空の歪みを越えてストーンに反応して聞こえたモノでは無いでしょうか。黒と言う色が気にはなりますが、聞こえた声は恐らく妃杏様のお兄様かと」
今の話でフッと何かが降りてきた。
お父様・お母様・お兄様の顔が一瞬の閃光と共に浮かんだ。
と、同時に耳に焼き付いてるあのコトバ---
“困っている人を助けるのがあなたの役目”“この石は命と同じくらいに大事”
の声とあの時聞こえた声がシンクロした。
ちょっと胸が熱くなって涙が出てきちゃう。
お父様、お母様、お兄様。
でも、不思議だな。
今までこの約10年、一度も思い出したコト無かったのに。
きっかけってわかんないな。
「妃杏様は、230年後の未来の琉冠星の王位後継者様であらせられます。」
はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ??????????
目が飛び出そうな程の驚愕の発言だった。
驚きのあまり声が出なかった。
王位後継者って。。。
「そのプラチナムストーンが王位後継者様の証にございます。」
如月サンの目線はアタシのペンダントに向いていた。
アタシもつられてペンダントを見る。
『王位後継者って、アタシオンナなのに!?しかもお兄様がいるのに?』
思いっきり声が裏返った。
「このプラチナムストーンは男女関係無く、誰彼構わず反応するワケではありません」
“この石は命と同じくらいに大事”
って、そう言う意味だったの?
呆然として、ただ立ち尽くしていた。
「本来であればこのような形ではなくちゃんと妃杏様をお迎えに伺うべきなのですが、何かしらの妨害があるようで、やむを得ず妃杏様に身体的苦痛を伴わせてしまうのを覚悟で妃杏様の脳波にイントルードさせて頂きました。申し訳ありませんでした!!」
勢い良く土下座した。
アタシは自分で全身の血がアタマに駆け巡るのが分かった。
あの激痛!!!!!
アタシはたまらず叫んでいた。
『やむを得ずじゃないよ!!!!!!マジ死ぬかと思ったのよ?』
「申し訳ありません!!」
土下座のまま如月サンも叫ぶ。
あの痛み思い出して、心拍数が急上昇してきた。
「コレを着けていて下さい。コレがあれば妨害を防げますので次からは直接妃杏様をお迎えにあがれます。ワタクシので大変恐縮ですが応急処置と言うコトで何卒御容赦下さい。次にお会いする時は妃杏様用のをお持ち致しますので」
そう言って如月サンは自分のしていたブレスレットを外しアタシに着けた。
プラチナ?シルバー?
銀色の鎖っぽいブレスレット。
継ぎ目に緑の石がある。
「そのブレスレットも恐らく普通の方には見えないと思いますのでご安心を。ソレがもし激しく点滅するような事があったら危険を示す証拠ですので、石を強く握り締めてワタクシを心の中でお呼び下さい。ストーンが反応してエネルギーを発してくれるハズです。そのエネルギーをキャッチして来ますから」
はぁ。
唖然としながらブレスレットを見つめていた。
あれ?
部屋に戻ってる。
ブレスレットを見つめていたら部屋に戻ってる。
痛みも何もなく、気がついたら部屋に戻ってる。
何?今の・・・・・。
ブレスレット、、、ある。
ん?
あれ?
アタマが痛くて目が覚めた時って、3時チョイだったよねぇ。
確か8分だったよね。
・・・・・ 時間、ピクリとも経ってませんけどぉぉぉぉぉ!!!!!
何のこっちゃああああああああああい↑↑↑↑↑