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私の冒険追憶記録  作者: ぽんずさん
第一章 旅の始まり
7/10

それぞれの朝

 私の記憶は、およそ12歳の後から抜け落ちている。

 キルト達と旅に出たのが15歳だから、その3年前。

 まあ旅に出た時期は、パーティーの皆から聞いたものなのだけれど。

 初め、あの部屋で目を覚ました時、自分の事を12歳と思っていた訳じゃない。

 抜け落ちた、記憶の空白を感じた。

 5年分の空白。

 すぐ手に届くはずの過去、昨日という存在が、朧げだったあの感覚。

 あれだけは忘れない。

 あれだけは忘れられない。


======================


 ふわぁ、と、あくびをする。

 朝の日差しが、ぼんやりとした頭に染みる。

 何か夢を見た気がする。昔の事だろうか。

 隣を見ると、リーフがいた。ベットの上で寝相よく、だけどすやすや眠りこけている。

 ちょっとした悪戯心が芽生えたけど、まだ寝かせておいてあげよう。

 着替えて顔洗ったら、少し残る眠気を飛ばす為にも、外で朝日を浴びにでも行こう。そう思った。


 ◇  ◇


 朝日を浴びに外に出ると、フィーリュがいた。

 フィーリュの、太陽光を乱反射する髪が、朝日を浴びて煌めいている。

 綺麗な白い髪はまあまあ珍しいので、すぐにフィーリュだと分かる。


「おはよう。相変わらず早いね。」


「おはよう、キルト。相変わらずなんだね。私。」


 僕が声をかけると、微笑んで挨拶を返してくれた。

 『相変わらず』は余計だったかな、とも思ったが、本人が気にしていないようなので、自分も気にしないことにする。


「朝ごはんどうするー?私が何か作る?」


「いや、今日はパンとかでも買ってこよう。何食べたいとかある?」


 そんな事を話していると、カゼットが起きてきたらしい。


「おはよー。」


「おはよー。相変わらずお前ら早いな〜。おじいちゃんおばあちゃん?」


「酷い言い様だなおい」


 軽く突っ込みを入れると、けらけら笑うカゼット。


「そういや、リーフはまだ起きて来ないの?」


「そらなぁ。あいつ、毎日朝寝坊してよぉ。まあ、起こすのは朝食買ってきてからでいいんじゃないか?」


「それもそうだなー。」


 そう軽い返事をして、僕達はこの後の行動を決めていく。


◇  ◇


 朝食を買って戻って来ると、リーフはまだ寝ていた。

 そろそろさすがに起きてもらわねば。


「おーい、朝だよー。起きてー。リーフー。おーい。お〜い。お〜〜い!!!!」


 この人全然起きないのだが。私、結構大きな声で呼んだよね?


「お〜き〜て〜!」


 そう言いながらゆさゆさ揺すると、やっと反応を示した。


「おかしいなぁ…フィーリュがいつもより優しいぞぉ…?起きてあげても良いかもしれない…」


 優しい?私、前はもっと乱暴に起こしてたのかな?


「起きてください。あげるとかじゃなく普通に起きて?」


「仕方ないなあ。では起きてあげよう。」


 すると、リーフ足を思いっきり振り上げ、勢い良く振り下ろし、その反動で飛び起きた。


「くぁぁぁあ〜おはよぉ〜フィーリュ早い〜」


「リーフが遅いだけだと思うけど…もう皆揃ってるよ。着替えて顔洗って朝ごはん食べに行こ。」


「ふぁぁぁああい…」


 あくびをしながら返事をするリーフに、私は呆れるしか無かった。


======================


 宿屋の一階に、テーブルとかがたくさん置いてある場所があったから、そこで朝食をとる事にした。


「朝ごはん食べ終わったらどうするの?」


私の素朴な疑問には、リーフが


「次の目的地に出発する予定だよ。前の旅はずっと南西の方に向かっていたから、今回も同じ様な感じで行こうと思っていたんだけど…そもそも前の旅の出発地点がもっと東北だったからさー。どうする?」


 と、リーフが返してくれた。

 確かに、今の地点から前の旅の目的地までは、一週間もかからずに到着出来る。

 これでは、本来の目的は達成できないだろう。

 

「じゃあ、取り敢えず一番近い冒険ギルドのある街に向かうってのはどうか?リーフが盛大に使っちまったから、路銀も稼がなきゃだし…」


 と、カゼットがリーフの方を軽く睨みながら言う。

 リーフが気まずそうに目を逸らす。


「けっ…結構良い案なんじゃない?私はこれで良いと思うけど…皆はどう思う?」


 話を逸らしたともとれるリーフの声に、私達が賛成の声をあげたため、この話題は一旦終了となった。


======================


 キルトが丁度、私達の次の目的地の「シェクテーラ」へと向かう馬車を捕まえて、護衛を条件に乗せてもらえることになった。

 馬車の持ち主は、最近魔物が多いと聞くからありがたいと言ってくれていたそう。

 ちなみに、シェクテーラへは、大体馬車で3日位。


「そろそろ行くぞー」


「「はーい」」


 もうすでに馬車に乗り込んだ男子組と、ちょっと出遅れている女子組。

 ふわぁ、と、あくびをしながら、私は馬車に乗り込んだ。

「世界回想記」読んでいただきありがとうございました。質問や感想などがあれば、リアクション・コメント頂けると幸いです。


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