町にて(2)
キルトに誘われ街をまわっている昼下がり。
何か屋台で食べたかったが、「パーティーの皆で食べるから」とキルトに言われ、渋々違う所に行くことにした。
「何処行くー?」
「そうだなー。とりあえずあっちにある噴水の所にでも行くか。」
そう言われたので、素直に近くにあったベンチに座る。
「ぶっちゃけ今日はもうお金使いたくないからなー。するって言っても何しよう。」
「本当にぶっちゃけトークだね…そうねぇ。ここで適当に喋ってるってだけでも良いんじゃない?」
「そうだなー。」
そんな感じで、今日の天気とか、この町とか、晩御飯何食べるかとか、そんな他愛もないことを話した。
「なんか話すことなくなってきたねー。」
「自分で言っちゃうんだそれ…」
私が呟いた一言に、突っ込みを入れるキルト。
「ねえ」
「どうした?」
「私って、こういう時、何してた?」
そう、キルトに問いかけた。
過去の私について聞くのは、これが初めてだった。
「こういう時、君は…魔法の鍛錬か、本屋に行くとか、後は町の人と話したりしてた。」
私ってそんなに活発的だったのか。
魔法の鍛錬や本屋はともかく、町の人と話すなんて、想像もしていなかった。
「私ってそんなに活発的だったんだね…それに、町の人話すなんて、そんな社交的だったの?」
「初めは本当に引きこもりがちだったんだけどね。旅をする内にそうなっていったって感じかな。」
やっぱり初めはそんな感じだったのか。
「そろそろ5時だな。もうそろそろ宿屋に戻るか。」
そう言われて気づいたが、太陽が少し傾いてきていた。
キルトに返事をして、後ろを付いて行く。
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「で?それで調子に乗ってそんな高いもの買ったのか?」
「は、はい…そうです…」
宿屋の部屋に戻ると、正座して俯いているリーフと、その目の前で仁王立ちしているカゼットが居た。
「何か言う事は?」
「すいませんでした…」
「めっちゃ詰められてる…」
私がぼそっと呟くと、それに気づいたカゼットが反応する。
「そりゃそうだろ!パーティー全員の路銀なのに…っていうかフィーリュ!お前も値下げ交渉参加してたらしいな?」
なんか飛び火した。私何もしてないのに。
「えー…だって、頼まれたから…何となく店主さんの事ほめたら値下げしてくれて…」
「そ、そうだよ!フィーリュは悪くない!」
リーフが庇ってくれた。まぁ元凶はリーフ自身なのだが。
「あー…そうか…フィーリュが褒めたってんならなぁ…お前ら揃いも揃って…うーーん……まあ、便利そうだし…もう疲れた。良いや。その代わりできるだけ節約しろよー。」
色々ぶつぶつひとりごとを言った後に、諦めた。こんなの日常茶飯事と言わんばかりに。
「よっしゃ許された…!!」
「今なんて言った?」
「な、何でも無いです…」
「さ、そろそろ晩御飯食べに行こうー」
「「「はーい」」」
キルトがそう言ったので、みんな素直に返事をした。
◇ ◇
あの後、パーティー全員で食事をする店を決め、そこに向かっている途中。
暮れかかっている夕陽は、四人の影を色濃く映し出していた。
「なに食べよっかな〜」
フィーリュは、ご機嫌に鼻歌をうたっている。
「呑気なもんだなー。ちなみに今日行く店は、揚げ物が美味いらしいぞ!」
「それは楽しみだ!」
フィーリュもそうだが、久しぶりの外食に、ものすごいノリノリなリーフとカゼット。
「あんまり食べ過ぎないようになー。それと、飲み過ぎもするなよ。」
「わかってるってー」
「もちろんだろ!」
キルトに注意され、全くわかっていなさそうな返事を返す三人。
そんな、やっぱり呑気な会話を交わしつつ、一行は目的地へと足を運ぶ。
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===…:場面変更
◇ ◇:視点変更