町にて
「じゃあ、リーフは薬草やポーション、フィーリュは食料品、カゼットと僕はその他諸々の買い足し。買ったものを宿屋に置いたら、その後は自由時間。夕方には再集合。じゃあ、解散!」
キルトの指示で、私たちはそれぞれの目的地へと向かう。
(えーと…食料品が売ってるお店は…こっち?)
キルトからもらった町の地図を見ながら、目的の店へと向かう。
しばらく歩くと、食べ物の絵が描いてある看板を掛けた、大きなお店が見えてきた。中に入ってみると、野菜や果物、パンや乾麺まで売っている。
(品ぞろえ豊富だなぁ…)
そんな事を思いつつ、買う物を決めていく。
「すいませーん!買いたい物があるんですがー!」
大きな声で店員を呼ぶと、カウンターの奥から、店主らしき人が顔を出した。
「じゃあ、これとこれと、あっ、それもください!後は…あそこにある果物二つ!」
欲しいものを言っていくと、店主が口を出した。
「嬢ちゃん、そんなに買って大丈夫かい?そんなに持てないんじゃ…」
「あ、大丈夫です。私アイテムボックス持ちなので」
「へぇ、そりゃあすごいな!確か…10万人に1人とかじゃ無かったか?アイテムボックス持ってるの。」
私が質問に答えると、店主は驚いて言った。
「らしいですね〜じゃあ、これでお願いします。」
買ったものをアイテムボックスに入れる私を、物珍しそうに見る店主を背に、私は宿屋に向か…おうとしたのだが、
「宿屋って…どっちだっけ?」
道に迷ったようだ。
======================
「一通り買い終わったな。カゼット、宿屋に荷物を置いてきてくれ。僕は、フィーリュの所に向かうから。」
「あーー…そうだな。あいつ、方向音痴だから、どうせ道わかんなくてウロウロしてるだろうし…でもよー、荷物持ち俺に押しつけないでくれや」
「はは、ごめんごめん。じゃ、頼んだぞー」
「はあ。ま、良いか。」
======================
(まぁ、私はアイテムボックス持ちだから、わざわざ宿屋に荷物置きに行く意味も無いんだけど)
そんな事を考えつつ、この後どうするかを考える。
地図があるから、それを見れば良いのかもしれないが、どっちが北で南なのかとか、今自分は何処にいるのかとか、そういうのが分からないのである。
もういっその事、何も考えずに魔道具店でも探してまわろうかと思った。でもよく考えると、欲しい魔道具とかも特に無いし…
そう思っていた矢先、私に声をかける人物が居た。
「フィーリュー。道に迷ってたりしないかー?」
「うひゃうっ!」
ものすごい変な声が出た。
「うひゃうってなんだよ…心外だなぁ…」
「あ、ご、ごめん、キルト…急に話しかけられてびっくりして…」
どうやら私に話しかけたのはキルトの模様。
「いや、まぁ、良いんだけどさー。なんか道に迷ってたりしないかなーと思って来た。合ってた?」
図星だった。この人はテレパシーでも持ってるんだろうか。
「合ってるけど…それで、どうしたの?」
「暇だし一緒に町をまわったりしないかなーと思ってさ。嫌なら良いんだけど」
「いいよ。私も丁度暇してたし」
どうやら町ブラのお誘いだったらしい。
======================
「町をまわるって言っても、まず何処行くの?」
「そうだなぁ…まずはリーフのとこにでも行くか!」
「えっ」
「多分っていうかまた絶対変なもの買おうとしてるだろうし」
「ああ…なるほど…」
「多分…ここの魔法店にいると思う。」
キルトは、地図を指差して言った。
「こんなマイナーそうなとこに?」
「そういうやつだからなー。で、いつも決まって変なもん買ってくる」
「ははは…」
これには流石に苦笑いするしかない。
======================
魔法店につくと、案の定リーフがいて、しかも商品を値切ろうとしている所だった。
「お願いします〜!!!これ以上出せないんですよ!!」
「じゃあ諦めれば良いんじゃ…」
「いや!私は何としてでもこれを買う!」
「またやってら…」
キルトがぼそっと呟くと、それに気づいたリーフが振り返る。
「あっ!!キルト!それとフィーリュ!2人からもお願いして!ほら!」
展開が速くてついていけない。どういう状況なんだよこれ。
「えーと…とりあえず、それってどんな物なの?」
「汚れをきれいに落とす魔法の魔導書。どんなものにも応用可能。」
「珍しくすっげぇ便利な物見つけてんな……値段は?」
「金貨5枚」
「高っ!!!!」
私達の食費約2ヶ月分。
「こんな便利な物なんだから安い方でしよ!ねぇ、店主さん?」
値切るために店主の機嫌をとろうとするリーフ。
「ほら、フィーリュからも何か言って!」
「え、ええ…えーと…店主さん、お若いですね…?」
何を言ったらいいのかわからなくて、意味不明な事を言ってしまった。いやまあ、確かに店主は25歳くらいで、若いなあと思ったのは事実なのだが。
「ははは、そうかい?」
なんか予想に反して結構照れてる?
「ぶっちゃけ俺はもうマスターしててこれがなくてもその魔法は使えるし…嬢ちゃんになら、まあ、金貨3枚と銀貨5枚で売ってやらないこともない。」
「いやっほう!フィーリュないすぅ!」
「まだ買って良いとは言ってないんだが…」
そんなこんなで、私達のパーティーは結構な出費をしたのであった。
======================
「しばらくは節約生活だな…」
今日の出費に苦笑いしているキルト。
「まあ何とかなるんじゃない?」
「フィーリュはいつも変わらず楽観的だなー。」
「そっか。私、変わってないんだね。」
「あ。…うん。そうだな。何も変わってない。」
キルトは少し驚いたような顔をしてから、微笑みながらそう言った。
「ちょっとお腹空いてきたなー。何か食べない?あっ!なんか屋台出てるっぽいよ!」
「食べるのが好きなとこも変わって無いんだな…」
元気に駆けていく私を見て、キルトは失笑しつつ、私を追いかけた。