忘却
目が覚めると、見知らぬ部屋の、ベットの上にいた。
なぜこんな所にいるのか、ここに来るまで何があったのか…何も思い出せない。
キィ…と音がした。音の方を見ると、ドアが開いて、人が入ってきていた。黄色い髪に、太陽のような瞳で、黒いマントを羽織っている。男性のようだ。18か17くらいだろうか。何か大切な事だったような…思い出せない。ふと、その人が口を開いた。
「フィーリュ…?」
フィーリュ…フィーリュとは確か私の名前だ。この人は私を知っているのだろうか?
「フィーリュ…目が覚めたのか…!」
そう言って、その人は駆け寄ってきた。その声を聞きつけてか、他に2人ほどの人が部屋に入ってきた。1人は、深い緑色の髪を三つ編みにしたヘアスタイルに、若草色のワンピースを着ている女性。もう1人は、真っ赤な髪色に、夕焼けのような瞳の男性のようだ。どちらも17才程だろう。
そして、記憶にない人だ。
「フィーリュ!?フィーリュ…!起きたのね!あれから、1カ月も目が覚めなかったのよ…!」
「フィーリュ…!起きたのか…!本当によかった…!」
彼(彼女)らは、駆け寄ってきてそんな事をいう。私は、思った事を、そのままに言った。
「すみません、どなたでしょうか…」
場の空気が凍った。私は駄目な事を聞いてしまったかもしれない。