続 圧倒的強者
ゴーストの消滅を見届けていると、背後から聞いたことのある声と共に拍手が聞こえてくる。振り返るとそこに立っていたのは宮浦だ。四季もミアもおらず宮浦の空間操作のによって僕は既に外界から隔離されている。
「おめでとう、少し見直したよ、でもそうだね。君の力の目覚めは四割くらいと言ったところかな」
宮浦・・・・今の僕なら伝説のゴーストイーターにも勝てるのかな。
「あえて精霊とのリンクを完全に切ってみたけど、その虚ろな目を見るに自力で抑制が効いていないようだね」
相変わらずの余裕だ。でも不思議と立ち向かうのに恐怖は感じない。
宮浦はその場で何度か屈伸してから、こちらに向かって手招きする。
「来なよ、昔話でも交えながら少し手ほどきしてあげよう」
「今度こそ後悔させてやる」
僕は拳を握り地面を蹴って宮浦に向かってスタートを切る。
「精霊なしでそのスピードは大したものだ」
僕は宮浦に高速で拳を数発叩きこむ、空間操作のによって拳は曲がり体勢が少し崩れる。問題はない。僕は体勢を崩したまま強引に蹴りを入れる。最初の数発で上限、この蹴りは入る。
「確かにその手なら、素手であの時と同じ突破法を再現できる」
宮浦は打った蹴りを避けもせずに片手で止める。
「でも、格上相手に同じことを繰り返してどうするんだい?」
カウンターが来ると思った。でも宮浦は反撃しない。代わりにもう一度手招きをした。
「今の君の攻撃をかいくぐるのに能力はいらないね」
僕はさらに速く攻撃の手数を増やす。宮浦は本当に能力を使わずに躱し、いなす。
「少し昔話をしよう百年も前から、三秋家は優秀な血族だった。今でいう二大名家と並ぶほどにね」
僕は攻撃の手を止めずに問う。
「お前はうちの先祖と繋がりでもあるということか?」
宮浦の顔に一瞬影が差す。表情に影が出来ても攻撃はかすりもしない。
「大ありかな、守りたかった大切な人が居てね。百年前の三秋家出身の美しい女性だよ。穂波様にその人の姿を重ねていたのかもしれない」
そこで初めて宮浦は後方に飛んで距離を取った。僕は今の話を聞いて少し冷静になる。宮浦は三秋家の人間と深い繋がりがある。穂波が宮浦の封印を解くことが出来たのもそれが関係しているのか?。
「まあ、色々疑問はあると思うけど、答えるつもりはないよ。それより来なよ少しだけ真面目に相手してあげる」
宮浦の纏う空気が少し変化した。今の僕でも自然と身体が震えるような圧力。次の瞬間宮浦は僕の目の前に瞬間移動したと錯覚させられるほど速く現れ拳を僕の顔面に突き出して当たる寸前で止める。
「格上相手を前にひるむ、それは致命的な隙になる。実戦なら君は既に一回死んでいる」
僕は宮浦に向かって足を跳ね上げて蹴りを放つ。躱すか、いなすその瞬間に次の攻撃に繋げる。そう思っていた。
「君の武器はスピードと攻撃の鋭さだが、蹴りや拳を打つ時に関節を伸ばし切っている時間が僅かだが長い」
宮浦は言葉通りその癖をついて伸ばし切った足の関節を破壊する。鈍い音と共に激痛が走る。片足を破壊されたことで立てなくなる。さらに出来た隙を宮浦は見逃さない。座り込んで下がった頭に蹴りを打つ動作をして即座に足を引く。
「スピードも手足を壊されれば意味がない。これで二回死んだ」
あまりにも強い・・・・動けない僕を宮浦は冷たい目で見下ろす。
「まず、相手の長所や癖を見抜き徹底的に潰すことだ」
宮浦はさらに僕の弱点を告げる。
「君はなぜ自分の攻撃がかすりもしないか疑問に思っているだろう?」
思っている、今の戦闘で僕の攻撃は一度も宮浦を捉えられていない。
「動きの起こりが分かりやすい。君はまるでこれから攻撃しますよと身体で宣言しているようだ。この起こりは極めて僅かな予兆だが格上は常に小さな隙を見逃さない」
宮浦はそこまで言ってから踵を返して、ゲートを出現させる。
「真実を知り、戦いたければもう少し強くなれ、君も三秋家の血族なら高みにいける才能はある。せいぜい磨くことだ」
宮浦はそう言い残してゲートの中に消えていった。