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そら  作者: アオイロウミ
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02 朝のひと時

 お兄ちゃんはとても大きい。

 とは言ってみたものの大抵の人は私よりも随分と大きい。

 いつも見上げてばかりで首が疲れるばかりだ。

 そんな首疲れが取れない私だけど、この時ばかりはお兄ちゃんは私の視線よりも下にいる。

 今日も今日とて広いベッドの中で隅に丸くなっているお兄ちゃんの寝顔を見ながら、もう少しで起こさないとと考える。

 規則正しい呼吸音の中にたまに混じる異音はお兄ちゃんの胸の方から聞こえてくる。

 その異音がする時にお兄ちゃんは苦しそうな顔を浮かべるが、少し経つと何事もなかったかのように振舞うのだ。

 それが私には不安でならなかった。

 お兄ちゃんに「大丈夫」と声をかけても、笑って「大丈夫だよ」と返されるばかりで何もしてあげられていない。

 私が小さいのが悪いのだろうか。それとも、私が妹だからお兄ちゃんは弱音を吐けないのだろうか。

 早く大きくならないかな。

 そうこうしているうちに耳障りな音が私の鼓膜を叩く。

 これが嫌だからお兄ちゃんには早く起きてもらおうとしていたのに。

 「おはよう、そら」お兄ちゃんが眠たげな声のままに私の名前を呼ぶ。

 私も「おはよう」と返すとお兄ちゃんは両手を上に伸びをした。

 私も真似る。

 身支度もそこそこにお兄ちゃんはランドセルを背負う。

 まだ新しいランドセルをお兄ちゃんは大切そうに扱っているから、私は一度も触れようとはしたことがない。

 だって、もし私の長い爪で傷でも付けてしまったのならお兄ちゃんに嫌われてしまうかもしれない。

 そう考えるだけで怖いのだ。

 私はこのままお兄ちゃんに怒られることなく一緒に過ごしていきたい。

 それには私なりに気を付けないといけないことが沢山だ。

 それでも大変だなんて思わないのは、お兄ちゃんの優しさのおかげだ。

 恥ずかしながらお兄ちゃんのベッドの上でお洩らしをした日にはさすがに怒られるだろうと思っていたのだけど、笑われただけで済んだ。

 まぁ、笑うのもどうかとは思うけど、嫌われるよりは幾分もましだろうとは思う。

 でも、恥ずかしかた。それに笑わないでほしかった。

 「それじゃぁ行ってきます」とお兄ちゃんは玄関で振り向きそう言った。

 私は事前に玄関脇にある収納の上に腰かけていた。

 私の頭を撫でながら「いってくるね、そら」と笑うお兄ちゃんに「気を付けてね」と返す。

 私はこの玄関を潜ったことはない。

 怖いから。

 いつかはお兄ちゃんと一緒に外に出たいとは思うけれど、今はこうしてお兄ちゃんを送るだけで十分だ。

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