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01 兄妹になった日
私の記憶は、思い出はお兄ちゃんと出会ったその時からしか覚えていない。
私の記憶は、思い出はお兄ちゃんと出会ったその時からしか覚えていない。
はじめてお兄ちゃんの顔を見た時、お兄ちゃんは今にも泣いてしまいそうな顔をしながら、何度も私の顔を見ては視線をどこかへと外していた。
しばらくそうしているお兄ちゃんに私が声を掛けた。
寒いうえにその日は雨で全身が濡れてしまっていて、出した声は振るえていたけれど、お兄ちゃんは私の声を聞いた瞬間に何かを決意したように「少し待っててください」と私ではない誰かにそう声をかけてどこかへといってしまった。
お兄ちゃんは誰かと戻って来た。
いくらかの会話の後、私はお兄ちゃんの腕の中に納まった。
日の匂いが私の鼻をくすぐる。
お兄ちゃんの高い体温に包まれると私はうとうとしはじめ気が付いたら眠りに落ちていた。
いつぶりの熟睡かはやはり覚えていないけど、もしかしたら安心して眠ったことははじめてだったのかもしれない。
こうして私はお兄ちゃんと出会ったのだ。