表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/54

ダークエルフの里に到着

 四時間程寝たところで、気配が五十程近付いてきていることに気づいた。

 警戒心はあるが、敵意は感じない。

 どうやら迎えが来たらしい。

 部屋を出ると、ちょうどイクサも隣の部屋から出てきた。


「気付いたか?」

「はい」

「ダークエルフの迎えだろう」


 朝に迎えにこいって言ったが、夜明けと同時に来るか? いや、時間指定しなかった俺の落ち度か。


「朝飯を済ませてから出発する。悪いが少し待ってもらっていてくれ」

「かしこまりました。そのように伝えます」


 イクサが家から出ていく。

 サエリアも起きて来たが、アイナはまだ寝ているようだ。

 とりあえず、朝飯はトースト、サラダ、果物、サエリア以外はベーコンエッグを追加で用意する。

 トーストは既に焼いてあるものが何枚も次元収納に入れてあるだけなので、あとはバターなりジャムなりを塗るだけで食べれる。

 サエリアにできた料理を食卓に運んでもらったところで、


「ご主人様、おはようございます」


 アイナが起きてきた。


「凄い寝癖だな」

「アイナは枕が変わると眠れなくて」

「昨日間違えて俺の部屋に入ってきて爆睡してただろ。ほら、朝飯できてるから食べていいぞ」

「ご主人様、餡子はないですか? アイナ、小倉トーストにしたいです」

「お前に全部食われたよ。蜂蜜があるからハニートーストにして食べてろ」


 俺は蜂蜜の瓶と匙を取り出してアイナに渡すと、彼女は見ているだけで口が甘くなるほどの蜂蜜をトーストにかけて食べ始める。

 イクサが戻ってきた。


「サエリアはナッツペーストとベリージャム、どっちがいい?」

「ありがとうございます。では、ナッツペーストをいただきます」

「イクサはトーストに何塗る? バター、蜂蜜、ベリージャム、ナッツペーストがあるが」

「俺はバターでお願いします」


 オッケー、じゃあ俺とイクサは普通のバタートーストで。

 今度、サエリア用にマーガリン作りに挑戦してみようかな?


「本当に陛下の次元収納は便利ですね。家もそうですが、野営中にこのような温かい食事がすぐに食べられるとは」

「おいおい、そこは俺のこだわりと料理の腕を褒めてくれよ」

「申し訳ありません」

「冗談だ。パンを焼いたのはキュロスだしな。外に遣いを待たせているし

手早く食べるか」

「ご主人様! トーストもう一枚おかわり!」

「お前は……」

 マイペースなアイナに嘆息を漏らしつつ、次元収納から取り出した焼きたてのトーストを彼女の皿の上に置いた。


 食事を終えて、家を出ると、ダークエルフの戦士30名が直立して待っていた。

 その辺で寛いでくれていてよかったのに。

「出迎えご苦労。ダークエルフの里に向かう前に家を収納するから少し待ってくれ」


 俺はそう言うと、次元収納の穴を作り、自宅を押して無理やり穴の中に入れる。

 最後に残った穴をしっかりと埋めて終わりだ。

 ダークエルフの戦士たちの目が点になっている。

 大丈夫だ、俺は非常識な力は持っているが価値観は常識人だ。驚く気持ちはわかる。仮に日本の中でこんな光景を見せられたら自分の目を疑うからな。


「ごほん。皆さん、陛下の前ですよ。その顔はやめてください」

「はっ!? し、失礼しました」


 正気に戻ったダークエルフの戦士が謝罪をしたので、俺はそれを受け入れた。


「乗り物を用意しています。陛下が乗るには少し不格好ですが、里で一番の馬車を用意しました」


 普通の馬車と違い、戦車(チャリオット)みたいだな。

 貴族や王族が乗るには確かに武骨過ぎるが、外の景色を見ながら移動するにはこっちの方がいいか。

 俺とアイナが乗車する。

 見た目は悪いが、座り心地は悪くないな。

 サエリアとイクサは乗らない。

 サエリアの立場は俺を歓迎するダークエルフ側、イクサは護衛だからな。

 つまりは対外モードというわけだ。


「これは楽ですね、ご主人様」

「そうだな」


 アイナは喜んでいるが、俺は普通に歩いた方が早くダークエルフの里に着きそうだと思った。しかし言わないでおこう。


「それで、昨日のレスハイム王国の兵は? 尋問はもう行ったんだろ?」

「はっ。どうやらあのレスハイム王国の兵は侵攻ルートを確認するための偵察部隊だったみたいです。どうやら――」

「モスコラ魔王国とレスハイム王国が手を組んだんだな」


 レスハイム王国の軍がこの森に侵攻するにはモスコラ魔王国を通る他はない。

 少数の偵察部隊ならまだしも、大軍がこっそり素通りするなんてできるはずがない。


「それで、どのくらいの規模で手を組んでいるんだ?」


 素通りさせるだけなのか、軍事提携しているのかでも脅威度が異なる。

 だが、そのあたりはまだわからないらしい。

 下っ端の兵はそのあたりを一切知らない。

 指揮官の男の傷が思いのほか深く、まだ目を覚まさないらしい。

 意識が戻り次第尋問するとのことだ。


「間もなく我らの里です」

「あれがダークエルフの里――」


 大森林の中心にあるダークエルフの里と聞いていたから、森の中のツリーハウスみたいな家があると思っていたのだが――


 森の中心部は何故か開けた土地になっていて、遠くには城壁も見えた。

 普通の町と違う点は、町の周りに畑が一切ないことか?


「あれがダークエルフの里……なのか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ