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森の国の残念姫がいく  作者: あおみどり
カンファンス家の人々
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3話 1週間前の出来事

 

 森の国ホワイトディア国の白椿、カトレア・カンファンス。


 透き通るような白い肌と、印象的な大きな碧色の瞳。

 聡明で落ち着いた雰囲気と、常に微笑みを浮かべる様は、12歳にして完全なる美しさと讃えられている。


 デビューは数年先、さらに社交の場に積極的には出てこないカンファンス家だ。

 何とかひと目でも、あわよくば我がものにと貴族の独身男性たちはシダーにすり寄ってくる。

 王城へ行くとそういった男達に何度も仕事を止められ、うんざりして帰ってくるのが常である。


 見え透いた誘いは断っても支障はない。

 しかしいくらシダーでも断れない事がある。

 家族の誕生日に行われる、国王と王妃への披露目だ。

 代々王室とカンファンス家は繋がりが深く、子供の誕生と成長を祝う習わしは延々と続けられている。


 今年もしぶしぶ王城へ向かい、数多の視線からカトレアを守り、謁見の間までたどり着いたまではシダーの思惑通りだった。


 形式的な挨拶を終え、何かと話したがる国王を抑えよう。

 その後はさっさと屋敷へ戻り、シェフ達が腕によりをかけたご馳走が並ぶダイニングルームでカトレアを祝うのだーーー




 ◇◇◇




「カンファンス侯爵、私アルナイト・ザール・リア・ホワイトディアとカトレア嬢との結婚をお許しいただきたい」


 王太子アルナイトはシダーと妻セリビアに頭を垂れ、幾分緊張を滲ませた低い声で話し出す。

 そして両親の隣で目を大きく見開き、驚きの表情を浮かべるカトレアの手を取る。

 そのまま跪き、熱い眼差しを向けながら語り出す。


「私の妃はカトレアしかいないと幼き頃よりずっと思ってきた。 どうかこれからは私の一番近くにいてくれないだろうか」


「な!?」

「あら」

「ほぅ」

「まぁまぁ~」


 何とも間抜けな反応の大人達だが、あまりにも突然のことで驚愕しているのはシダーだけである。

 慌てて妻に目を向けると、ふふふと微笑みを浮かべている。


「セリビア、知っていたのか!?」

「あなたが焦る姿を見せるなんて珍しいわね、ふふ」


 セリビアは普段どおり、ゆっくりと返す。


「いえ、今日のことは全く。 ただ幼い頃からアルナイト様がカトレアを特別気に入っているのはあなたもご存じだったでしょう?」


「国王!!」

「いや、今日の事に関しては私は知らん」

「今日の事に関しては……?」

「それはお前、ガードが固くて屋敷から出てこない引きこもりの父親を看破するのは大変だろうて」

「なっ! もしや!?」


 さらに慌てるシダーに、王妃サラベスは意外そうに言う。


「まぁシダー、何をそんなに慌てているの? こうなる事は分かっていたでしょう?」

「しかし王妃様……!」

「ふたりをご覧になって。シダー」


 3人が微笑みながら見つめる先へ目を向けたシダーは初めて気が付くのだ。

 カトレアの赤く染まった頬と潤む大きな瞳。


 なんて事だ……。


 呆然と佇むシダーに、幼なじみでもある国王アルマクが近付き背中を叩く。


「やっと家族になるな、私達も」

「……」

「両家の長年の願いがやっと叶うのだ、喜ばしい事よ」

「ぐっ……」

「予想より早かったのかもしれないがな。頼むぞ、義父上どの!」




 ◇◇◇




 カンファンス家の長兄ホーリーとは同じ歳。

 妹同士も同じ年に産まれ、幼い頃は4人一緒に遊んだものだ。

 小さなカトレアは、会って衝撃を受けるほどの可愛らしさだった。

 大きな眼にさらさらの髪、ぷにぷにの頬と私に向けられた満面の笑顔。

 私の初恋、あれはもうひとめ惚れだ。


 アルナイトは窓際に飾られた美しい花束から、一輪の椿を抜き出し愛しい人を想う。


 歳を重ね、立場上さまざまな令嬢と話す機会が増えた。

 カトレアとは会える機会が少なく、ホーリーから様子を伺うのが精一杯。

 どうやら茶会や小規模の催しにもあまり参加していないらしい。

 その反面、多方面の勉学に励んでいると聞く。

 それを知ってからというもの、私もカトレアに見合うよう努力を続けなくては、と強く誓ったものだ。



 会えなくともカトレアほど想える人はいない。 

 否、かえって想いは増すというもの。

 既に想う人がいて、相手は侯爵家。

 しかもカンファンス家だ、申し分ない。

 これは運命だろう。

 しかしどう切り出すべきだろうか……。




「カトレアは今年12歳か。もうすぐお前が通う学園に入学するな」

「はい、父上」

「シダーの目が届かぬ学園では、カトレアも大変だろう。いろいろと助けてあげなさい」


 この先どうするべきか思案していた時、珍しくアルナイトの私室へ訪れた父が話しかけてきた。

 国王にとってカンファンス家は家族のようなもの。

 王族と侯爵家とはいえ、産まれる前から知っているようなものである。


 退室する父の後ろ姿を見つめるアルナイトが考えるのは、これから始まる学園生活。

 一緒に過ごせるのは楽しみだが、近くにシダーがいないのだ。

 これ幸いとカトレアを狙う者も多いだろう。

 呑気に社交デビューなんて待ってはいられない。

 他の男の目に触れるより先に、なんとしても自分のものにしなければ。

 そうだ、もうすぐカトレアの誕生日。

 そこで私の想いを伝えるのだ!!


 一輪挿しに椿を飾り、水差しから水を注ぐ。

 まだ蕾のこの花が咲く頃、きっと願いが叶うはずだ。

 この日から、祈るように蕾を指先で優しく撫でるのがアルナイトの癖となるった。



 こうして国王の思惑通りに話は進むのだか、シダーが知るのは数日後のこと。









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