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森の国の残念姫がいく  作者: あおみどり
森へ行こう
20/24

19話 誕生日を祝う

 

 大きなダイニングテーブルの上にはララの好物が並ぶ。


 大皿には海老と貝のハーブバターグリル、スパイスを効かせたラムの蒸し焼き、大きな仔牛肉のホワイトソースがけ、野菜たっぷりで色鮮やかなスープ、各種ポテトのフライやフルーツサラダ。

 チーズやナッツなど小皿料理の数々に、ふかふかのパンやパリッとしたクラッカー、パンケーキやハーブピラフ。


 見るからに美味しそうな品々はスラン達料理人の力作だ。

 部屋中に広がる食欲をそそる魅力的な香り……いつもの席に座る面々は皆、大きな笑顔を浮かべる。



「ララちゃん、お誕生日おめでとう!」 

「もう12歳か~大きくなってまた可愛らしくなったなぁ」

「ありがとうございます! アルマクおじさま、サラベスおばさま」

「素晴らしい料理を目の前にして待ちきれないわ! あの子達が来る前に乾杯しちゃいましょうよ」

「そうだそうだ、息子達は放っておこう!」

「ふふふ、おふたりとも子供みたいですねぇ。 始めましょうか、旦那様?」


 友人夫妻とセリビアの言葉に、シダーがワイングラスを軽く持ち、立ち上がる。


 森の国ではお酒を好む者が多い。

 仕事や勉学を終えた後、愛する家族や気の合う仲間と美味しい食事ととびきりのお酒1杯をいただく。

これが森の国で暮らす者の1日の締めくくりであり、生きる喜びでもある。

 その為古くから酒造りも盛んで、各地で競い合うように特徴的な酒を造り出している。


皆のグラスになみなみと注がれているのは西の町のワインだ。

この町のワインは森の国でも名産と誉れ高く、晩餐会や祝い事によく用いられる。

 

 お酒にそれほど強くない者や成人前の子供には、ワインとフレッシュジュースなどを合わせたデュアル酒だ。

 ララの目の前には春のベリーで作ったジュースと赤ワインのデュアル酒、隣には白ワインに春のベリージャムをたっぷり入れた甘い白デュアル酒が用意されている。

 ララは赤デュアル酒のグラスを手に立ち上がる。


 すると入り口から賑やかな声が聞こえてくる。

 カトレアとアルナイトが到着したようだ。


「なぁに、みんな。 僕達が来る前に始めるつもり?」

「遅い遅いっ! お前が時間通りに来ないのが悪いのだ」

「父上、仕事を押し付けておいてそれは無いですよー」 

「可愛い私のララ! お誕生日おめでとう。 そのドレス、とても似合っているわ」

「お姉様! このドレス、サイズもぴったりです。 素敵なプレゼントありがとう!」

「あ〜本当だ。 ララちゃん可愛いね! ふたりで選んだ甲斐があったなぁ、カトレアの次に可愛い」

「今日もブレないな、アルナイト」


 ふたりの後ろからホーリーの咳払いと冷静な声が追いかける。

 これで全員が揃ったようだ。

 控えていた給仕達が用意された席にそれぞれを誘導し、グラスに好みのワインを注ぐ。


「ララ、12歳おめでとう。 健康で元気に育ってくれて嬉しいよ。 これからの1年もたくさん笑い顔を見せておくれ」

「おめでとう、ララ。 ララの未来が明るく光り輝いているわ。 ふふ、これからの1年も楽しみね」

「お父様お母様、ありがとうございます。 皆様も来てくれてありがとうございます! 」


 ララの大きな笑顔を合図に、皆がグラスを合わせ乾杯だ。

 美味しい料理と楽しい会話で、カンファンス家のダイニングルームは笑い声が止まる気配はない。



 ◇◇◇



「ララちゃん、学園に行かないって聞いたけど、後悔はない?」


 誕生日の晩餐が終わり離れのサロンへ移動すると、既にローアンとプラネラがお茶の準備をしている。

 茶葉を選び、ゆっくりとティーカップを温めるふたりの様子はいつもと変わらず、この場の和やかな雰囲気に相応しい。


「はい、サラベスおばさま。 お勉強はここで先生から教えてもらうの。 ララは他にもたくさんお勉強したい事があるので、お父様やお母様に相談して学園には行かないと決めたの」

「そう。 ララちゃんは何をお勉強したいの?」

「えーと、植物の育て方や使い方、美味しい料理の作り方。 あとお兄様みたいに森に詳しくなりたいし、お姉様みたいに素敵になりたい」

「あら、ララ。 淑女のお勉強をする気になったのね?」 

「うん、頑張るけど出来るかなぁ」

「ララちゃんはそのままでも充分可愛いけどなぁ」

「そうね、アルナイトの言う通り。 でもお勉強すると、自信が持ててもっと素敵な女性になれるわ」

「お姉様、ララね、あとは国中の町へ行ってみたいし、他の国にも行ってみたいの!」

「まぁ〜楽しそう! まずはどこへ行きましょうか」

「えーとねぇ……」



 ララが楽しそうに話す様子を、シダーは微動だにせずに見つめる。

 顔には笑顔を貼り付けているが、ワイングラスを持つ手は無駄に力が入っているのが分かる。


「その笑い顔は怖いぞ、おい」

「ふん、何とでも言え」

「旦那様、もうすぐケーキが運ばれて来ますわ。 ララを怖がらせないでくださいねぇ」



 子供達は毛並が豊かなふかふかのラグに座り、リラックスしている。

 そこに加わるサラベスも楽しそうだ。

 ラグに合わせ、くの字型に置かれたソファーに座る大人達は子供達を見守りながらお茶を飲む。

 ローアンが淹れたお茶は、甘いケーキに合わせた渋味が少なくコク深いものだ。


 これから運ばれてくる甘いケーキは皆を幸せにする。

 そしてララの笑顔も同じく、周りを幸せにする力がある。

 ここにいる皆は、その意味を知っている。







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