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森の国の残念姫がいく  作者: あおみどり
森へ行こう
15/24

14話 白の花畑

 

 わぁ~!

 森の中にこんな素敵な場所があるんだ。


 ララは大きくのび〜をして、ふかふかな絨毯のような緑草に寝そべる。

 お日様の光で、背中の緑草はぽかぽかと温かい。

 目に入るのは淡青色。

 絵の具で描いたようにすっきりと明るい春の空だ。

 そこに白い雲がいくつか浮かんでいる。


 あの雲、さっき食べたパンケーキみたい。

 丸くてふわふわして美味しそうだなぁ。


 ララはみんなで食べた朝食を思い出す。


 お父様はベーコンを挟んで、サンドイッチみたいにがぶって食べてた。

 お母様は春のベリーをたっぷり付けておかわりしていたし、お兄様はお昼の分も欲しいっていくつか紙袋に入れてた!

 喜んでもらえて嬉しいなぁ。

 また作ろう。


 つい笑いがこみ上げる。


 あ、そうだ。

 ここまで来るのにたくさん歩いたよ。

 それにちょっぴり緊張しちゃった!


 急に喉が乾いている事に気付き、脇に置いていた籠を探す。

 起き上がり、飲み物が入ったボトルを取ろうと手を伸ばす。


 そうそう!

 飲む前には手を洗わなくちゃ。

 お外でもお行儀よくしましょう。


 キョロキョロと周りを見渡す。

 ついさっき見た水溜まりを探すと、遠くにある木々の手前にキラキラ輝く場所を見つける。


 ちょっと遠いかな?

 でもあそこへ行ってみよう!



 勢いよく立ち上がり、ワンピースに付いた草と埃をパンパンと手で払う。

 籠を持ち、駆けるように歩く。

 ふかふかの緑草は、ララの足跡が付いてもすぐに元通りに戻る。

 面白くて何度もジャンプをして確かめる。

 くるくるっと回ってもふかふかは元通り。


 すごく楽しい!!



 たまにジャンプ、たまにくるくる〜としなから駆けると、急に景色が変わる。

 目の前には真っ白い小さな花々。

 あたり一面に広がって、水辺の手前まで続いている。


 四方に広がるツヤツヤの葉から顔を出す白い花。

 しゃがんで見てみると、4つある花びらはぷっくら丸くて可愛らしい。

 つんっと指で触ってみる。

 少し厚みのある花びらは優しい甘い香りがする。


 この香り、お姉様はきっと好きだと思う!

 なんて名前なんだろう〜帰ったら調べなくちゃ。

 えへへ、はじめまして。


 ララは鼻いっぱいに甘い香りを吸い込み、吐き出す。

 何度も吸い込み、吐き出すを繰り返し大きくのび〜をする。


 いい香りをたくさんありがとう!

 あのね、ララのおうちに来てくれる?


 ララはペコリとお辞儀をした後、花畑の中から姿勢良く咲くひとつの白い花を見つける。

 ほんの少し、ゆらゆらと揺れている。

 近寄り下の土を触ると暖かく柔らかい。


 うん、大丈夫そう。


 ララはにっこり頷き、土を除けようと少しずつ掻くとすぐに細い根が出てくる。

 あまり長くない根を、優しく傷つけないよう土を払い持ち上げる。

 何度か繰り返し、持って来た麻袋に入れる。 


 屋敷まで我慢してね。


 籠に入れた麻袋を優しく撫でたララは満足して立ち上がる。

 手が土で真っ黒なので、ワンピースに付いた汚れは落とせない。

 でも気にしない!


 お邪魔しました。

 おうちでも仲良くするからね。


 白い花畑に丁寧にお辞儀をする。



 さあ、行こう!


 水辺へ向かうために一歩踏み出す。

 足首と同じ高さある花を踏まない様に、ララはそそっとつま先立てて歩く。

 花を見ながらゆっくりと。

 注意深く。


 花に集中して歩いていると、顔の近くにパタパタと近寄る黄色いものが目に入る。

 あまりに下ばかりを見ていたので、突然の事にびっくりして顔を上げる。


 あっ、蝶々!


 ララの回りには蝶がひらひらと舞っている。

 手を伸ばすと触れそうだ。

 こんにちは、と声に出すと、蝶は答えるようにララの頭上を舞う。

 目の前で何度かひらひらと舞うと、先導するように水辺へと向かう。

 黄色、オレンジ、ピンクの小さな蝶たちはララの歩みに合わせるよう近付き、また先を行く。



◇◇◇



 どれくらい歩いただろう。


 気付くと鮮やかな水が目の前にある。

 奥は木々が囲み、ララがいる水辺は少しひんやりしている。


 何か音がする。

 音のする方を見ると、手を伸ばすと届くくらいの近さだと分かる。

 水の中からぽこぽこ泡が立ち、そこからさざ波が広がっている。



 確か、あそこの下から水が湧き出ているんだよね。


 ララは数日前に読んだ本を思い出す。


 屋敷の図書室。

 いつもの棚は全部読んでしまったから、その奥を初めて見てみたの。

 日が当たらないから少し暗くて、空気がぴんとしていた。

 大きい棚は5段もあって、ララが背伸びして手が届くのは3段目まで。

 その3段目にある1冊の薄い本。

 目についたその本に手を伸ばしたけれど、びっしり並べられた中から抜き出す事が出来なかった。

 でもどうしてもどうしても気になって、こっそり棚に登って何とか取り出したの。

 お行儀悪いところ、誰にも見られなくて良かった!



 色褪せた薄い本には誰かの日記で、紙の端までびっしり走り書きで埋められていた。

 古くてところどころ掠れていて、昔の言葉を読むのは少し苦労したのだけど。



 諦めずに読んだ甲斐があったよ。


 ララは呟く。

 目の前の光景は、あの本に書いてあったそっくりそのまま。

 すぅ〜とひんやりした空気を吸い込み、見つめる先はララの瞳と同じ色。


 ここはきっと、聖なる森の『翡翠の泉』











お読みいただきありがとうございます。


面白い、続きを読みたい、と思った方はぜひ!

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