14話 白の花畑
わぁ~!
森の中にこんな素敵な場所があるんだ。
ララは大きくのび〜をして、ふかふかな絨毯のような緑草に寝そべる。
お日様の光で、背中の緑草はぽかぽかと温かい。
目に入るのは淡青色。
絵の具で描いたようにすっきりと明るい春の空だ。
そこに白い雲がいくつか浮かんでいる。
あの雲、さっき食べたパンケーキみたい。
丸くてふわふわして美味しそうだなぁ。
ララはみんなで食べた朝食を思い出す。
お父様はベーコンを挟んで、サンドイッチみたいにがぶって食べてた。
お母様は春のベリーをたっぷり付けておかわりしていたし、お兄様はお昼の分も欲しいっていくつか紙袋に入れてた!
喜んでもらえて嬉しいなぁ。
また作ろう。
つい笑いがこみ上げる。
あ、そうだ。
ここまで来るのにたくさん歩いたよ。
それにちょっぴり緊張しちゃった!
急に喉が乾いている事に気付き、脇に置いていた籠を探す。
起き上がり、飲み物が入ったボトルを取ろうと手を伸ばす。
そうそう!
飲む前には手を洗わなくちゃ。
お外でもお行儀よくしましょう。
キョロキョロと周りを見渡す。
ついさっき見た水溜まりを探すと、遠くにある木々の手前にキラキラ輝く場所を見つける。
ちょっと遠いかな?
でもあそこへ行ってみよう!
勢いよく立ち上がり、ワンピースに付いた草と埃をパンパンと手で払う。
籠を持ち、駆けるように歩く。
ふかふかの緑草は、ララの足跡が付いてもすぐに元通りに戻る。
面白くて何度もジャンプをして確かめる。
くるくるっと回ってもふかふかは元通り。
すごく楽しい!!
たまにジャンプ、たまにくるくる〜としなから駆けると、急に景色が変わる。
目の前には真っ白い小さな花々。
あたり一面に広がって、水辺の手前まで続いている。
四方に広がるツヤツヤの葉から顔を出す白い花。
しゃがんで見てみると、4つある花びらはぷっくら丸くて可愛らしい。
つんっと指で触ってみる。
少し厚みのある花びらは優しい甘い香りがする。
この香り、お姉様はきっと好きだと思う!
なんて名前なんだろう〜帰ったら調べなくちゃ。
えへへ、はじめまして。
ララは鼻いっぱいに甘い香りを吸い込み、吐き出す。
何度も吸い込み、吐き出すを繰り返し大きくのび〜をする。
いい香りをたくさんありがとう!
あのね、ララのおうちに来てくれる?
ララはペコリとお辞儀をした後、花畑の中から姿勢良く咲くひとつの白い花を見つける。
ほんの少し、ゆらゆらと揺れている。
近寄り下の土を触ると暖かく柔らかい。
うん、大丈夫そう。
ララはにっこり頷き、土を除けようと少しずつ掻くとすぐに細い根が出てくる。
あまり長くない根を、優しく傷つけないよう土を払い持ち上げる。
何度か繰り返し、持って来た麻袋に入れる。
屋敷まで我慢してね。
籠に入れた麻袋を優しく撫でたララは満足して立ち上がる。
手が土で真っ黒なので、ワンピースに付いた汚れは落とせない。
でも気にしない!
お邪魔しました。
おうちでも仲良くするからね。
白い花畑に丁寧にお辞儀をする。
さあ、行こう!
水辺へ向かうために一歩踏み出す。
足首と同じ高さある花を踏まない様に、ララはそそっとつま先立てて歩く。
花を見ながらゆっくりと。
注意深く。
花に集中して歩いていると、顔の近くにパタパタと近寄る黄色いものが目に入る。
あまりに下ばかりを見ていたので、突然の事にびっくりして顔を上げる。
あっ、蝶々!
ララの回りには蝶がひらひらと舞っている。
手を伸ばすと触れそうだ。
こんにちは、と声に出すと、蝶は答えるようにララの頭上を舞う。
目の前で何度かひらひらと舞うと、先導するように水辺へと向かう。
黄色、オレンジ、ピンクの小さな蝶たちはララの歩みに合わせるよう近付き、また先を行く。
◇◇◇
どれくらい歩いただろう。
気付くと鮮やかな水が目の前にある。
奥は木々が囲み、ララがいる水辺は少しひんやりしている。
何か音がする。
音のする方を見ると、手を伸ばすと届くくらいの近さだと分かる。
水の中からぽこぽこ泡が立ち、そこからさざ波が広がっている。
確か、あそこの下から水が湧き出ているんだよね。
ララは数日前に読んだ本を思い出す。
屋敷の図書室。
いつもの棚は全部読んでしまったから、その奥を初めて見てみたの。
日が当たらないから少し暗くて、空気がぴんとしていた。
大きい棚は5段もあって、ララが背伸びして手が届くのは3段目まで。
その3段目にある1冊の薄い本。
目についたその本に手を伸ばしたけれど、びっしり並べられた中から抜き出す事が出来なかった。
でもどうしてもどうしても気になって、こっそり棚に登って何とか取り出したの。
お行儀悪いところ、誰にも見られなくて良かった!
色褪せた薄い本には誰かの日記で、紙の端までびっしり走り書きで埋められていた。
古くてところどころ掠れていて、昔の言葉を読むのは少し苦労したのだけど。
諦めずに読んだ甲斐があったよ。
ララは呟く。
目の前の光景は、あの本に書いてあったそっくりそのまま。
すぅ〜とひんやりした空気を吸い込み、見つめる先はララの瞳と同じ色。
ここはきっと、聖なる森の『翡翠の泉』
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