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首無巨神デュラハリオン  作者: サムライドラゴン
1/1

強靭! デュラハリオン登場


 世界は十度目の危機に(ひん)していた。


 大量の鉄の巨人たちが街を襲う。

 人々は逃げ惑い、街中には爆音が響いている。

 建物は崩壊し、煙が上がる。


 その光景はまさに「世界の終わり」のようだった。



 鉄の巨人たちは手にしている銃で、建物や道を破壊し続ける。

 火炎で人々を焼き殺す。

 巨大な足で自然を破壊する。


 罪なき命が一つ、また一つ散っていく。


 そしてまた一つ・・・。




 しかし、次に散ったのは巨人の方だった。

 鉄の巨人の内一体が爆発し、炎が上がる。


 一体何事が起きたのだろうか。



 ・・・答えは簡単だった。

 爆発した巨人の近くには、二倍以上大きい別の巨人がいた。


 その巨人は全身が黒く、体は西洋の鎧のようだった。

 しかし最も特徴的なのは、"頭が無い"ということだ。



 首無しの巨人は、炎を上げている巨人だったモノに背を向けた。

 向いた方向には数多(あまた)の巨人たちが首無しの巨人を狙っている。


 大量の巨人は一斉に首無しの巨人を目標として全速力で近付いてきた。

 一人の巨人が殴りかかったが、首無しの巨人は片腕で受け止めた。

 そしてもう片方の腕で殴り返した。

 殴られた巨人は頭部が(へこ)み、後方へ吹っ飛ばされた。


 次に攻撃を仕掛けた巨人は、触手を使って取り押さえようとした。

 しかし正面からの攻撃は対応しやすかったのか、簡単に避けられてしまい、さらに触手を捕まえられた。

 そのまま首無しの巨人はジャイアントスイングのように相手を振り回した。


 触手の巨人が振り回されていることにより、周りにいた数十体の巨人たちが次々に破壊、もしくは撃破され、一気に数が減った。

 そしてそのまま触手の巨人は投げ飛ばされ、遠くの地面に激突し、爆発した。



 撃破されなかった巨人たちはボロボロになりながらも首無しの巨人に向かって歩いていた。

 しかし首無しの巨人は容赦はせず、残った巨人たちに向かって走り出した。


 首無しの巨人はゴツい体型に似合わず軽快で、あっという間に距離を縮めてきた。

 そして近くの巨人たちを一体、また一体と次々に撃破していった。




 戦いは首無しの巨人の巨人の圧勝だった。

 事実、首無しの巨人にはキズなどは全く付いていなかった。


 首無しの巨人は周りに誰もいないことを確認しているような動作をし、その場で動かなくなった。




 しばらくして大量のヘリコプターが首無しの巨人の元へやってきたのだった。

 ヘリたちから頑丈な(ヒモ)のようなものが投下され、紐の先端部分が首無しの巨人にくっついた。

 全ての紐が首無しの巨人にくっつくと、そのままヘリたちは一斉に上昇した。

 すると、首無しの巨人は持ち上げられ、そのままヘリたちに連れ去られた。






 ー ターニップ研究所 ー


 とある岩山に建てられている大きな研究所。


 元々勝手に活動をしていたが、数ヶ月前に政府公認となった研究所。

 ここではロボットの研究をしていた。

 そう「していた」のである。


 現在は精々あるロボットの整備などのみである。


 なぜ今はそうなっているのかと言うと、それは数ヶ月前にある事件が起きたからだ。

 一人の科学者が超天才集団とも呼ばれた研究所の古参メンバーを皆殺しにしたのである。

 その科学者のその後の詳細は不明だが、幸いなことに古参メンバーの中で一名だけ生き残っていた者がいたのだ。

 彼を中心に今でも研究所自体は動いているのである。




 先程のヘリたちが首無しの巨人を連れて研究所へやってきた。

 研究所に中から作業着を着た男たちや高所作業車が一斉に出てくる。

 ヘリたちが巨人を地面に下ろすと高所作業車の作業床に乗った作業員が巨人にくっついた紐の先端を外す。

 紐の先端には超強力な特殊なマグネットのようなものがついており、これで巨人を持ち上げていたのだ。

 外す際には色々と難しい作業をしなければならないのが欠点だが。


 作業が終わるとヘリたちも少し遠くに着陸する。

 無事に巨人を研究所へ下ろすことができたのだった。




 すると、研究所の中から科学者たちが出てきた。


 巨人の下腹部辺りの一部分が下開きで開き、中からパイロットスーツ姿の一人の人間が出てきた。

 下開きに開いた場所が足場になっており、その(すみ)にはロープが(たば)ねてあった。

 それ落とした後、パイロットはロープに捕まり地面に降りた。


「今回もよくやってくれた!」


 研究所から出てきた七人の科学者の一人がパイロットに声をかけた。

 七人の科学者は二人を除いて奇妙な姿をしている。

 この世界には普通の人間の姿をしている人類もいれば、動物や怪物のような姿をしている人類もいるのだ。

 それは、数千年前から変わっていない。


「いつもありがとうね、ゴウくん。」


  "ゴウ" と呼ばれたパイロットはフルフェイスヘルメットを外して、素顔を明かした。

 黒髪短髪の緑の目をした男性だった。

 頬には獣に爪で引っかかれたような三つの傷跡がついている。


「デュラハリオンは我々が見ておくから、君は研究所で休んでていいよ。」


 そう言って科学者たちは巨人の近くへ向かって歩みだした。


 首無しの巨人の名は「デュラハリオン」。

 この研究所で扱っている巨大ロボットだ。


 他にも数体巨大ロボットがいたが、このデュラハリオン以外は行方不明となってしまった。

 言わば、現在このデュラハリオンのみが世界を守るカギと言っても過言ではない。



 パイロットのゴウは無言のまま研究所の中へと入っていった。

 彼の顔はまるで無機物のように無表情だった。




 ゴウは研究所内のシャワー室で汗を流していた。

 シャワーが終わると置いてあったつなぎを着て、畳んだパイロットスーツを持ちながらシャワー室を出た。

 そして研究所内を二、三分ほど歩き周り、ある部屋に入った。

 ゴウの部屋である。


 研究所内にある一室はゴウの部屋となっていた。

 部屋の中には布団と筋トレ器具のみが置いてある。

 あとは窓のみだ。

 ただし窓の外は研究所の中しか見えないが。


 ゴウは窓を三分の一ほど開けると、そのまま掛け布団を掛けずに布団の上に仰向けの体勢で寝た。

 そして目を閉じて、眠りに入った。






 それから数時間ほど経った。

 ゴウの部屋をノックする音が聞こえた。

 ゴウはその音に気付いたのか、勢いよく目を開き、布団からすぐに起き上がった。

 そしてドアへ近付き、鍵を開けてドアを開いた。


 次の瞬間、ゴウの目の前には一体の大柄な人型ロボットが現れた。

 全身が青いボディで、ゴツい体型で、額には一本の角、そして一つの赤い目が輝いている。


「今戻ってきた。」


 ロボットはゴウを見下ろしながら話しかけてきた。

 ゴウはなにも言わず、黙って話を聞いていた。


「しばらくしたら、また向こうへ行く。 だが、その前にオマエの特訓をする。」

「・・・わかった。」


 ゴウは一言そう返事をした。

 そのまま二人は黙って同じ方向へ歩み出した。




 着いた場所は研究所の外。

 とある森の中である。


 早速ゴウはパンツ一枚の状態で訓練を始めていた。

 丸太を背負った状態で腕立て伏せをしている。

 ゴウは再び大量の汗を流し、息を吐きながら、腕立て伏せをし続けている。


「ペースが落ちてきてるぞ。 もっと早くやれ。」


 ロボットは静かに厳しくゴウへ命令した。

 その言葉を聞いてゴウは、言葉通りペースを早くし出した。

 ゴウの息がさらに荒くなる。

 しかしゴウはなにも言わずに続けている。


 そんなゴウをロボットは黙って見ている。


 そのまま数十分間、ゴウは腕立て伏せを続けた。



 それから大体四、五十分ほど経った。


「そこまでだ。」


 ロボットがそう言うと、ゴウは腕立て伏せをやめて、背中の丸太を下ろした。

 そして息を吐きながら地面に倒れた。


「博士を待たせているので、短いが今日はここまでだ。」


 そう言うと、ロボットは倒れたゴウを持ち上げた。

 そして脇に抱えて、研究所前まで連れていった。


 中から一人の作業員が出てきた。


「部屋まで運んでやってくれ。」


 ロボットはそう言って作業員にゴウを渡した。


 ゴウを渡すと、作業員から距離をとった。

 次の瞬間、背中のジェットから火が出て、そのまま上空へ飛び立った。


 そしてそのまま遠くへ消えていった。






 再びシャワーを浴びて、つなぎを着て、部屋に戻ったゴウ。

 そして再び布団の上に乗ろうとした。


 次の瞬間、基地内に音が鳴り響いた。

 街に巨人が現れたことを知らせるサイレンだ。


 ゴウは表情を一切変えず、すぐに着ていたつなぎを脱ぎ、畳んであったパイロットスーツに着替え始めた。

 パイロットスーツを着ると、近くに置いてあったパイロットヘルメットを抱えて、部屋を出た。


 当然デュラハリオンの元へ走っていたのだった。




 ゴウは高所作業車の作業床に乗っていた。

 これを使ってデュラハリオンのコックピットまでの入口に入るためだ。


 ゴウは作業床が伸びている間、ヘルメットを被った。

 作業床が入口まで伸びると、ゴウはすぐに飛び込んだ。

 そして五つある扉の内、真ん中の扉を開き、目の前の椅子の座った。

 椅子に座って壁にあるスイッチを押すと、椅子が自動的に上へ上った。

 着いた先はデュラハリオンのコックピットだった。


 デュラハリオンのコックピットはかなり広く、席が全部で五つある。

 その内の一つをゴウが使っている。


 ゴウが目の前のタッチパネルを触った瞬間、デュラハリオンの全機能が動き出した。

 正面に巨大な映像が映し出された。

 それは外の風景だった。


 また、他四つの席のタッチパネルなども動き出した。


 これでデュラハリオンを動かすことはできるようになった。



 だが、ゴウはデュラハリオンを動かさなかった。

 その理由はすぐに分かった。


 デュラハリオンの上空や周りには数体のヘリが飛んでいた。

 回収された時同様、行きもヘリに運んでもらうのだ。


 ヘリたちから(ヒモ)が投下され、紐の先端部分のマグネットがデュラハリオンにくっつく。

 全ての紐がデュラハリオンにくっつき、そのままヘリたちは一斉に上昇した。

 デュラハリオンは持ち上げられ、そのままヘリたちに運ばれていった。


 これがデュラハリオンの出撃の様子だ。


 そして再び、ゴウとデュラハリオンは戦場へと向かうのだった。




 だが、デュラハリオンを完全に動かすには足りないものがある。

 あと四人のパイロットだ。

 その四人が集まって、初めてデュラハリオンは完全になる。


 果たして、その時は来るのだろうか・・・。




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