第九幕 初クエストなようで
屋敷に戻ってくると、食事の席へと招待された。昼の散策でモンスターが一般的に食べられているという認識があったため、正直食事は、少し不安があった。
しかし、想像とは違いだされた料理は、現実世界で言う所のフレンチに近い形だった。これならおいしく食べられそうだと内心喜んでいたが、フェイ、レオンさんは慣れていたが、レオンさんの妻であるミリエラさんはぐいぐい来る方で質問責めにされ、味をはっきりと思い出せなかった。
その後、風呂などにはいって用意された自室へと戻り今後の展望について考えようと紙とペンを用意してもらい机へと向かった。
「ステータスは貯金によって変化し、スキルもお金が必須、俺が強くなるにはお金が必要と分かった。けどこれから先は、宿代なども稼がなきゃな」
レオンさんの行為で今日は泊めていただいているが、さすがにずっといるのは日本人の嵯峨か俺のちっぽけな良心が痛む。
「まず第一に宿を探す。そのための資金稼ぎを明日のクエストで補う」
これが明日の目標だな。当面の目標は、金銭稼ぎがメインってことにしとこう。ステータスはなくても困らない。実際、神様の手紙にはこの世界の使命はないと書かれてる。これから先、悠々自適なスローライフを送るもよし、冒険者をしていくもよしってわけだ。
でも、おれの厨二心をくすぐってしまうためステータスは上げたい。
次の日、帰り際に昨日の俺の服の代金を革袋でもらった。中を見ると大量の金貨が入っていた。
「ざっと10000yellだよ」
「こ、こんなに?!多くないですか」
「いやいや、相場通りだと思うよ。こんな生地や織り方は見たことがないからね。十分参考にさせてもらうよ」
異世界の価値基準がわからない俺には、ちょっと意外だったが、これが普通なのだろうか。とりあえずいただいたお金を宿の資金とするためとりあえずItemボックスへと入れた。
お見送りに来ていたメイド執事を含めたフェイ家族に別れを告げ、教えていただいたおすすめの宿へと向かった。
数分後、教えていただいた宿へと到着した。洋風の看板には”カミカゼ”と書いてある。入ってみると中はおすすめ通りきれいでド〇クエをリアルにしたような店主のおばぁちゃんがいた。
「お客さんかい。宿屋 カミカゼにようこそ」
「えっと、しばらく滞在させていただきたいのですが、1か月分とりあえずお願いします」
「1か月4000yellだね」
「先払いしておきます」
「!?」
俺がItem欄からさっきの革袋を出すと、おばあちゃんが目を丸くしてこちらを見たが何も言わずにすぐ部屋の手配をしてくれた。
宿に必要ない荷物を置いて、冒険者ギルドへと向かった。昨日の騒ぎを起こした張本人が入ってきた瞬間、騒がしかったギルドは静まり返り俺に視線が集まった。注目されることに慣れていない俺は、そそくさとクエスト板のところへと向かった。
クエスト板を見ると、様々なクエストが張り出されており、中には部屋掃除代行なんてのもあった。
「できれば、報酬のいいクエストがいいんだよな。んー…………おっ?」
掲示板の隅っこに隠れていたクエストには、Bランククエストで報酬は10000yellと書かれている。
「なになに?バジリスクを討伐してか。なんかやばそうだけど……」
元の世界でバジリスクって絆…ごふん、コカトリスっていう蛇と鶏を足したやつだよな。
とりあえずカウンターにもってって聞いてみるかな。
さっきのクエストの紙をカウンターへと持っていくと、カウンター担当がシャルマさんを連れてきた。
「昨日の今日で君にゃあ……」
来て早々、あきれられたような気がする。
「バジリスクってどんな魔物か知ってるニャか?」
「いえ、受けるかは聞いてからにしようかと思って」
「そうニャか。バジリスクっていうのは、蛇の大型魔物だニャ。毒はニャイけど顎が強靭だから岩をも砕く強さニャ」
「そういえば昔、ベルマさんが筋肉でごりおしで討伐してたニャ」
あいつ馬鹿だわ。やっぱ
「思ったよりも、想像しやすい姿なんで受けます」
幻想生物みたいな姿ならちょっと考え直したかもしれないが蛇なら問題はない。というよりも高額報酬に目がくらんでいた。
「まあ、ベルマさんに勝ってる君ニャらできるかもしれニャいから許可はするニャ。でも、あぶにゃかったらすぐ逃げるニャ。冒険者の基礎は生きて帰ることにゃ」
「わかりました。肝に銘じておきます」
初耳だった言葉だったからかシャルマさんは?を浮かべていた。
「バジリスクのいる位置は、門を出て3km地点の西の森だニャ。道中のモンスターにも気を付けるけるニャ。一応、討伐数に応じたお金が入るニャ。でも討伐数は1匹でもいいらしいからニャ」
「ああ。それとクエスト失敗は違約金があるから気を付けるニャ」
ちょ、それは、聞いてないんですけど
「違約金っていくらですか」
「クエストごとに違うニャが、今回のは5000yellかかるニャ」
でけぇ。
俺の場合お金の量がステータスだから何としてもクエストを達成させる必要が出てきた。
とりあえずシャルマさんにクエストの処理をしてもらった俺はさっそくバジリスクのいる西の森へと向かうことにした。
前回同様、門の前にまたもあのホモぉがいたが今回はギルドカードがあったためすんなり通ることが出来た。
(通るときすごく見られた気がしたが……考えないようにしていたことは内緒だ)
西の森へと向かう道中、最初の森にいたゴブリンやホーンラビットと呼ばれる角のある兔が出てきたが、宿屋のお金の残りの代金を入れた俺のステータス強化と新武器の半月輪によって相手にもならず、むしろ木の棒よりもグロいオーバーキルであった。
<status>
名前辻堂 晴翔 Lv.2
所持金12,000yell
筋力10 (+1200)
魔法力10(+1200)
防御力10(+1200)
魔防力10(+1200)
速度10(+1200)
運0(+100)
<魔法適正>
炎C 水C 風B 光E
<スキル>
貯金…所持金が多ければ多いほどステータスに変化が起きる。
無一文には使えない
<天恵スキル>
エリアヒールLV0…半径1m以内の味方の傷を癒す
隠密LV0…15秒間姿を消す。(クールタイム5:00)
LUK向上LV0…自分の運×100
<Item>
ゴブリンの死体 (23: 10 : 45) × 150
オオカミ男の焼死体(灰) (11 : 0 :11) × 1
オオカミ男の死体 (23:0:50) × 2
錆びたナイフ × 4
こん棒 × 100
折れた木の棒 × 1
E半月輪 (右・左) × 1
~あるCランク無名ハンターの視点~
「今日はこれぐらいにしておくか。ゴブリンもこんだけ狩れたら十分だよな」
無名Cランクハンターの俺は、ゴブリン退治が向いていると思っている。常にクエストボードに張り出されており、そこそこの報酬がもらえるからだ。
また、ゴブリンは屋台でも売られるほどのゲテ美味食材でもある。
「街に戻るついでに、奴がどんな狩りをするのか見てからにすっか」
先ほど通った少年冒険者は、つい昨日デボラをボコボコにした新人Bランク冒険者だった。
俺もその場に居合わせたがあれほどの動きができるやつを初めてみた。ベルマさんのパワーのすごさは今までも見る機会があったがあんなひょろ細い体つきをしている少年の強さは、常軌を逸している。
だから、すこし見てみたいと思ってしまった。
ちょうど少年が行こうとしている道には、ホーンラビットとゴブリンがいた。
少年は、どこからともなくデカい半月型の武器を二つ出していた。
(どっから出しやがったんだ!?)
突っ込んでしまいそうになったが息飲み込み少年を見ると、少年はその位置にいたが、瞬きした瞬間にはゴブリンとホーンラビットは粉々になっていた。
「こりゃ、今回の酒のネタになるな……。あれはやばいわ」
その後、冒険者は街へと帰り、ハルトの行動について酒を飲みながら冒険者の野郎どもにおもしろおかしく伝えると、瞬く間に広がっていった。しかし、誰かがハルトのクエスト先がバジリスクだという話が出てきて、一瞬ギルドが固まり、さらに酒を飲むやつらに瞬く間に広まっていった。
こうして、ハルトが知らぬ間に様々な噂が流れていた。
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