第八幕 お約束なようで
うわー何が悪いのか教えてくれー!
学校の教室ぐらいの大きさの部屋へと案内されると、中には門の前で検査されたものと同じ透明な水晶ともう一つ、紫色の水晶が部屋の中心のテーブルの上に置いてあった。
「じゃあ、まずは犯罪歴を測るな。検問されたなら同じ結果だろう」
ちょっとドキドキしながら水晶に触れるが、もちろん犯罪など犯していないため検問と同じく青く輝いていた。
「大丈夫みたいだな、じゃあ次にこの魔力水晶に触れてくれ」
「魔力水晶ですか?」
「はじめてか?魔力水晶を見るのは」
「犯罪歴を測る水晶とは違うんですか」
「根本的な所は、一緒だ。紫の水晶は、魔力を一定量の貯めることが出来て、量ごとに色が変わる。犯罪歴結晶は、魔法自体が込められており、これには鑑定魔法が込められている」
つまり、どちらも元は同じ水晶の塊だが、中身に魔法や魔力が入っているか入っていないかの違いらしい。
「まあ、この魔力水晶は少し特別性でな。魔力のほかに適性属性を見るような作りにもなっている」
「とりあえず、触ってみたらどうや」
筋肉ダルマも早く結果を見てみたいのか強引に俺の背中を押してくる。
「わかりました。……いきます!」
水晶に触れた瞬間、文字が水晶から浮かび上がった。
「これは、どういうことだ……」
「はじめてだから、わからんが……」
二人の戸惑いの声を聞き、俺も表示された文字を見てみると
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≪魔力≫ ――
≪属性≫ 風・火・土・水・光・闇・無
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魔力は測定しきれなかったのか数値が出てなかった。もう一方の属性は、俺が使ったことのない属性まで表示されていた。
「これってどういうことですか」
「いや、俺も20年仕事してきたがこんなことは初めてだよ」
「魔力はカンストって意味だろうが……。属性のほうも全てか」
「いや、俺使ったことのない属性もあるんですけど……」
「いや、これは適正を調べるだけで、使用ってわけじゃない。つまりこれから使えるようになる可能性があるってことだよ」
まじか。俺思ったよりチートステータスだな。
ステータスは、金があれば上がるし魔法は、金を使ったステータス振りで上がることは森でわかっている。
「ほんとに君一体何者だね?」
「一般「一般人ってのは違うからな」。」
「……」
先の流れだからか、筋肉に言うことを先回りされた。
「まあいい。ギルドに有能な奴が入ってくるのは大歓迎だ」
さすがに異世界出身者とは言えないから踏み入ってこなかったマスターには感謝だ。
「よろしくおねがいします」
「あとは、ギルドカードだが……。ベルマに勝ったことも踏まえてBランクから発行しよう。受付嬢のシャルマに作らせるから取りに行ってくれ」
さっきの受付猫嬢はシャルマさんというらしい。
「じゃあ、俺達は仕事に戻るな。期待してるぞ」
「楽しみにしてるぜ。お前の筋肉が進化する先を」
筋肉ダルマのセリフをスルーし、二人と別れた。
受付のところまで戻ると、フェイが手を振りながら待っていた。
「お疲れ様。どうだった?」
「一応合格したよ。なんか、Bランクからだって言われた」
その瞬間、周りがざわつき始めた。
「えー!!いきなりBランクですか。なにしたんですか、ハルトさん」
「なんか、試験官の筋肉を倒したんだけど…。Bランクってそんなにすごいの?」
試験官を倒したことにまた周りがざわつき始めた。
「すごいニャよ。はじめてBランクになったのはベルマの奴と同じだからニャ」
話を聞いていた、受付猫嬢ことシャルマさんは受付のところから出て話に入ってきた。
「まず、ランクというのがよくわからないんですが……。すごいんですか?」
「ランクというのは実力を表す限度だニャ。上からSSS・SS・S・A・B・C・D・E・Fランクでハルトさんは、上から4番目のランクにいきなりなったニャ。すごいニャ。クエストを受けるときも自分のランク以下しか受けられないニャ。ランクが高いほうが報酬も多いニャが、危険度も高いから注意が必要だニャ」
「なるほど、BランクだとB~Fランクのクエストを受けられるってことですか」
「これが、ギルドカードだニャ。なくしたら再発行にお金かかるから失くさないでニャ」
俺が、シャルマさんから受け取ろうとしたとき一人の人間が「待てよ!!」コールが入った。
「おいおい、こんなやつがBランクだとふざけるな」
出てきたのは、スキンヘッドの斧を持ったデ……ふくよかな体形の男だった。
「そうだ。そうだ。新人がBランクなのはおかしいだろ」
「そうだそうだ」
男が出てきてから、周りの野次馬も声を出してきた。
「正当な試験ででた結果だニャ。ここにいるハルトさんは、ベルマさんを倒す実力があったんだニャ」
シャルマさんが俺の擁護をしてくれたが、出てきたデブ男は、かまわず俺の前まで来て突っかかってきた。
「おい、お前俺と勝負しろ! 俺が勝ったらBランクに上げろ」
「そんな勝手なことできるわけ……「うるせえ……ブス猫」なんつった?」
怖いです、シャルマさん。
デブ男は、気づいていないのか俺にそのまま話しかける。
「お前が勝ったら、認めてやるよ!」
「じゃあ、その次俺も立候補させろ」 「俺もな」
周りの奴もデブ男に乗っかってきた。
「ハルトさん、受ける必要ないですよ」
「そうだニャ。代わりに私がころすニャ」
フェイさんが心配そうに声をかけてくる。
シャルマさんは殺気を出していた。
しかし、俺にはそれよりも疑問があった。
「えっと…誰…ですか」
「「「「は?」」」」
俺にコミュ力はない。
見当違いの疑問に、一瞬空気が凍った。
「ハルトさん、そこはどうでもいいんじゃ…」
心配そうにしていたフェイも飽きれてしまっていた。
「だって、このデブ男さんの名前も知らないですし……「だれがデブ男だ!」えぇぇ…」
俺の失言は、デブ男を切れさせてしまい。
「俺様は、Cランクのデボラだ。憶えておけぇええ」
デブ男は、俺に向かって叫びながら斧を振り下ろしてきた。
しかし、さっき戦ったベルマさんよりも遅い攻撃だった。
斧がまっすぐ振り下ろされようとしていたが、ゆっくりに見えていた俺は二つの半月輪を出して止めていた。
「怖いんですけどぉぉぉ」
「なんだとっ!!」
デボラを含めた周りの人間すべてが驚愕を受けていた。Cランクのデボラが決して弱いわけではない。デボラは、実力でCランクになったのである。周りの人間はそれをわかっていたから、ハルトの受け止めるという現実が信じられないでいる。
「あいつ、デボラさんの攻撃を受け止めたぞ」
「それよりあの武器はなんだ。大きいし、双剣とは違うが……みたことねぇぞあんなの」
「斧の攻撃を受け止めるとか、そんなことできんのか?」
「すごい、ハルトさん」
「ハルトさん、あんなに強いんだニャ?!」
えっ?! 受け止めただけでそんなに言う?
周りの声も聞こえてきて腹が立ったデボラは、むきになっていた。
「くそがっ!オッラ!死ね」
デボラは、乱雑に振り下ろし続けてくる。しかし、俺は全てを裁くことが出来た。
「なんでだ? なんで崩れないんだよ……」
乱雑に振り回す攻撃をし続けてきたデボラは、疲労してきたのか攻撃が弱くなってきた。
「もう良くないですか……? デボラさんの攻撃弱くなってますし……」
「うるせえっ! 黙れ」
「うえぇぇぇ?なんでぇ?」
俺の余計な発言にデボラはますます怒っていた。しかし、俺はなんで起こったのかわからなかった。
周りはさすがに俺の言動にあきれてきていた。
「あいつ、まじでわかってないのか?」
「さっきの完全に煽りだよな」
「「ハルトさん…」」
そうこうしているうちもデボラの攻撃をすべて捌ききっているとデボラは膝をつき始め大量の汗が噴き出していた。
「はぁ、はぁ、はぁ。クソが……なんでだ……」
「実力差は歴然だニャ。ベルマは現在Aランクだニャ。一応ハルトさんはBランクってことにはなってるニャがベルマを倒したってことはAランク以上の実力を持ってるってことだニャ」
「結局、なんで戦ってほし……むぐっ」
空気読めない発言をしてしまう俺をフェイさんは、あきれながら口を手で塞いできた。
「これ以上やりたい人はいるかニャ?」
シャルマさんの言葉に先ほどまで粋がっていた連中もすべて黙りこんでしまった。
「もういい……認める」
デボラも先ほどの攻防であきらめていた。
「じゃあ、解散するニャ。デボラには、ギルドでの騒ぎの責任としてこのクエストを受けるニャ」
「うげっ、それはギルドの書類整理…」
「安い割に仕事量が多いって噂の奴か」
「わかった……」
「ハルトさんも今日は帰るニャ。これ以上は騒ぎを起こさないようにニャ」
「了解です」
シャルマさんに言われた通り、帰ることにした。
「だいじょうぶですか?」
「だいじょうぶだよ。でもなんで怒ってたんだろう」
「ホントにわかってないんですか」
「えっ?」
「はぁ…もういいです。帰りましょう」
なぜかフェイに呆れられてしまった。とりあえずフェイの屋敷へと変えることになった。
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