第七幕 ギルド試験なようで
2話目
意外だったことがある。
俺は異世界の食事に期待半分ぐらいの気持ちだった。
しかし、以外にも異世界の食べ物は美味であった。
さきほど屋台で売られていた、ゴブリンの腕焼き
一見グロテスクな見た目ながら、フェイさんが食べている姿を見て勇気を振り絞って食べたところ見た目に反してうまかったのだ。
他にも、スライムもちや、イビルアイの目玉焼きなど気色悪いものがあったがゲテモノの割にうまい。
(恐れ入ったぜ異世界、食事に関しては舐めていた。あと食わず嫌いはよくないって実感した。今なら田舎のばあちゃんが作ったごぼうのカレーを食える気がする)
しかし、見た目が悪いので俺は、これ以上食べたいとはおもわないが……
異世界の食事に驚かされながらようやく大きな建物にたどり着いた。
「ハルトさん、ここが冒険者ギルドですよ」
「うわ~結構大きいな。てか、俺は猛烈に感動している」
「なんで泣いてるんですか。どこの街にもあるでしょうに」
フェイさんは不思議そうにしているが、俺の感動はわからないだろう。
異世界初の冒険者ギルドは男のロマンだ。
元の世界でラノベを読みまくっていた俺にとって夢にまでみたものなのだから
「冒険者ギルドでは、身分証を作るんでしたよね。だったらまずカウンターでギルド試験と適性検査がありますよ」
「えっ!?試験? それって筆記試験とかあるの?」
それは非常にまずい。異世界から来た俺にとって知識は皆無だ。
「試験は、武器込みの戦闘試験と魔力検査、あと犯罪歴の検査です。なので知識を問われることはないですよ」
てことは、脳筋でも余裕ってことだね。
ってだれが脳筋じゃ。すまそん、一人乗りツッコミです。
「大丈夫ですか?」
脳内で一人ボッチ劇場を繰り広げていると、いつの間フェイさんに顔を覗き込まれていた。
「だ、だいじょうぶデス。正常デス」
焦った、いきなり顔が近いから俺のボッチ性質人見知りが発動しかけた。
しかし、今の「大丈夫ですか」は頭がとは付かないでしょうか。
とりあえずギルド内に入ると、そこには大勢の武装した人が酒を飲んでいたり、ボードの前で紙を見てたり、ウエイトレスが酒を運んだり、カウンターには受付嬢がいた。
思っていた以上にモ〇ハ〇チックの集会所で、テンション上がる。
カウンターで登録するようなので10分ほどようやく自分の順番が来た。
受付嬢を見た俺は、衝撃を受けた。
カウンターの受付嬢は、清楚系な黒髪ロングのお姉さんで、ネコミミだったのだ。
「いらっしゃいだニャ。ご用件はなんだニャ」
「ラ〇ュタは、ここに実在したのか」
「なにいってるニャ?」
しまった、あまりの桃源郷に禁止用語と不信感を買ってしまった。
気を取り直す。
姿勢を正して、深呼吸して相手の目を見ていざ…
「あ、す、すいしぇん。と、登録したいんで、ででですけど」
すいません、ボッチ特性の対人恐怖症でした。
「どうしたニャ、気味わる……ナンデモナイニャ。登録だニャ。待ってるニャ。今試験官の準備をするニャ」
完全に嫌われた。
いいんだ、僕なんてボッチだし。
「女の子苦手なのは馬車のときから知ってましたけど、ハルトさん」
事情を軽く知っているフェイは横目でいじけているハルトを見てニヤニヤしていた。
受付ネコ嬢の気まずい目とフェイのからかいに耐えること数分、試験官の準備が出来たそうなのでフェイと別れ別室に通された。
別室は、体育館に近い感じで、デコイなどがおいてあった。
そこには、輝くサイドチェストのポージングをしている男がいた。
その男は、俺が入室するのを見て、ニヤリと笑い、話しかけてきた。
「君が、登録者だね。私は、ギルドマスターのテリー・サイトウだ。この試験の監督だ」
ニヤリと笑ったことに背筋にゾワリとした寒気が生じた。
というよりも、あれがギルドマスターなのか。
想像していたより変人、いやそれ以上の変人だ。
「まずは君の名前を教えてくれたまえ」
「ハルト・ツジドウです。ギルドマスターが試験官なんですか」
「いや、私は試験監督であるため立会人のようなものだ。試験は初めてかね?」
「ええそうなんです。一応、戦闘試験、魔法適正、犯罪歴確認を行うということは聞きました」
「そうか、ならばまずこれからの試験について詳しく説明しよう」
「まず、これから戦闘試験を行う。試験官は、もう呼んであるからもう少しで来るだろう。武器は、自分の武器を使うが…君武器はあるかね」
?ああ、そうか。
「武器ならアイテムボックス内にあります。これです」
アイテムボックスから、先ほどいただいた双頭の円月輪を出した。
「こ、これは驚いた。君、異空間魔法が使えるのかね?」
「だれでも使えるんじゃないんですか」
「そんなのがゴロゴロいたら、商人が馬車で荷物を運ぶ意味がないじゃないか」
そ、そうなのか。アイテムボックスって珍しくないものだと思ってた。
そういや、武器屋のおっちゃんも驚いてたな。これからは気を付けよう。
「それに、君の武器は何だい?こんな大剣並みに大きな武器は見たことがないな」
「これは、さっきもらったんですけど試作品らしいですよ。けど、いい武器です」
「もらったって……扱えるのかい?扱えないで負けたら登録は白紙だよ」
「一応、試運転はお店でしましたので大丈夫かと…。あの、試験官に負けたら登録はなしなんですか」
ドタドタ
「いや、全体の戦闘をみて評価するよ。試験官はAランク冒険者なんだけど…あ、噂をしたら来たみたいだね」
ドタドタドタ
さっきから、すごい足音が近づいてきている。
ドタドタドタドタ……ドカンッ
「オラッ!! テリー、俺の相手はどいつだー」
入口をぶっ壊して入ってきたのは、デカ斧を背負った…筋肉だった。
「ベルマくん、入るたびに試験場を壊さないでくれ誰の経費になると思っているのかね」
「そこにドアがあるのが悪い」
「どこの魔王かね。ハルト君、彼が試験官のベルマ・フレイズだ。一応Aランク冒険者だよ」
「お前が、登録者か。ひょろっちいな。もっと肉食べろ、そして筋トレしろ」
あ、察したわ。
あいつ、脳筋だ。間違いない。ギルマスより脳筋に違いない。
「じゃ、揃ったし試験始めようか。二人とも線が引いてある位置についてくれ」
俺とベルマさんが線の位置に立つと、不思議な靄が体を通り抜けた。
「これは?」
「結界だよ。この中では、ケガをすることはない。その代わりに致命傷は気絶してしまうから。あと痛みがないわけじゃないからね」
痛いのは嫌だな……。
あんな筋肉の塊の攻撃をまともに食らったらアウトだな。
ああそうか、当たらなきゃいいのか。
「試験を開始する」
「オラ!!いくぞ」
試験開始直後、ベルマは一直線にこっちに向かってきてデカ斧を振り下ろしてきた。
「あぶなッ!?」
スピードはないため余裕で避けれたが、元の場所を見ると地面が抉れていた。
「オラ、どんどんいくぞ!!」
あの筋肉ダルマは、デカ斧を振り回して走ってきた。
さすがに、あれを逃げ続けるのは、戦闘経験が少ない俺でもキツイってのはわかる。
じり貧になる前に俺は円月輪を構えて迎え撃つことにした。
「ふんっ、キサマの武器を見せてみやがれ」
筋肉ダルマもといベルマの斧の動きは、ステータスによってスローに見えるレベルだった。
そのため、乱雑に振り回す斧の攻撃に対しても円月輪で裁くことができた。
「なにっ?!」
自分の攻撃が完璧に裁かれ筋肉ダルマも驚いたのか、目を見開いている。
「今だ!くらえっ」
その隙がスローで俺には見えていたので武器屋でやった舞うように回転する円月輪の攻撃を直撃させた。
「ぐはッ」
攻撃をくらった筋肉は、壁まで吹っ飛び意識が飛んでいた。
「……!はっ! そこまで、勝者ハルト。まさか、倒してしまうとは思わなんだ。おまえさんなにものや」
「いえ普通の一般人です」
「普通の一般人はAランクを吹っ飛ばせん。まあええわ。戦闘試験は文句なしの合格だ」
「ありがとうございます。あの、筋肉…いえ、ベルマさんは大丈夫でしょうか」
「大丈夫や」
後ろの筋肉が返事をしながらこっちに向かってきた。
「いや~、効いたでお前さんの攻撃。強いな」
「いえ、筋肉……ベルマさんの斧の破壊力と突進力はすごいと思いました」
ホントにどこの肉弾列車だよって言いたくなった。
「まさか、ベルマが負けるとはな…。まあともあれ冒険者としての資質は十分にあるとわかった。次は魔法適正を行うが、これはできなくても問題ない。冒険者としては、十二分にやれるだろうから適性が悪くても登録はするつもりだから気楽にやってくれ」
「心配すんな。俺は魔法を使えないが冒険者だ」
なんだろう。俺が魔法使えないみたいに思ってそうだな。
試験だし、間違いはダメだよな。
「あの…一応魔法はつかえるんですが…」
「「は?」」
「だから自分、魔法が使えます」
「おいおい、じゃあさっきは本気じゃないのか?」
「いえ、本気でしたよ」
さっきの試験は紛れもなく本気だった。ただ魔法を使うタイミングがなかっただけだった。
最後の時に吹っ飛ばされた筋肉が気絶しなかったらファイアーボールを打ち込むつもりだったのだから。
「……。ほんとに君、なにものなの?」
「だから、ふっつうの一般人Aですって」
「「普通の一般人は、魔法も武術も長けてはいない」」
2人に突っ込まれながら、3人で魔法適正検査の場所へ移動するのだった。
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