第四幕 助けた恩でレベルアップなようで
「おっしゃ、あともう少しで街だ」
ゴブリン殲滅の休憩中にマップを確認すると森の終盤に差し掛かっていることに気が付いた。ついでにItem欄も確認したがゴブリンの死体は1010体になっていた。
魔法攻撃に夢中になりすぎてちょっと調子こいて狩りすぎたかなと反省はしている。
次にやらないとは言ってないが…。
そうこうしていると歩く先に光が見え始めた。
「ようやく、森を抜けられた~。……っておおおおおおおー」
光を抜けた先にはまだ少し遠いが、盛り上がった大地の上に円形の防壁と城が見えてきた。
「前世でいう西洋風の城だな、ますます異世界が極まってやがる。早く、行くか」
城を見つけて、テンションが上がった俺は猛ダッシュで城へと向かうことにした。しかし、その勢いは突然の声で急ブレーキをかけることになった。
「きゃああー」
どこから、ともなく女性の叫び声が聞こえてきた。周囲を警戒しつつ、叫び声が続く場所の方に顔を向けると、城から離れた場所で馬車が二足歩行で歩くオオカミのような生物に襲われていた。
「オイ、オンナハコロスナ。テメェらノにもつはオレサマガいただいていく」
「ひぃっ……。おねがいします、たすけてくださいー。冒険者の皆様おねがいします。荷物は、貴族様の物なんだ」
「いやいやいや、聞いてねえぞ。護衛任務だが、獣人種の盗賊なんてかなうわけねえだろ。俺は自分の命のほうがかわいい」
「まってくれ!? 冒険者様~冒険者様~。……ああ……ああああ」
走り去って逃げていく護衛の冒険者の背中を見て絶望している商人の男は膝をついて絶望に追い込まれていた。
近くの岩陰で見ていた俺は、冒険者の言動にはちょっと幻滅したが、寧ろオオカミがしゃべってることにびっくりしていた。
「まさか、オオカミがしゃべって、盗賊をやってるって……シュールだな」
さすがに商人がかわいそうに見えてきた。仕方ない、俺が助けてやろうじゃないか。しかし、助けたいが少し登場に迷うな。岩陰から様子をうかがってみると、オオカミが荷物を漁っていた。また、荷台に隠れていた14、5歳の少女がオオカミに手を掴まれていた。
「いやっ、やめて。助けて。誰か」
「ダレモコナイ。ゴエイハ、ニゲタ。オマエハ、オレタチノ苗床ニナル」
エロ同人みたいなことが現実で起きている。「いやー興奮するなw」とちょっと心の中に思ってしまったわ。
「だれかーだれかー」
「ウルサイ、ダレモクルワケ……ぐべッ」
泣き叫ぶ少女を黙らせようとしていたオオカミは、突然の俺のライダーキックによって吹き飛ばされた。
「来るんだよなーそれが!」
岩陰にいるのも飽きたし、いいタイミングを見つけたので俺は、オオカミを襲ってやった。
別に、オオカミが怖かった訳ではない。ただ、厨二でナルシストなだけだ。
助けられた少女は、涙を流しながらけりで吹き飛ばされたオオカミを見てポカンとしていた。
「大丈夫か? お嬢ちゃん」
問いかけた俺にハッとしたが少女は、俺をジッと見ているだけだった。しかし、俺が派手にオオカミを蹴り飛ばしたせいで、騒ぎを聞きつけたほかの盗賊仲間残り3人のオオカミが集まってきた。
「オウオウ、イセイノイイガキダ。オレサマノナカマガ、ノビテルジャネエカ」
「アニジャ、ココハオレニマカセテクレ。カクノチガイをオシエテヤル」
「イヤ、オレがコロス。コンナヤツハオレヒトリデジュウブンダ」
「ソウカデハオマエニヤラセテヤル」
「ケハハ、10ビョウデオワラセルゾ、ニンゲン」
3人のうちの1人が前に出てきて俺への敵意をむき出しにナイフ片手に突進してくる。
俺はそれに合わせて、後ろ手に隠していた炎の塊を目の前に飛ばした。
当然、突っ込んできたオオカミは、躱せる筈もなく燃え上がり、灰と化した。
「3秒でおわったな。どうした?焦げたか?」
一瞬にして灰と化した同胞を見てか、先ほどまで舐めていたオオカミが動揺しつつ警戒を強めてきた。
「テメェ、イッタイナニモノダ。ワレラをイッシュンにして…」
「なにものか? だと……そうだな、我の名は、辻……。いや、通りすがりの異世界人だ。憶えておけ」
どっかのライダーの名ゼリフを吐きつつ、俺は話しかけてきたオオカミの一人に迫りエクスカリバー脳天にを突き刺す。
盗賊オオカミの一人はナイフを持っていたが不意の攻撃でさらに木の枝なので油断し、躱せなかった。
エクスカリバーは、オオカミの脳天を貫いていた。
「キノエダダト!? キサマホントニ、ニンゲンカ?」
不意打ちとはいえ木の枝にやられた同胞を見て、ようやく辻堂の異常性に気づいた獣人種は、持っていたナイフを投げつけ後ろの森へと逃げていった。
「あっ! テメェ、卑怯だぞ」
油断していた俺はすごい速さで逃げていった獣人種を見続けることしかできなかった。
ひと段落して、一人の男が近づいてきた。
「ありがとうございます。ホンマ、死ぬかぁ思いましたわ」
話しかけてきたのは、先ほど護衛に逃げられた商人だった。商人は命の危機が去った余裕からかフランクなしゃべり方になっていた。
「ほんに、貴方様のおかげですわ。娘も荷物も無事なんて奇跡やな―」
「いえいえ、たまたま街に向かっている途中通りすがったものですから」
流石に、常識的な話をするときに厨二病は発動しない。
他人相手の場合、チキンハートな俺は、常識人を装う。
「自己紹介しなよ。助けていただきありがとうございます。私は、ポレンタン商会の娘で
フェイ・アス・ポレンタンと申します」
横から先ほど同人誌みたいになりそうだった少女は、フェイさんというらしい。
「ああ、すみませんな。私は、ポレンタン商会、会頭のレオン・アス・ポレンタンと申します。助けていただきありがとうございます」
前世の英語圏の名前みたいだな。俺もそれにしたほうが違和感ないだろうか。
「ハルト・ツジドウと言います」
「ハルトですか、珍しいお名前ですな。東洋の方でしょうか」
「えっ……あー……そうです。東洋らへんです」
違和感、バリあったな。東洋ってことにしておけば大丈夫みたいだな。よし、学んだぞ。
「まあええでしょう。ハルトさんにお礼をしたいんですが、あいにく持ち合わせがこの程度ですので、この袋の中身すべてと街に着いてプラスでお渡しします」
袋の中には、神からもらった金よりも大量の金が入っていた。受け取りたいが、前世で常
識人だったので助け合いでお金を受け取ることに心が痛む。
「いやいや、さすがに悪いですよ。たまたま通りかかっただけですし」
俺は、心を鬼にして、きっぱりと断りをいれた。
「いえ、命を助けていただきました。それは、私と娘の対価としては足りないぐらいです」
「もらってよ、お兄さん。お兄さんが助けてくれなかったらお父さんは死んでたかもしれないし、私も……」
(うう…断りづらい)
「わ、わかりました。この袋だけいただきます。その代わり、街までの同行と観光地を教えてください」
真剣な表情で頼み込まれてしまい、お金を受け取ることにした。
「それは、かまいませんが、よろしいので?」
「ええ、街に行くのは初めてですので、おいしいものが食べられればと…」
「うふふ、おもしろい方ですね ハルトさんは」
「はっはっは、了解しました。飛び切りのおいしいお店を紹介しますで」
「お願いします」
盗賊に襲われた荷物を整理するということで、レオンさんを待つ間、俺は先ほどもらった袋のお金をステータスに預けることにした。
ステータスにお金を預けると端っこの欄にlevel up 1と表示されていた。
いままで、どれだけ魔物を倒してもレベルが上がることはなかったため、驚いて目を見開いていた。
「もともとのポテンシャルは変わらないが、各種ステータスの+値が増えてる。しかし、金を預けるとレベルがあがるとは……」
Level up後のステータス欄をじっくり見ながら、レオンさんの準備が整うまで能力の変化を確認していた。
<status>
名前辻堂 晴翔 Lv.2
所持金11000yell
筋力10 (+1100)
魔法力10(+1100)
防御力10(+1100)
魔防力10(+1100)
速度10(+1100)
運0(+1)
<魔法適正>炎D 水D 風C 光F
<スキル>貯金…所持金が多ければ多いほどステータスに変化が起きる。無一文には使えない
<Item>
ゴブリンの死体 (24 : 20 : 45) × 150
オオカミ男の焼死体(灰) (12 : 10 :11) × 1
オオカミ男の死体 (24 : 23 :50) × 2
錆びたナイフ × 4
こん棒 × 100
折れた木の棒 × 1
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