第十四幕 規格外なようで
ストック切れしそうなんで1日置くかも?
ハルトがギルドへと戻ってくると、歴戦の修羅場をくぐり抜けてきたような顔付きの冒険者たちが集まっていた。ほんとに最初に突っかかってきた冒険者とは偉い違いがある。
もちろん猛者たちの中には、あの筋肉ダルマのベルマも入っていた。
「良く集まってくれた。勇敢な君たちに感謝している」
俺が最後だったのか、見回しているとギルマスが話始めた。
「今回のモンスターパレードの規模は5000体以上。過去にない規模である。また今回は、緊急事態により王宮騎士も参加する。しかし、無理に連携を取る必要はない。数多くモンスターを倒してくれれば問題ない。また、今回一番の功労者には多額の報酬が支払われる。期待してくれ」
報酬により周りを含め、俺も気合が入る。すると、ギルマスはチラリとこちらをみた。
「……ああ、それと今回の作戦は歴戦の猛者を集めただが、一名はイレギュラーが混じっている。実力は確かなのであまり突っかからないように」
ギルマスの言葉に俺のほうに注目が集まる。そしてひそひそと話声が聞こえる。
よく聞こえなかったが、「あれが噂の……」「ヘビールーキー」などと聞こえた。
「それでは、出発する。モンスターパレードを迎え撃つ場所は、ハインブルグを出て西の森付近だ」
西の森か……。バジリスクがいたところだったな。
そういや前回の報告の時に森を少し燃やしたこと報告するの忘れてたな。
ぞろぞろと猛者たちがギルドを出て西の森へと向かっていった。しかも、全員パーティーを組みながら。そうですか……俺ボッチですか。
とりあえず行く場所は、同じなので後ろからついていく。
2時間後、西の森の前までついた。ここまでの経路のモンスターたちは片っ端から前の奴らが倒していた。
西の森の近くまで行くと、大量の地響きとうめき声等が聞こえてきた。
よく見てみたかったので前線の前の方に行くと騎士が整列していた。先頭に立っている明らかに指揮官らしき鎧をまとった金髪碧眼美女が出てきた。
「王国軍のこの第1部隊の隊長を任せていただいておりますエリザ・スレ・モルトと言います。ギルドマスターは、おられますか?」
「私がギルドマスターのテリー・サイトウだ。よろしく」
「よろしくお願いします。さっそくですが戦力の確認をしたいのですが、こちらにいる戦力は250名の騎士です」
「こちらは、1名以外、自分含め110名歴戦の猛者を連れてきている」
「? 1名以外というのはどういうことですか」
「こちらも完全に把握できていないのだが本人の希望で新人冒険者が一人いる」
聞いた騎士の面々は、動揺を隠せない。もちろんエリザも。こんな死地へと新人を連れてきたギルドマスターに怒鳴りつけるほど……
「なんでそんな新人を?被害を出したいんですか。こんな死地であるとちゃんと伝えたのですか」
エリザは、テリーに詰め寄る。しかし、問い詰められても仕方がないので困った顔になる。
「その方は、誰ですか? 私が説得いたします。出てきなさい」
近くでみていた冒険者面々は、俺のほうを見てきた。エリザもその視線の先を見て俺だとわかったのか、テリーから離れ俺に詰め寄ってきた。
「あなたですか?ここは、遊び場じゃないんです。危険なんですよ。早く帰りなさい」
「わかっています。でも大丈夫です。報酬……十分な実力はありますので」
危うく、本音が漏れそうだったが聞こえてはいなかったみたいだった。
「…言っても分からないのですね。よろしい、では私を倒してみてください。実力があるのなら簡単でしょう」
全員が驚愕した顔をしていた。当然だ。ここにもうすぐモンスターが現れるというのに立ち会えとか言っているのだ。
「お待ちください。今は、緊急事態ですよ。それに彼の実力はBランクです」
「大丈夫です。もう少し時間もありますし新人相手に本気を出すほど疲労しません。それにギルドマスター……嘘をついてかばうと自分の身も危ないですよ」
エリザは、俺を本気で雑魚新人と思って疑っている。危険な真似をさせているとテリーもにらんでいる。
「わかりました。では、実力を確かめてください」
「む…。身の程をわきまえてください。はじめますよ!」
エリザの部下の騎士が合図をした瞬間戦闘が開始された。
始まった瞬間、俺は半月輪を手元に呼び出し、レイピアを持ち突っ込んできていたエリザの動きを止め首元に半月輪を置いた。そこまで僅か5秒だった。
見ていた俺以外の誰もが驚愕した顔をしていた。しかし、俺だけは絶対勝てるとわかっていた。それは、話をしているエリザのステータスを鑑定していたからだ。
あきらかにステータスに自力の差があるとわかっていたのだ。
「これで認めてもらえますでしょうか」
「……あなた、いったい?」
驚愕で腰を抜かして立てていないエリザを見てみると首元にほんの少し切り傷が出来ていた。
「すみません、怪我が……」
「いえ、かすり傷なので……大丈夫です」
かすり傷とはいえ、女性に傷を負わせてしまったのはちょっと後悔しそうだ。
「あっ!エリアヒール」
天恵で得たスキルを思い出し、発動させた。その瞬間みどりのキラキラが周りから出てエリザの傷が跡形もなく修復されていた。それどころか今までここに歩いてきた冒険者の疲労も回復していた。
「回復魔法まで……。実力は確かだったのですね」
「「「「!?」」」」」
エリザは、ようやく立ち上がりこちらを見ていた。
「あっ! 本当に申し訳ございませんでした。あなたの実力は十分わかりました」
「よかったー」
なんとか帰らずに報酬クエストに参加できそうだ。そんなことを考えているとはエリザも思ってもみないだろう。
「テリー殿も申し訳ない」
「いえ、私もここまで実力があるとは思っていなかったですので…」
俺の事をジト目で見てくる。俺なんかやったのかという気分だ。
「戦力は確認できました。ではここで迎え撃ちにしますので…」
エリザが作戦を全員に話始めた。
そんな中俺は、迎え撃つと聞いた瞬間にやってみたいことができ、横にいたギルマスに話しかけた。
「ギルマス、ちょっとやってみたいことがあるんだけど…。やったら大幅にモンスターを壊滅できると思うんだけど」
「は?何をするつもりだ。もうモンスターがくるから迎撃を開始するぞ」
「モンスターが見えたら、俺が1発魔法を放つだけだ。そのとき前に出ないでくれれば問題ない」
「……わかった。一度だけなら許可する」
横にエリザもいたので、聞こえていたのかエリザは俺の考えをあっさり承諾した。
「ただし、1回だけだ。森の入り口から少し離れたところに迎撃防衛線を張る」
「全冒険者と騎士を集めるから、森の外へ出た瞬間に行使してくれ」
「わかりました」
「もし、失敗すれば。こちらもすぐに動くから」
全員「大丈夫か?」と言いたげな顔でこちらを見ていたが時間もないので準備に取り掛かった。
数時間後、防衛陣の体制でモンスターが見えるのを待つと先ほどよりも近くで地響きが聞こえ始めた。
「では、やってくれ」
「はい」
俺は、バジリスクを倒した風の魔法「ダウンバースト」を前よりも大規模で森の前で発動させた。
突然の強い風に防衛陣の建物も大きく揺れ壊れかける。
この自然災害をみた冒険者と騎士たちは唖然としていた。
俺も自分で発動させて驚愕していた。俺がやりたかった理由は、新スキル鑑定のダメージ表記だ。
どれだけ自分の攻撃がダメージを与えてきたのかということを知ってみたくなったのだ。
やってみた結果は、予想通りといった結果だった。
森から出た瞬間にモンスターは、抉れた地面に押しつぶされ大量のポップアップ風の数値(6、1,0)が見える。
一体のモンスターに注目してみるとダメージ表記には、6160とかいてある。他の個体も同じ6160と表記されている。
これはステータスの魔法力に一致する。
(えぐっ)
見ているとモンスターがかわいそうに思えてくる。森から出た瞬間6160受けるということだ。出てくるモンスターはゴブリンやオーガ、ホーンラビット、バジリスクなどだった。
鑑定してみると高くてもバジリスクやオーガがHP1000を超えるぐらいだった。
「ダウンバースト」が収まったころには、モンスターパレードの過半数は、ぺしゃんこになっていた。
「な、なんですか?これは……なにをしたんですか!!」
思考停止から回復したエリザは、俺に詰め寄ってくる。他の人たちも次々に俺の方に注目する。
「魔法なんですか……こんな災害のような大規模魔法は、未だかつてみたことがありません。それと…あなた詠唱はどうしたんですか?」
「えっと……詠唱ってなんですか?」
「魔法を行う前の起動呪文です。一言しか言ってないですよ?」
は?詠唱とかあるのか?知らなかったんだけど。
中二病ごっこじゃなくなるやん。この世界。
「俺魔法ってこういうものだと思ってました。」
「……。まあいいです。あなたが規格外なのはもうおなか一杯わかりました。とりあえず、あなたは休んでいてください。ハルト少年以外で残党狩りをします。A隊は治癒班、B隊は戦闘班、C隊は防衛班になれ!」
「「「「YES、BOSS」」」
なぜか、米軍隊ノリでハルトの残したモンスターの残党狩りが始まった。
ハルトがモンスターパレードの大半を片付けてしまったため、負傷者はほぼ出ず30分ぐらいで残党狩りが終了した。
本当は、自分も参加しようと思っていたが、エリザさんに「あなた以外にも活躍の場をさせてほしい」と言われたので渋々、サポートに徹することになった。
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