第十幕 バジリスク討伐なようで
バジリスクと聞くと絆を思い出す
街付近の平原をだいぶ歩いてきた俺は、前方に広がる森を目視で確認することができた。
森の前までつくと、針葉樹が多く生い茂っており、人口の入り口らしき場所には木の看板が建てられていた。
ー注意ー
この先、バジリスク生息地につき関係者以外の立ち入りを禁ずる
by ****
看板には、バジリスクの注意書きが書かれていたが、この看板の書き主の名前部分は、文字がかすれて読めなくなっていた。
「ここで間違いないみたいだな。看板の文字にも書いてあるし、とりあえずバジリスクを森に入って探してみようか」
森の中へと入ると、周りは木ばかりであるため方向感覚が失いそうになってしまう。
一応、迷わないように持っていたゴブリンの死体を帰るための目印として進んだ道において行くことにした。
正直、異世界特典でもらった地図を見れば、現在地と街へ帰る程度の方向はわかるのだが自分が進んだ道を憶えて置くための気休めのマーキングに過ぎないのだが…
そんな感じで歩いていくこと30分、何故か他の魔物とも一切合わずバジリスクを見つけた。
「あれが、バジリスクか。情報通りでかいな……」
木が密集していない少し広い空間にバジリスクは、とぐろを巻きながら巨大な岩の上で眠っているようだった。元の世界では、動物園でしか蛇を見たことないが、ありえない大きさの蛇に少し緊張してしまう。
「人間を丸のみぐらい簡単にできそうだな」
半月輪を構えながらバジリスクのほうへと近づいた瞬間、バジリスクの大きな目が開かれこちらに気づきゆっくりと動き出し乗っていた岩を抱きかかえるように起き上がった。
起き上がった姿は、あまりの巨大さに貫禄すら見える。蛇ににらまれたカエルの気持ちを実感することができた。
(絶対、獲物だよな。俺……)
シュルルルルル
バジリスクの目は完全にハルトを獲物として見ており、長い舌が伸び縮みする様はハルトの隙を伺っている。
互いに、見つめあいながら硬直した状態は長くは続かなかった。
(ジャリッ)
グルアァァァァ
俺の靴が地面を擦ったと同時に蛇は、咆哮を放ちながら顔から突っ込んできた。
とっさの事だったが、右に転がりバジリスクをなんとか躱すことはできた。バジリスクが通った後をみると地面は抉れており木がなぎ倒されていた。
「あんなのトラックで轢かれたときよりもやべぇ」
過去の痛い記憶がすこしよみがえってくる。
シュルルルル
獲物に躱されたバジリスクは、少し警戒し下を出し入れしながらこちらを見つめてくる。
(なんかエロいと感じたあなたは、俺と同類です)
このままだとこっちが不利だ。間合い外から突っ込んでくる、動きも素早い。近接戦は、少し厳しいな。ここは、魔法主体で攻める。
俺は、半月輪をItem欄にしまう。半月輪が消えたことにバジリスクは好機と見たのかすぐさま突っ込んできた。
「ウインドカッターッ」
バジリスクを避け、体部分に風の刃を飛ばした。しかし、バジリスクの体に傷はついていなかった。ちなみに、<ウインドカッター>は俺の命名だ。
「嘘だろっ……俺の<ウインドカッター>が聞かないなんて…」
負け犬のようなセリフをネタとして言う俺には、まだ余裕があるんじゃないかと思ってしまう。
「なんてな!! こっちが本命なんだよ。最近発明した<ダウンバースト>」
お金が増えたおかげで風の適性はBランクになっていた俺は、元の世界の災害を再現できるんじゃないかと思って開発した。<ダウンバースト>は、強い下降気流の事だ。破壊的な気流は、地面すらも容赦なく押しつぶす。
バジリスクの体の一部は、抉れるようにつぶれており、周囲の地面も粉々になっていた。
「ふはははは、魔法最強、自然最強!? どーだバジリスク」
絶命したバジリスクを目に先ほどと状況が一変し強気になる。傍目から見ればすごくかっこ悪いだろう。だが、陰キャには関係ない。
陰キャは、劣勢の時はビビりだが優勢の時は強気になる。これ常識!俺が身をもって保証する。性格が悪い?なんとでも言うと言い。
とりあえず、ネタもやりきったのでバジリスクの死体をItem欄へと入れる。
さすがにちょっと疲れたのでクエストは達成したし、街へ帰ることにした。しかし、俺は後悔した。なんであんなことしたんだろうと……
それは数分前に遡る。
バジリスクを倒し、帰ることを決め今まで通ってきた道を戻っていた。
しかし、おかしなことに先ほど目印に置いたはずのゴブリンの死体がなくなって血の跡だけが残っていた。
ゴブリンの血の跡が残っているところを辿っていくと犯人は、ほかのゴブリンの死体をくらっている最中だった。しかも、犯人は1人……ではなく3匹。
大きな顎でゴブリンを一飲みする姿は、貫禄すら…いや見覚えがある。
「幻覚だろう……。さっきのバジリスクに見える。それも3体も」
目をこすり、もう一度現実を見るが、大きなバジリスクは3体いた。
そう、犯人はバジリスクが3匹だった。謎は解決した。さて帰ろう。
パキッ
触らぬ神に祟りなし精神で見なかったことにしようと後退るつもりだった。なぜか足元にあった木の枝を踏んだ音が響き渡った。
その瞬間、バジリスクは3匹同時にハルトの方向を向く。
「本日はお日柄もよく、たいへ「「「シュルル」」」…脱ッ!!」
臨戦態勢に入るバジリスクを見て、俺は一目散に先ほどの開けた場所まで走った。
走った瞬間、捕食者たちは我先にと咆哮を放ちながら突っ込んでくる。
「うそだろっ!撒き餌じゃねえぞ。つーか群れで動くとか陽キャかよ…あ、ごめんなさい、嘘です。謝ります。だから、口開けながら突っ込んでこないでぇぇ」
魔物に言葉は通じないはずなのに絶妙なタイミングで攻撃を入れてくる。
走り続けていると先ほど戦っていたところまで戻ってきた。大きな岩まで登り振り返ると3匹のバジリスクは体をくねりながら現れる。
「くっ、ここまでか……」
自分でもびっくりするぐらい、ネタを挟む余裕があった。
「さっきの技だと芸がないな。範囲技2<フレイムジャッジメント>」
これも、先ほどと同様に炎の適性Cランクになって考えた技だ。小さい炎の球を空中に大量に作りそれを落とす。隕石をヒントにつくった技だ。
基本的に押しつぶす技をたくさん思いついていた。特に理由はない。
範囲攻撃技なので、バジリスクと周辺の木に炎が降り注いだ。
バジリスクは、真っ黒こげになったりしていた。周辺の木は、火が付き山火事になっていた。
「バカめ! これが俺の力だ。あっ?やべ!」
さっきと同じように調子に乗ってイキっていたが、周りが燃え広がっているのに気付いてちょっとやりすぎたと反省した。
「だが、もうやらないとは言わない」
とりあえず、怒られる前に水魔法で鎮火活動を行うことにした。
これで俺の罪は、燃やして消したから0になった。
<status>
名前辻堂 晴翔 Lv.2
所持金12000yell
筋力10 (+1200)
魔法力10(+1200)
防御力10(+1200)
魔防力10(+1200)
速度10(+1200)
運1(×100)
<魔法適正>
炎C 水C 風B 光E
<スキル>
貯金…所持金が多ければ多いほどステータスに変化が起きる。
無一文には使えない
<天恵スキル>
ヒールエフェクトLV0…半径1m以内の味方の傷を癒す
隠密LV0…15秒間姿を消す。(クールタイム5:00)
LUK向上LV0…自分の運×100
<Item>
ゴブリンの死体 (23: 10 : 45) × 130
オオカミ男の焼死体(灰) (11 : 0 :11) × 1
オオカミ男の死体 (23:0:50) × 2
バジリスクの死体 × 1
バジリスクの焼死体 × 3
錆びたナイフ × 4
こん棒 × 100
折れた木の棒 × 1
E半月輪 (右・左) × 1
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