表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ふわっとした短編集

過去に戻ったのでやり直すことにした

作者: 蟹蔵部

いじめ、自殺の表現があります。

苦手な方は自衛してください。

 風が気持ちいい。見下ろした地面は遠く、十分な高さがある。あとは一歩、踏み出せばそれでいい。

 いじめの詳細なんてどうでもいいだろ。何が原因なのかもわからない。中学の入学式の翌日から始まった。

 両親は世間体を気にして僕のことは気にしない、教師は自分のことだけ気にしてる。

 きっと三年になってもいじめは続くだろう。もう終わりにしたかった。


 風を感じる。地面を見つめて一直線、衝撃は一瞬で、痛かったかどうかもわからない。

 最期のとき、僕の心に浮かんだのは、こんなに簡単ならもっと早くに飛ぶんだったという後悔だけだった。




 僕の意識はそこにあった。意識だけがそこにあった。体は動かないし、目も耳も働いていない。まるで窮屈な箱に閉じ込められたようだ。もしこれが自殺の失敗だとしたら最悪だ。

 何とかならないかともがいていたら、遠くから声がした。いい加減に起きろと呼ぶ声は、間違いなく母の声だ。

 光が差し込んできた。目は見えなかったんじゃなく、目を閉じていただけだった。体が動かなかったのは、体はまだ眠っていたからだった。


 つまり僕は普通に生きていた。


 そして思い出した。今日は中学の入学式だ。カレンダーの日付も二年前になっている。

 制服に着替えて降りていくと、母と父がいた。朝ごはんを食べる気にはならなかったので、そのまま学校へ向かった。母は折角用意したご飯を食べないのかと怒鳴っていた。父は興味がないのか新聞だけ読んでいた。


 中学校に着くとクラス分けの掲示がしてあった。多分、記憶通りのクラス分けだ。


 僕は教室には向かわず、屋上へ向かった。何人か先客がいたが気にしない。フェンスを乗り越えて地面を見下ろした。高さは十分なのは分かっている。

 後ろで誰かが叫んでいる。

 風が気持ちいい。

 一歩踏み出した。

 地面を見つめる。


 またあの日々を繰り返すのは嫌だった。だからやり直すことにした。


 今度は目覚めることなく終われますように。最期に僕はそう思った。




いじめの体験は本当に辛いものです。

忘れるとか、水に流すとか、受け入れるとか無理です。

もう一度受けろと言われたら、私なら逃げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ