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魔物はジークにメロメロです~ジルたちはジークを王にしたい

 ジークが古の森に来て7年が経った。


「よいしょ、よいしょ」

 ジークは一人で古の森を歩く。巨大な根やうねる地面を力強く進む。


 彼は今、吸血鬼の始祖の元へ向かっている。

 強大な彼女に魔物の王と認めてもらうため、一人で挨拶をしに向かっている。


 事の発端はこうだ。

 ジルたちはジークを古の森の王と認めろと、魔物たちに言った。好意的な意見は多かったが、否定的な意見もあった。

 魔物は力が全て。力弱き人間は認められない。


「全く! 頑固な奴らじゃ!」

「ジークのどこに不満なんじゃ!」

 リムとタマモは反対派の意見に地団駄を踏む。


「しかし、争いで決着はつけられません。皆が心から祝福する。それでこそ意味があります」

 ラファエルは残念そうに一同を宥める。


「ジークに会ってくれれば納得してもらえると思うのだが」

 ジルは苦い顔で頭を振る。反対派はジークに会おうともしない。


 皆が困っている。ジークはその様子を見て、頑張ろうと思った。


「僕がお願いしてみる!」

 ジークは反対派のねぐらへ行き、認めてくれるようにお願いすると言った。


「「「「え!」」」」

 皆はジークの言葉にびっくりした。


「危なすぎる!」

 ジルはジークを抱きしめて必死に止める。


「ワシらが頑張るからそんなこと考えんでええ!」

「ワシらに任せておくんじゃ!」

 リムやタマモたちも一斉に反対する。

 ジークを危険な目に合わせたくなかった。ジークが死んでしまったら? そう考えただけで胸が締め付けられる。

 しかしラファエルは違った。

「良く言いました。それでこそ王です」

 彼女はジークが誠意をもって接すれば、反対派も認めると思った。ジークは力こそ弱いが、とても清く、優しく、勇敢な性格をしている。その姿を見れば、彼女たちも考え直すと思ったのだ。


「そんなことさせられない!」

 ジル、リム、タマモ、青子、ベルは大反対だった。皆ジークが傍に居て欲しかった。

 しかしラファエルは一同を叱りつける。


「ジークは古の森の王となります。ならば臣下に礼儀を持って接する必要があります。これは、王になるために必要な試練なのです」

 王になるために必要なこと。そう言われると、皆納得するしかなかった。


 皆、()()()()()()()()()()()()()()()()


「もちろん、見張りはつけます。何かあっては困りますから」

 ラファエルは自分で言ったくせに、不安そうな顔をした。


 皆、ジークが可愛くて可愛くて仕方ないのだ。


「お母さん! 僕頑張る!」

 ジークは親の心配を吹き飛ばすほど、明るい声で張り切った。




「んー! 広い!」

 行けども行けども森の中、ジークは初めて世界の大きさを知る。

 ジルやリム、タマモ、青子、ラファエル、ベルと一緒の時は何も思わなかった。だが今は一人ぼっち。そうなると、いかにジルたちに守られていたか分かる。彼女たちがとても心強かったことが分かる。


「頑張る!」

 それでもジークは進む。ジルたちの期待に応えたかった。


「ジーク様は頑張るな」

 お目付役である八咫烏(ヤタ)は頭上で固唾を飲んで見守る。

「これくらい簡単にできてくれないと王には相応しくない」

 ジークの頑張りを見物するフェニックスは気楽に言う。彼女は反対派の魔物だった。


 ヤタは冷やかしに来たフェニックスを睨む。


「お前はどうしてそう気楽なんだ? ジーク様に何かあったらどうする?」

「力の弱い人間だった。王には相応しくなかった。それだけだ」

 フェニックスの態度にヤタはバサバサと羽を動かして威嚇する。


「なんて態度だ! ジーク様は他の人間と違う!」

「種族は人間だ。そして人間は弱い。弱い奴は王に相応しくない。魔物の掟も忘れたのか? 鳥頭が」

「お前!」

「言っておくが、俺だけの考えじゃない。これから会う吸血鬼の始祖や鬼神も同じ意見だ」

 ヤタは苦々しくそっぽを向く。力こそすべて。魔物の共通認識だ。


 その考えが馬鹿馬鹿しいと思うようになったのは、ジークに抱きしめられた時から。

 ジークはとても明るく、楽しそうに接してくれる。自分が好かれていると分かった時、ヤタはジークに惹かれたのだ。

 だからジークを応援している。見守っている。


「頑張れ! 頑張れ!」

 ジークの道のりは過酷だ。吸血鬼の始祖のねぐらはジークの家から軽く2000km(北海道から九州ほど)は離れている。途中まではジルたちに送ってもらったため、実際の道のりは10kmだが、それでも7歳のジークには遠い。

 雨などで滑る地面、整備されていない獣道、巨大樹の根が立ちふさがる。魔物こそ襲ってこないが、辛い道のりだ。


 助けられないのがもどかしい! すぐにでも背中に乗せて運んでやりたい! それができない。

 歯がゆさに身が締め付けられた。


「ふう、ふう」

 それでもジークは一生懸命に進んだ。

 そして途中、休憩をしながらも、ついに吸血鬼の始祖のねぐらへ到着した。


「ごめんください!」

 ジークは数多の吸血鬼やアンデットが巣食う城へ入った。

ジーク頑張れと思ってくださる方は評価、ブクマ、感想してくださると嬉しいです。

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