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魔物たちはジークにメロメロです~スライムの始祖はジークの友達

 ジークが古の森に来て5年が経った。

 ジークはすっかり大きくなり、走り回るようになった。遊びたい盛りだ。ジルたちが目を離すとすぐにどこかへ行く。おかげでお守りは大変だ。


「エヘヘへ!」

「エヘヘへ!」

 そんなジークの遊び相手はスライムの始祖(青子)だった。

 今、ジークは幼い女の子の姿をした青子と笑い合っている。


「ニヘヘヘ!」

「ニヒヒヒ!」

 特に意味がある訳ではない。相手が笑っている。それだけで楽しいのだ。


「ここに居たかジーク!」

 ジルとリム、タマモが血相を変えて現れる。


「見つかった!」

「見つかった!」

 ジークと青子は互いに悪戯っぽい顔で笑い合う。


「逃げろ!」

「逃げる!」

 青子はスライム状になると、ジークの体に纏わりつく。それは鎧のように硬質化する。


「ドン!」

「ドン!」

 ジークはビュウッと風のように走る!


「またあの子は! もうお昼なのに!」

 ジルたちはジークが逃げ去ると、荒い息を整える。


「鬼ごっこのつもりなんじゃろがのぉ~」

 リムは困ったようにため息を吐く。

「しかし、まさか青子にあんな力があったとは驚いたわい」

 タマモも深々とため息を吐く。


 ジーク一人だけならすぐに捕まえられた。問題は青子が協力していることだった。

 ジークの身体能力は青子が体に纏わりつくと、魔王ジルやリム、タマモですら追いつけないほど強くなる。


 ジルたちは青子にそんな能力があるなど知らなかった。


 青子は大人しく、日がな一日日向ぼっこするか、一日中寝ている印象だった。動くことすら稀だった。

 しかしジークと友達になってから一変、活発に動き回るようになった。その能力はジルたちの予想を超えていた。


 おかげでジークの活動範囲が爆発的に増えた。振り回される毎日だ。


「全く! そろそろお昼寝の時間も迫ってるのに!」

 ジルは再び走り出す。

「元気なのはええことなんじゃが」

「年寄りには堪えるの~」

 リムとタマモも走り出した。




「エヘヘへ!」

「フフフフ!」

 巨大な湖(北海道ほどの大きさ)の中心で、ジークと青子は抱きしめ合う。


「青子、大好き!」

「青子もジーク! 大好き!」

 チュッとバードキスを交わす。


「エヘヘへ!」

「ニヒヒヒ!」

 二人はとても楽しそうだ。

 それを歓迎するかのように足場を作るスライムたちがチャプチャプと蠢く。


「ジークは何か遊びたい?」

「青子とこうしてたい!」

「青子も!」

 チュッチュッとバードキスを何度も交わす。


 青子はすべてのスライムの原点だ。すべてのスライムは青子から零れ落ちた汗のような物だ。

 そんな彼女は、ジークに会うまで、とても退屈だった。


 彼女は不老不死で、食べ物を必要としない。たとえ灰にされても、煙に含まれる水蒸気から復活する。そのため、一度も怖いと思ったことがない。お腹が空いたことも無い。痛いと思ったことすらない。

 それはある意味、植物状態なのかもしれない。

 だから彼女はいつも日向ぼっこをしていた。やることが無いため眠っていた。

 他の魔物と交流することもない。なぜなら彼女たちも退屈そうだったから。

 退屈そうに、太陽を眺めたり、星の数を数えたりする。リムやタマモもそんな様子だった。そんな彼女たちに近づいても、面白そうとは思えなかった。


 そこにジークの存在だ! ジークは沢山の表情がある。見ているだけで飽きない。それにジークは構ってくれる。寂しそうに眠っていたところを起こしてくれた!

 ジークは青子に楽しいという感情を与えたのだ。


「ジーク!」

「な~に?」

「大好き!」

「僕も!」

 ギュッと抱きしめ合う。近くに居る。それだけでこんなに幸せ!


「見つけたぞジーク!」

 空間が歪むとジルが二人の前に出現する。ワープしたのだ。両隣にはリムとタマモが居る。

「青子は無臭じゃから探すのが一苦労じゃ!」

 リムは鼻を鳴らす。

 リムの鼻は古の森全土まで届く。それで探し当てたのだ。

「鬼ごっこはワシらの勝ちじゃぞ~!」

 タマモはおどけながら二人に近寄る。


「ムム!」

 ジークは悔しいのか、再度逃げようとする。


「いい加減にしろ!」

 ジルが怒鳴るとジークは体をビクッとさせる。


「こら! 怒鳴ることあるか!」

「そうじゃ! ジークは遊んでただけじゃ!」

 リムとタマモが抗議する。しかしジルは譲らない。


「ご飯の時間! お昼寝の時間! しっかり守る約束だった! なのに守らないのは悪い子だ!」

 リムとタマモは正論に口を紡ぐ。

 外へ遊びに出ても良いけど、時間は守る。ジークは約束したが、守らなかった。


「うう! ごめんなざいぃ~」

 ジークは涙目でしゃくりあげる。


「ジーク! 虐めるな!」

 それを見た青子はジルとジークの間に割って入る。

「邪魔をするか」

 ジルと青子はにらみ合う。互いに一歩も引かない。


 ジークは涙目でそれを見ていると、グシグシッと涙を拭う。


「青子! 悪くない! 僕が悪い!」

 そして青子を守るようにジルの前に立つ。

 魔王から恋人を守る勇者の様だ。


「ジーク」

 ジルはジークの行動に目をパチパチさせた。

「ふふ! さすがワシの子! 青子を守るとは大したものじゃ!」

「ちゃんと謝れたな! 偉いぞ!」

 リムとタマモはパチパチと拍手する。

 ジルは、ブルブル震えるジークを見て、何て立派な子だろうと胸の奥が熱くなる。


「ジークはいい子だ。偉いぞ」

 スッと優しく抱きしめる。

「僕、いい子?」

「いい子だ」

 頭を撫でるとジークはとろけるように笑顔となる。


「ジーク? 青子、守った?」

 青子は状況がよく分からないのか、不思議そうな顔でジークの袖を引っ張る。

「もう大丈夫! ジル母さん、許してくれた!」

 青子の胸がキュンとなる。

「ジーク! 大好き!」

「僕も!」

 また二人で抱き合う。


 その様子を見てリムが呟く。

「恋人みたいじゃ」

 ジルの耳がピクリと動く。

「私の許可がない限りジークと付き合うなど許さん!」

 姑のようなことを言う。

「ワシら! じゃからな」

 タマモが腕を組むと、リムも腕を組む。

 姑が三人、家に帰ると数千人。ジークに恋人ができるのはずっと先の様だ。


「ジーク!」

「青子!」

 二人はそんなことなど気にせず、楽しそうに抱きしめ合った。


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