帝国設立編~黒幕登場
「結構楽しかったな」
ジークが狂を倒したところでジルたちが帰還する。
「楽しんでいただけて幸いです」
案内人の岡部はやつれた表情で笑う。神の力を持つジルたちの案内は中々に大変だった。
「お主ら! 火の臭いじゃ!」
リムが突如声を上げる。一同の顔に緊張が走る。
「まさかジークの身に何か!」
「遊んでる場合じゃ無かったか!」
ジルたちは急いで地下を駆け上がり、外へ出る。
外は瓦礫の山だった。城は跡形もなく消え去っていた。
「何が起きた!」
岡部は真っ青な顔で狼狽える。
「ジークの臭いじゃ! 生きとるぞ!」
一同はリムの案内でジークの元へ走る。
「母さんたち! 帰ってきたんだ」
そこには、スクとヤタと融合したジークが立っていた。
「じ、ジーク! お前ジークなのか!」
岡部はジークの姿を見て戸惑う。
「僕だよ。まさか融合しないといけない事態になるとは思わなかったよ」
ジークはため息を吐いて、狂を踏みにじる。
「上位の魔物は体を分解し、融合することができる。最も、融合相手は認めた相手としかやらないがな」
ジルたちはジークが踏みつける狂を睨む。
「坂本狂! なんでここに居るんだ!」
岡部は混乱で立ち眩みする。
「僕も分からない。どうも誰かに依頼されたようなんだ」
ジークは狂の胸倉を掴んで宙吊りにする。
「誰に依頼された?」
「な、なまえはしらねえ……だけどたぶん……このせかいのじゅうにんだ……」
「この世界の住人? 誰だ?」
ジークたちが悩む中、一人の男が静かに現れる。
「よくやったね、ジーク!」
悪神、ロキだった!
「ロキさん……」
ジークはしばしばと、ロキを見る。
「なるほど! 勇者の召喚魔法はお前が教えたんだな!」
ジルたちはジークを庇い、戦闘態勢を取る。
「異世界を移動するお主なら簡単じゃな」
タマモはふんふんとロキの様子を見定める。
「まあね。ギフトって名目で力も与えたけど、どいつもこいつも君たちには勝てなかった。だからちょっとだけテコ入れしたのさ」
ロキは悪びれもせず笑う。
「狂! あの男がジークを殺せって言ったのか!」
岡部は狂の頭を掴んで、ロキに顔を向けさせる。
「そ、そうだ……おい! たすけろ!」
「ははは!」
パチンとロキが指を鳴らすと、狂はジークの手からロキの手に移動していた! 何が起きたのか、ジルたちでも分からない!
「君はよく頑張ってくれた! しっかりとジークの真の力を引き出させた!」
ロキは狂の頭を掴み、ギリギリと力を込める。
「て、てめえ!」
「ああそうだ! ただ殺すんじゃ面白くないね! だって君は死の恐怖も何も感じない! あるのは快感と不快感だけ! ただの狂人! それじゃあダメだ!」
ロキの瞳が光る。狂の瞳が揺れる。
「お、お前! 何をした!」
「君を真面にしたのさ。今の君は死の恐怖も良心の呵責も罪の意識もしっかりと感じる! 数十秒間、今まで感じたことの無い感覚を楽しんでくれ!」
メキメキと狂の頭が鳴る。
「や、やめろ! やめてくれ!」
初めて狂は涙を流し、泣き叫ぶ。
「ははははは!」
ロキは高笑いするだけ。
「ジーク! たすけてくれ!」
狂がジークに助けを求めると同時に、狂の頭はプチリと潰れた。
「ああ! ……笑った」
ロキの目つきが鋭くなる。じりじりと肌を焦がす圧力がジークたちを襲う。
「何のために僕を狙った? あなたとは仲良くできていたつもりだ!」
ジークは悔し涙を流しながら、母たちと同じく戦闘態勢を取る。
「我が子の成長を確かめたかっただけだよ」
ロキは臆面もなく、衝撃的な事実を告げる。
「……我が子?」
ジークは耳を疑う。体が固まる。
「僕は君の父親さ」
ジルも、タマモも、リムも、ラファエルも、青子も、ブラッドも、ベルも、バトルも、凍り付いた。
「お、お前がジークの父親だと……」
ジルたちは息もできないほどの衝撃だった。
「そうだよ。黙っててごめんね」
ロキはジークに笑いかける。
「お前は強くなった。そろそろ僕と一緒に、神々の世界へ帰る時だ」
「神々の世界!」
胸がバクバクする。足が震えて立っていられない。
「僕がここに連れてきた目的は、ジルたちの力を手に入れてもらうこと。半神ではオーディンたちに勝つことはできない」
ロキは身構えず、まるで世間話のような軽さで真相を告げる。
「お前はこの世界の生命すべてを体内に納められるくらい強くなった。もうこの世界に居る意味は無い」
手を差し出す。
「さあ、ジルたちを吸収して、一緒に帰ろう。そしてともにラグナロクを乗り越えよう」
あまりにも素敵な笑顔で恐ろしいことを淡々と告げる。
まぎれもなく、悪神であった。
「母さんはなぜ死んだ!」
ジークは歯を食いしばってロキを睨む。
「……お前が知る必要なんて無いよ。お前は僕と一緒に神々と戦う。それだけだ」
ロキは笑顔を止めて、無表情となる。
なんと恐ろしい無表情か。
「ふざけるな!」
ジークは震える体を熱い心で奮い立たせる。
「僕はこの世界の王だ! この世界で生きる! お前なんか父親じゃない!」
ジークの言葉で、ジルたちは金縛りから抜け出す。
「悪神ロキ! お前をこの場で殺す! 魔物の王の名に懸けて!」
ロキはため息を吐くと、拳を握りしめる。
「反抗期かな? 少々、躾が必要だね」
悪神ロキが悪の笑みを浮かべたのを合図に、ラストバトルが始まった。
本日あと2話投稿します。
本日中に完結します。
全ての始まりはロキがジーク君を連れてきたから。
始まりと同じく終わりもロキとなります。




