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帝国設立編~魔物の王の真実

 坂本狂と出会ってから三週間、未だに事態は好転しない。

「属国にしたばかりのパルスと同盟国のメッチが全滅したようです」

 ゴルドーの重苦しい声にため息が出る。

「隣国の人間を食って力を蓄える。頭がいいことだ」

 国内なら未だしも、隣国や属国の対応は円滑にはいかない。奴はそこに漬け込んだ。


「こうなったら呼び込むしかないな」

 ゴルドーたちに命じる。

「全員古の森に避難。僕はここで奴を待つ」

「ジーク様! 何をおっしゃるのですか!」

 ゴルドーたちは必死になって止める。


「そろそろジル母さんたちが戻ってくる。どんなに強くなっても、ジル母さんたちと戦うのはあいつも嫌なはずだ。だから僕一人になれば絶対にやってくる」

「危険すぎます!」

「策はある。スク、ヤタ! 合図があるまで隠れてて」

「ジーク様! 考え直してください!」

「これは命令だ! すぐに準備しろ」

「しかし!」


「ジークの言うとおりにしてやれ」

 スクとヤタが人型となってゴルドーたちを見る。

「でも、あれをやるなら今のうちにやったほうがいいんじゃねえか?」

 スクの言葉に頭を振る。

「あれをやったらあいつは姿を現さない。勝てる段階にならないとあいつは来ないさ」

「分かった」


 即座に皇都から民の避難が始まった。とてつもなく大規模で、どこに居ても、大騒ぎだと分かる。


「来い! 坂本狂!」

 玉座で一人、狂を待つ。スクたちは天井の影に隠れている。


 一日経ち、二日経った夜だった。ついに狂の気配を感じた。


「正面から乗り込んで来るなんて、びっくりだね」

「魔法で吹っ飛ばしても良かったけど、そうしたらお前が食えないだろ?」

 狂はたった一人で玉座の前に立つ。耳まで裂ける口に牙、翼は人間を止めていた。


「色々と聞きたいことがある」

「何だ?」

 剣を手に立ち上がる。狂は構えず、だらりと腕を下げている。


「なぜ僕を狙う?」

「ある男に頼まれたのさ」

 距離を測る。まだ遠い。


「頼まれた? ベリト5世か?」

「違うね。名前は聞かなかったが、ちょいとした優男だ。独房で眠ってたら、こっちの世界に召喚されるから、お前を殺せと頼まれた」

「なぜ?」

「さあ? 俺は面白そうだったからノッタだけだ。それに、お前を殺したらこの力を持ったまま現実世界に戻してやるって言われたからな」

「そんなことで罪もない人々を?」

「俺は人間の姿をしているが、人間を食い物と思ってる。魔物と同じさ」

「お前と魔物を一緒にするな!」

 力任せに剣を振り下ろす!


 パシリと、二本の指で剣は受け止められた!


「遅いな!」

 狂の拳が、胸を貫いた!

「つ、つよいな!」

 圧倒的な強さだった。これはジル母さんたちでも手こずる強さだ……




「あっけないな」

 狂は息絶えたジークの顔をじっくりと見る。

「これでゲームは終わり! さっさと食って、あの男を待つことにするか」

 グパリと大きく口を開ける。まるでサメの様だ。


「ばーか!」

 死んだはずのジークは目を開けて、狂の顎に拳を叩き込む!


「て、てめえ! なんで! それにこのちから!」

 慌てふためく狂は、砕けた顎と歯を両手で押さえる。


「言わなかったかな? 僕は魔物の王だ」

 隠れていた不死鳥(スク)八咫烏(ヤタ)がジークの両肩に下りる。


「魔物の王……それは称号じゃない。すべての魔物の力を操ることができるって意味だ!」

 スクの炎がヤタとジークを包む。


 炎はヤタの体とスクの体を溶かす。そしてジークの口やぽっかり空いた穴に吸い込まれる。


 ジークの体が変化する。瞳は黒く、髪は赤く、背は高く、筋肉も盛り上がり、炎の鎧を纏う。


「ま、まさか! 融合!」

 狂が後ずさると、魔王ジークが誕生した。


「強かったよ。まさかこの力を使うとは思わなかったからね」

 ジークは無造作に狂へ手のひらを向ける。


「くたばれ!」

「待て!」

 ジークの手のひらが光ると同時に、皇都の半分が爆発で吹き飛んだ。


「しぶとい奴だ」

 夜空の下、ジークは四肢のもげた狂を踏みつける。


「て、てめえ……はんそくだぞ……」

「お前だって十分反則だよ」

 ジークは真の力を開放し、狂を打倒した。

真の力の開放。


これがやりたかった。


魔物と融合するってのも、魔物に溺愛されるジーク君ならではと個人的に思っています。

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