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帝国設立編~最悪の勇者現る

「私たちはシギュン国と講和する」

「何だと!」

 ベリト国の王、ベリト5世は魔法通信機の前で叫ぶ。


「この前の交戦で私たちの兵士総勢100万人が全滅した。もはや抵抗する力など無い」

「馬鹿な! 魔物に屈するつもりか!」

 ベリト5世は拳を握る。敗北を受け入れられないのだ。


「ベリト5世よ。大陸の支配者は決まった。受け入れなければ殺されるぞ」

 通信は一方的に切られた。


「くそ! 腰抜けどもが!」

 ベリト5世は爪を噛む。

 ベリト5世も分かっていた。すでに軍隊は壊滅。どうすることもできない。


「どうにかできないか……」

 悩む。悩む。そしてあることを思いつく。


「そうだ! あの男が教えてくれた召喚術だ! 勇者を召喚して戦わせよう!」

 ベリト5世は大急ぎで召喚用の魔方陣を描くように命じた。




「ベリト様……あの男の戯言を信じるのですか? それよりもシギュン国と和平したほうが……」

 ベリト国宰相はベリトの顔色を伺いながら、暗に降伏するように勧める。

「馬鹿を言うな! 我こそ大陸の覇者だ!」

 ベリト5世は落ち着かない様子で魔方陣を睨む。

「ベリト様、準備ができました」

 側近の魔術師がベリト5世に頭を下げる。


「よし! では召喚するぞ!」

 ベリト5世は紙に書かれた呪文を唱える。するとバチバチと魔方陣が光る。


 目も眩むほどの閃光が収まると、一人の男が立っていた。


「ふーん。まさか本当に召喚されるとはな」

 男は特に驚いた様子は無く、ベリト5世たちを見る。

 男は脂っぽい長髪で、体格が良かった。身長は180センチを超えている。映画俳優のようなカッコいい顔つきだったが、目は爬虫類のようで生理的な嫌悪を感じてしまう。


「よ、よくぞ参った! 名は何という!」

 ベリト5世は豪快な笑いで勇者を歓迎する。


「俺の名は狂。別名東京の食人鬼だ!」

 狂は目にも止まらぬ速さで、ベリト5世の腹を拳で貫く。


「ベリト様!」

 護衛が一斉に狂に剣を突き刺す。だが狂は平然と笑う。

「そんなんじゃ死なねえ。俺は絞首刑にも耐えた男だぞ?」

 狂は無造作に護衛の頭を掴むと、ガリッと顔面を食いちぎる!

 ボリボリと食らう姿は悪魔の様だ。


「き、きさま! なにをするつもりだ!」

 ベリト5世はゴホゴホと血の泡を吐き出す。

「ジークって野郎を殺せばいいんだろ。だからそのための力を蓄えているのさ」

 狂は血まみれの口で笑う。


「俺のギフトはマンイーター! 人間を食えば食うほど強くなる! 安心しな! 望み通りジークを殺してやる! だからそのために命を差し出せ!」

 狂はベリト5世の首にかじりつく。


 その夜、ベリト国の王都は壊滅した。

 たった一人の最悪なる勇者によって。


「今の俺じゃジークには勝てない。どんどん食わねえとな!」

 狂は骨の山の上で笑った。


 その日、大陸に最大の危機が訪れた。




 一方、ジークは岡部の案内で、熱海の温泉旅館に母親たちと一緒にくつろいでいた。

「こっちの世界も捨てたもんじゃねえな!」

 バトルはバクバクと米や刺身を食べまくる。

「サービスが良いとはこのことか。私たちの世界に比べて治安も良い」

 ジルたちも日本酒をゆっくりと傾ける。


「良い世界だね! やっぱり日本とは友好を結びたいな!」

 ジークは浴衣姿で岡部と一緒にテレビを見る。

「まあ、ゆくゆくな。それよりも、何か欲しいのはあるか?」

 岡部は必死にジークたちのご機嫌取りをする。日本に攻め込ませないためだ。


『本日未明、網走刑務所から死刑囚、坂本狂が脱走しました』

 突然テレビが切り替わり、緊急速報が始まる。

「坂本狂! あのクソ野郎が脱走したのか!」

 岡部は苦々しく顔を歪める。


「誰?」

 ジークはテレビの緊急速報を睨む。


「54人の人間を殺した連続殺人鬼だ。女子供見境なく殺して、おまけに食っちまったって筋金入りの狂人だ。偶然、ホテルで寝ているところを警官に見つかって逮捕されたらしい。その時も警官の腕を食いちぎったらしい」

「危ない奴だな」

 ジークは目を細める。機嫌が悪い時の合図だ。


「まあ、網走はこっから滅茶苦茶遠い。あんま気にしないで楽しもうぜ」

 岡部はパッとテレビを消す。

「そうだね」

 ジークは落ち着くために作り笑いをすると、刺身を一切れ食べる。


「美味しい!」

 ジークは可愛らしい顔で笑った。

ラスボスの登場です。

できる限り早く更新します。


中々に厄介な能力を持っていますが、だからこそジーク君が輝きます。

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