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国家設立編~ジークに忠誠を誓わなければ死あるのみ

 アトランティス皇帝が隠れる城の地下へ突入した。

 すると出入口付近で勇者が隠れていた。

「そこに隠れている人たち。もう一度言うから、出てきて」

 柱の影に身をひそめる4人に声をかける。

 気配を消しているつもりだろうけど、体臭も消さないと意味がない。


「わ、分かった……」

 白髪の男性が両手を上げて現れる。3人の女性は隠れたままだ。


「あなたは、岡部さん?」

 ベル母さんの報告にあった、アトランティス皇帝に反感を持つ勇者の一人だ。

 そうなると、隠れているのは、麗華、静香、凛の3人か。

 なぜ髪を白く染めたのか分からないけど、今はどうでもいい。

 それよりも重要なことがある。


「俺の名前を知っているのか?」

 岡部さんは汗ダラダラに真っ青になった唇を震わせる。


「事情を説明すると長くなるんだよねぇ。仲間になってない君に事情を説明して良いのか迷うってのもあるけど」

 岡部さんの目をじっと見つめる。彼は蛇に睨まれた蛙のように微動だにしない。


 報告の通り、彼の目は有用だ。


「なぜ知っているのか。説明する前に一つ言わせて」

「な、なんだ?」

 ニッコリと笑う。


「僕の仲間になって!」

「何!」

「ジーク! 何を言っている! 勇者を仲間にするなど許さないぞ!」

 岡部さんとジル母さんが驚く。予想通りだけど、まずはジル母さんを説得しよう。


「ジル母さん。彼は僕たちの敵じゃない。アトランティス皇帝に反感を持つ仲間だ」

「勇者は敵だ! 私の話を聞いていただろ!」

 ジル母さんはカンカンだ。長年戦ってきたから、勇者というだけで許せないのだろう。


「ジル、落ち着け。うるさい」

 タマモ母さんが冷たくジル母さんを睨む。


「あなたは勇者に恨みがあるでしょうが、私たちにはありません」

「敵意がねえなら殺してもしょうがねえだろ?」

「ジークの命令は絶対だ。特に敵の生き死にはすべて王であるジークが決める。母とはいえ、過ぎた口だ」

 ラファエル母さん、バトル母さん、ブラッド母さんがジル母さんを叱る。


「し、しかし」

 ジル母さんは複雑な表情だった。割り切れない様子だ。


「少なくともこやつはワシらの実力をよく知っとる。敵になることは無い」

「殺気を押さえる私たちの実力を見破るとは、素晴らしい目の持ち主だ」

 リム母さんとベル母さんは岡部さんの強さを見抜く。


 彼は素晴らしい力を持っている。

 神々の目(ゴッドアイ)。あらゆるものを正確に見極める素晴らしい目だ。

 魔物には無い力で面白い。

 それにアトランティス皇帝の企みに気づいた点も頭が良くて良い。


「ジル母さん。彼は僕たちに敵意は無いし、魔物を殺してもいない。殺すのはダメだ。もし殺せば、ジル母さんは本当に魔王になっちゃう」

「……分かった」

 ジル母さんはついに折れた。


「こっちの話はついた。それで、返事はどう? 嫌?」

「嫌と言える立場じゃない」

 岡部さんは頷いてくれた。


「よし! じゃあ事情を説明するね!」

 仲間になったから、しっかりとアトランティス皇帝の企みや僕たちのことを話した。




「やっぱりあの野郎ども、俺たちを騙していたか!」

 岡部さんは歯ぎしりする。


「勇者たちを説得してくれない? アトランティス皇帝が今回の騒動の原因だ。僕はあいつだけ殺せればいい。そうすればすべて丸く収まる」

「殺せるとか、物騒だな」

 なぜか彼は顔を引きつらせる。何かおかしいことを言ったかな?


「分かった。あいつらを説得する」

 まあ納得してくれたようだから気にしない。

「これで良し! じゃあ、ベル母さんと青子はアトランティス皇帝たちを捕まえてきて」

「分かった」

「頑張る!」

 ベル母さんと青子が走る。


 そして数秒後、アトランティス皇帝たちを持ってきた。


「か! は! か!」

 全員ベル母さんの麻痺毒で動けない。


「早すぎる……」

「ちょっと本気出した母さんたちなら普通だよ」

 欠伸を一つ。これで目的は達成した。


「最後に、勇者たちを説得しに行こう!」

 最後の一仕事をするため、背筋を伸ばして欠伸をする。

 岡部さんはとても話が分かる人だった。他の勇者も話の分かる奴らなら良いな。


「待て! 説得するまで待ってくれ!」

 歩こうと思った時、なぜか岡部さんは慌てふためく。

「僕が一緒に居たほうが説得しやすいでしょ?」

 良く分からないけどまどろっこしいのは嫌いだ。

 だから岡部さんの後ろに隠れる3人の女の子に近づく。


「来ないで!」

 突然3人は武器を構えて、物陰から飛び出した。


「待てお前ら! こいつらは味方だ! 武器を下ろせ!」

 瞬時に岡部さんが3人を止める。


「そいつらは化け物よ!」

「私たちを油断させる罠! 信じちゃダメ!」

「岡部さん! 早くこっちに来て!」

 3人は冷や汗ダラダラで歯をガチガチ鳴らしている。


「女の子でも敵意を見せたらダメだ。武器を向けるなんてふざけてる」

 岡部さんが何か言う前に、タマモ母さんの幻術で三人の動きを奪う。

「待ってくれ! 説得する! だから殺すな!」

「岡部さん? 一度敵意を向けたら引っ込めることはできない。それが魔物の考え方。それに、岡部さんの説得を聞いても武器を下ろさなかった。僕たちに敵意を持ち続けた。情状酌量の余地なし!」

 タマモ母さんに目で指図する。


「でも、彼女たちは岡部さんの女。だから殺さない」

 タマモ母さんが目を細めると、彼女たちの心はバラバラに砕け散った。


「い、生き人形にしちまったのか」

 岡部さんは虚ろな目をする3人の顔を叩く。


「ただ単に、岡部さんの従順な僕になるよう心を作り替えただけ。少ししたら岡部さんのことが大好きになってる! 3人の管理、よろしくね!」

 階段を下りるため、一歩進む。


「お前は……人間じゃないな」

 岡部さんは恐ろしい化け物を見る目で僕を見る。


「僕は魔物の王だからね」

 ニッコリと笑って歩を進める。岡部さんも恐る恐る付いてくる。


「でも、岡部さんは大好きだよ! 他の勇者は知らないけど、岡部さんはちゃんと幸せになれるように頑張るから!」

 岡部さんの手を取って握手する。

「……お前、女にモテるだろ?」

 岡部さんはため息を吐きながら、苦笑した。

最近まとまった時間が取れなくなって来ましたが、頑張ります。


あとジーク君は現代人から見ると魔王ですね。

転移者を出して思いました。

魔物の王として育てられたから、当然なのかもしれません。

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