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国家設立編~アトランティス国制圧

 アトランティス国はいつも通り、陰気な朝を迎える。

 経済が停滞してから、浮浪者は増え、病人も増加している。死者は多くなる一方だ。


 だから皆、下を向いていた。


「なんだあれは!」

 しかし、今日、久しぶりに顔を上げた。

 上げなくてはいけなかった。


 太陽が見えないほどに空を埋め尽くす虫人と精霊騎士団の軍勢が、真っすぐに進軍してきたのである!

 

「魔物だ! 魔術騎士団を位置に付かせろ! 撃ち落とせ!」

 騎士たちは大慌てで戦闘準備をする。


「動くな」

 しかし、無駄だった。

 影に潜む吸血鬼騎士たちの爪が、喉元を捉えていた。


「吸血鬼の王に女王! SSSランクの魔物がどうしてこんなにたくさん!」

「我らは王でも無ければ女王でもない。我らは魔物の王であるジーク様に仕える一介の騎士にすぎん」

 吸血鬼騎士団は的外れなことを言って、アトランティス正規騎士団を縛り上げる。

 アトランティス国の騎士たちが異変に気づいてから、わずか数分以内の出来事だった。


 結果、空を飛ぶ虫人に精霊騎士団、延べ70万体の魔物がアトランティス国に無傷で降り立つ。


「なんだなんだなんだ!」

 騎士たちに変わって冒険者たちが動く。

 アトランティス国の皇都なだけあって、冒険者の面子はそうそうたる顔ぶれだ。


 10人のSSSランクの冒険者に100人のSSランクの冒険者、1000人のSランク冒険者、そしてA以下の冒険者が1万人。一国の軍事力に匹敵する戦力だ。


「見たこともねえ魔物だぞ!」

「どっから湧いてきた!」

「ぐずぐずするな! すでに市街地に入られている!」

 冒険者たちは武器を持って町を走る。


 そこに、精霊騎士団が十キロ先から放った数千万本の矢が襲う。


「い、いてえ! いてえよ!」

「ど、どっから飛んできた!」

「こ、この矢! 建物をすり抜けてきた!」

「の、呪いがかかってる! 魔力が練れない!」

「か、体が動かねえ……麻痺の効果がある魔法の矢だ!」

 Sランク以下の冒険者は一瞬にして戦闘不能となった。


「化け物だ! 早く攻撃するぞ!」

 SSランク以上の冒険者はさすがだった。すんでのところで身を捻り、矢を回避した。


 物陰からアラクネたちの糸が襲う。


「なんじゃこりゃ!」

「き、斬れない!」

「くっそ! 糸に体力が吸われる!」

 SSランクの冒険者も捕縛された。


「どうなってやがるくそったれ!」

 残されたSSSランクの冒険者10人は、大通りで隊列を整える。

 とてつもなく高い魔力耐性と身体能力で矢の雨や蜘蛛の糸をしのいだ強者だ。


 最後にオオカミに乗ったオークとオーガの群れが襲い掛かる。


「おいおい……冗談だろ?」

「魔物同士が協力しているだと……」

「ちょっと待て……あれがオークにオーガ? 身なりは似てるが随分とデカいじゃねえか……十匹も居たらドラゴンも食っちまうんじゃねえか?」

「なんて大きなオオカミなの! 熊でも食べてるの!」

 百戦錬磨のSSSランク冒険者でも、古の森の魔物たちには震えあがる。


「先制攻撃だ! 攻撃魔法用意!」

「最上級炎魔法! プロミネンス!」

 リーダーの号令で、魔術師が最強の炎魔法、太陽のように熱い火柱を放つ!


「そんな魔法を使ったら、余波で民間人が焼け死ぬぞ?」

 前に、魔人たちに後ろを取られた。


 ど派手な軍勢に気を取られている隙に、背後に回り込んだのだ。


「魔人? おいおい、魔王ジルと同じ化け物がどうしてここに?」

「俺たちなどジル様に比べたら、赤子よりもか弱い存在だ」

 SSSランク冒険者は負けを認め、両手を上げる。


 30分もしないで、アトランティス皇都は完全に制圧された。




「今更ながら、過剰戦力だった。10分の1でも十分だった」

 城の地下へ下りる途中、ジークはため息を吐く。

 カッとなってやってしまった。今は後悔している。

 あれほど一方的だと可哀そうになってしまった。


「何を言っちょる。戦力の小出しは愚策じゃ」

「むしろ少ないほうじゃろ。ジークを守るためなら100億でも少なくないわい」

 タマモとリムは尻尾と耳をピンと張りつめて、ジークの前を歩く。


「そうは言っても、100万の軍勢を動かすのは大変なんだよ? ご飯とか武器とか」

「食料など私が生み出せます」

「武器は拳と爪で充分! それに飲まず食わずで10年は生きられる奴らばっかりだから心配するな!」

 ジークの言葉に、ラファエルはピリピリした顔で、バトルはリラックスした顔で答える。

 二人はジークの両脇をガードしていた。


「うーん。コーネリアやゴルドーに軍事学を習ったけど、まるで役に立たない」

 ジークは今更ながら、けた違いな己の国に驚く。


「ジークは魔物の王だ。傷一つあってはならない。だからそんな細かいことを心配しなくていい」

「薄皮一枚でも傷を付けたら、この国を滅ぼしてくれる!」

 ベルとジルは後方を警戒しながら、ジークの背後を守る。


「ジーク、守る!」

「敵意のある奴は皆殺しにしてやるから安心しろ」

 鎧となる青子と、影に潜むブラッドは常に気を張っている。


 ここは敵地だ。油断してはいけない。窮鼠猫を嚙むなどあってはならない。


 完璧に勝つ。それが息子を思う母たちの思いだった。


「僕の合図があるまで手を出さないでね」

 ジークはやれやれと、城の地下にたどり着いた。


「ここが隠し扉になっている」

 ベルは無造作に拳を握ると、ポンと隠し扉を殴る。

 1メートルはある隠し扉が、豆腐のように砕け散った。


「強力な結界じゃ」

 隠し扉の先には、青白い光の壁が、ジークたちに立ちはだかっていた。


「これを地下に張られたら、ジルでも見逃すのぅ」

 タマモは無造作に結界を触る。

 バチンと稲妻がタマモを拒む。


 しかし、タマモは顔色ひとつ変えずにバチバチと結界に手を押し込める。


 閃光が鳴りやんだ時には、タマモは結界の向こう側に居た。

 タマモは並みの魔物なら触っただけで焼け死ぬ結界を、傷一つなく、強引に突破した。


「人間がこれほどの結界を張れるとは……舐めていた」

 ジルもタマモに続く。今度は閃光すらなく突破する。ジルは魔法使いの神のような者である。結界を無傷で突破する方法など、一目見れば分かってしまう。


「勇者ってのはつええのかな! 楽しみだ!」

 バトル、ラファエル、ベル、リムも傷一つなく結界を突破する。


「母さんたち……もうちょっとこう苦労したような雰囲気を出したほうが良いんじゃない? 相手が気の毒になってきたよ」

 ジークも青子とブラッドの力を借りて、無傷で突破する。


 人知を超えた一同にとって、最強の結界魔法などそよ風に等しかった。


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 結界の先にある扉の前では、勇者である岡部、麗華、凛、静香が唸っていた。


「この扉ってどうやって開くんだ?」

 脱出を考える一同は、とりあえず出口の下見に来たのだ。


「指紋認証みたいに、皇帝が扉に触ると開いたね」

「そうなるとやはり、ここに隠れて隙を伺うほうが良いですね」

 一同は鼻を鳴らす。ダメ元だったから気にしないが、それでも扉があるのに潜れないのはもどかしい。


「待って! 扉の向こうから足音が聞こえる!」

 凛は強力な盗賊スキルを持っている。だから針が落ちる音さえ聞こえるほどの耳を持っていた。


「隠れて様子を見よう!」

 岡部の指示に従い、一同は物陰に隠れた。


「また扉だ」

「今度は俺が開けるぜ! カッコいいところ見せてやる!」

 扉の向こうが騒がしい。そう思った瞬間、扉が突然爆発し、吹き飛んだ!


「バトル母さん……もっと手加減してよ」

「どうせ戦うんだから良いだろ!」

 そして一人の青年と、6人の美しい女性が入ってきた。


「何なのあいつら?」

 物陰で凛、麗華、静香は心臓をドキドキさせる。


「あ、あり得ねえ!」

 岡部は物陰で、ガタガタ震える。


「顔を出し過ぎ! 見つかるわ!」

 麗華は岡部を引っ張り、物陰に押し込める。


 岡部の震えは止まらない。


「真ん中の男……戦闘力は2500だった……」

「2500!」

「私たち勇者よりも強い!」

 一同に緊張が走る。


「そして周りの女! 戦闘力が500万! どうやって勝てばいいんだ!」

 岡部は神々の目(ゴッドアイ)によって、一瞬にして、ジークたちの戦力を見抜いた。


 そして、戦意を失った。


「そこの君たち。隠れてないで出てきて」

 追い打ちにジークが息をひそめる岡部たちに声をかけた。


岡部の髪は、一瞬にして、白髪へ変わった。

ジーク君たちに勝つ方法が浮かばない。

まぁこの作品なら問題ないですか、ちょっと考えるとヤバイ。、

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