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国家設立編~勇者たち、慢心する (勇者発見)

 アトランティス国は大陸の覇者であった。


 今から100年前まで、大陸は大小200の国によって戦乱が渦巻いていた。

 いつもどこかで誰かが殺される。

 日本でいう戦国時代に近い時代だった。


 アトランティス国は100年前、血で血を洗う時代を終わらせた。

 1000人の勇者たちと一緒に終わらせた。


 1000人の勇者たちは、神のような力で戦場を駆け抜けた。

 その力は巨大で、軍隊など歯が立たなかった。


 そして世界から軍隊は消え失せた。勇者たちが兵士たちを皆殺しにしたのだ。

 アトランティス国はそれを機に、大陸の頂点となり、すべての国の長、皇帝となった。


 1000人の勇者はアトランティス国とともに、世界に平和をもたらした後、何も言わず、姿を消した。




「つまり、勇者とはあなたたち、転移者のことです! あなたたちは世界を救う力を持っています!」

 アトランティス国の第一王女、オリビアは優しくおっとりした声で岡部たち100人に笑いかける。


「そんなすげえ力持ってるのか!」

 転移者の学生たちは呑気に笑いあう。


「でも、殺し合いなんて」

 学生たちと一緒に転移した、女性の副担任は複雑そうな顔をする。


「考え方を変えましょう。魔王は人ではない。害虫や害獣だ。俺たちはそれを処理するだけ」

 男性の担任はゆるゆるの笑顔で副担任に笑いかける。

 副担任はため息で答えた。


「以上で我が国の歴史は終わりです! ご静聴ありがとうございました!」

 オリビアが頭を下げると、勇者たちは元気いっぱいに拍手する。


「世界を救ったのに何も言わずに消えた? 馬鹿な! 一人か二人、アトランティス国の国王になると考える奴が居るはずだ! 世界を救ったんだから俺が支配者! そう考える奴が出る! 全員がガンジーやキング牧師な訳無い!」

 聡明な岡部だけ、拍手をしなかった。


「アトランティス国は召喚した勇者を殺す術を持っている。俺たちは道具だ。魔王を倒したら殺されるだけだ!」

 岡部はギフトで、神々の目(ゴッドアイ)という能力を授かった。

 この能力は、自分だけでなく、相手の戦闘力やユニークスキルが見れる優れものだ。正体を見破る力も持っている。さらに色々な物を見通せる力を持っている。


 その能力で、岡部は自分や勇者たちに、呪いがかかっていることに気づいた。


 授けたのは我らが神(ギフトコントロール)と呼ばれる力で、効果は、ギフト、つまり能力のオン、オフが操作される呪いだ。

 対して、アトランティス10世など呼び出した側は、授けるは我らが神(ギフトコントローラ)という力を持っている。

 効果は、授けたのは我らが神(ギフトコントロール)のオンオフを操作できる力だ。


 反抗的な奴は、ギフトをオフにされ、普通の人間へ戻る。

 そして、殺される!

 

「どうする! 打つ手なしだ!」

 岡部はオリビアの講義が終わると、自室へ走った。




「俺の戦闘力は5。マジでゴミだ」

 岡部は部屋の鍵をかけると、ベッドに座り込む。豪華な部屋だ。日当たりは良く、部屋も広いしベッドはふかふか。高級ホテルのスイートルームのようだ。食事も美味い。これが旅行ならどんなに良かったか。

「逃げ出そうにも、監視されている」

 苦々しく、鏡を見る。神々の目(ゴッドアイ)によって、支給された衣服などに、探知魔法がかけられていることに気づいた。

 逃げ出してもすぐに捕まる。


「仕方がねえ」

 嘆いていても仕方がない。歩き回って情報を得るしかない。

 立ち上がって、再度外へ出る。


「魔王が味方になってくれれば、心強いんだが」

 岡部は諦めたように笑った。




 闘技場では数多の勇者たちが魔法の練習をする。

 ある男は10メートルはある巨大な岩を拳で粉砕する。

 ある女は10メートルはある巨大な岩を炎で溶かす。

 なるほど、かなり強力な力だ。


「これなら魔王ジルも楽勝だな!」

「可哀そうじゃない? これじゃいじめだよ?」

「良いんだよ! 相手は魔王! ぶっ殺すのが正義!」

 勇者たちはガハハと慢心した高笑いをする。


「勇者たちの平均的な戦闘力は500くらいか」

 岡部は散歩しながら、勇者たちの戦闘力を記録する。


 皆、なかなか強い。あるものは戦闘力1000を記録している。


「岡部君!」

 敷地を散歩中、岡部にOLの女性が近づく。

 名前は麗華。岡部と同じ転移者であり、岡部と同じく、アトランティス国に反感を持つ女性である。

 魔法剣士であり、あらゆる剣技と魔法を使いこなすギフトを持っている。

 戦闘力は1300とトップクラスだ。


「麗華。首尾はどうだ?」

「全然ダメ! 逃げ出そうにも空間が歪んでいて、敷地から出られない」

 麗華は自分が調べたことを説明する。


 端的に言うと、岡部たちは、空間魔法で作られた世界に閉じ込められている。

 敷地を出ても100メートルも歩くと元の場所に戻される。

 敷地面積はそこそこ広く、現代的な娯楽施設などがある。水道や電気も完備してある。


 まさに異世界転移者のために作られた世界だ。

 空は永遠に晴れ、気候は温暖で湿気も少なく過ごしやすい。


「男娼やら娼婦まで完備。桃源郷のようだ。違うのは用が済んだら殺されることだけだ」

 岡部は唇を噛む。かごの中の鶏だ。時間が来たら食卓に並ぶ。


「いったん、アジトへ行きましょう」

 麗華はため息を吐くと、岡部もため息を吐いて、隠れ家へ歩いた。




 勇者たちも、馬鹿ばかりではない。岡部のようにアトランティス国の企みに気づく者は居る。

 彼らは自然と力を合わせるようになった。


 岡部と麗華は、勇者である静香の部屋へ入る。

 静香は強力な魔法を使える強者であり、戦闘力は1500を超える魔術師だ。

 彼女は自室をアトランティス国に対抗するメンバーのアジトとした。ここでは不穏な動きをしても察知されない。

 彼女は弁護士で、なかなかに頭の切れる女性である。


「戻ったぜ」

「お帰り」 

 静香の部屋は空間魔法で快適なアジトに変貌していた。ここだけで軍司令部の役割が果たせる。


「何か分かったことはあるか?」

 静香が聞くと、麗華が答える。


「どこかに出入り口があるはずだ。そこを見つけないと」

 静香たちは難しく唸る。


「凛の帰りを待とう」

 岡部が冷蔵庫からビールを取り出した時、元気はつらつな女子高校生の凛がドアを力強く開けて入ってきた。


「外へ行く扉見つけたよ!」

「本当か!」

 一同は手に持った飲み物を零す勢いで立ち上がる。


「王様たちが居るお城の最上階の扉! そこを上がると、地上へ出られる!」

 凛は荒い息で、オレンジジュースを飲むと、ニッカリと笑顔になる。


 凛は強力な盗賊スキルを持っている。暗殺スキルも持つ、最強の忍者だ。戦闘力は1600を超える。


「扉を開けた先はどうなっている?」

 岡部は身を乗り出して問う。


「扉の先は階段。ずっと上がると、お城の地下室に出る。そこは隠し扉になっていて、普通じゃ分からないようになってる」

「よく扉を潜れたな」

「扉が開いてたの! 今日は私たちのご飯とかを持ち込む日だったの! 運が良かった!」

「なるほど! 希望が見えてきた!」

 岡部はガリガリと紙にやるべきことを書き出す。

 岡部は戦闘力こそ低いが、皆のまとめ役となっていた。


「外の世界はどうだ?」

「中世っぽい世界。アニメとかでよくある」

「そいつは良い! 俺たちはアニメみたいにこの世界で英雄になれるな!」

 岡部が減らず口を叩くと、皆も笑う。


「一番の問題は、アトランティス皇帝たちが持つ授けたのは我らが神(ギフトコントロール)の存在だ。どんなに強くても、アトランティス皇帝たちには勝てない!」

 一同は苦虫を嚙み潰したような顔になる。


「だから、俺たちはアトランティス皇帝たちと戦わない。次に物資が持ち込まれる日! その日に逃げ出す! そのための計画を練ろう!」

 アジトの暗い空気が和らぐ。少しずつ、希望が見えてきた。


「岡部は凄いな! 凄く前向きで、色々なアイディアが出る!」

「仕事が出来たでしょ?」

 麗華と静香の褒め言葉に、岡部は鼻の頭をかく。


「褒めるなよ。照れる」

「岡部って童貞? 顔真っ赤!」

 凛に茶化されると、岡部はさらに顔を赤くする。


「凛? 肩にハエが止まっているぞ!」

 唐突に静香が凛の肩を指さす。

「え! やだ!」

 凛が肩を叩くと、ハエはプーンと部屋を飛び回る。


 そして一同のお腹が鳴る。


「何か食べましょう。ハエなんて放っておけばいいわ」

「後で殺虫剤を巻いておこう」

「ああもう! 最悪! ここ! 虫が居ないことだけは良かったのに! 連れてきちゃった!」

 麗華、静香、凛は呑気に外へ出る。

 彼女たちも、他の勇者たちと同じく、どこか、甘い。

 自分たちが死なないと思っている。




「見つけた」




「え!」

 岡部は心臓が貫かれたかのような殺気を感じる!

 視線の先には、未だに飛び回るハエが居る。


「岡部君! 早く食べに行こう!」

「あ、ああ!」

 岡部は麗華に急かされると、胸を押さえながらハエを睨む。


「気のせいだよな? 高がハエごときが、戦闘力53万なんて?」

 改めて神々の目(ゴッドアイ)を使用する。

 ハエの戦闘力は0だった。


「見間違えか」

 岡部は体にべったりと浮かぶ冷たい汗を拭いながら、麗華たちを追った。

フリーザ様ってカッコいい


次回はジークたちがどうするか書きます

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