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国家設立編~馬鹿な奴隷には躾が必要だ

 勇者が召喚された。勇者たちはジル母さんを狙っている。

 つまり僕たち魔物の敵であり、殺すべき相手だ。

 早急に、家族会議で対策を練る。


「勇者は強さにバラツキがある。最強クラスの勇者はジークより少し弱い。弱い奴は冒険者に負けるほど弱い。平均は、5人がかりでジークに怪我を負わせられるくらいの実力だ」

「ジークに怪我を負わせる! なんと不届きな連中! すぐに皆殺しにしなくては!」

 ジル母さんの話を少し聞いたら、ラファエル母さんがいきなり激怒してテーブルを叩く。

 テーブルが真っ二つになった。お茶の入ったカップやジュースの入ったコップ、ワインボトルが滅茶苦茶だ。


「青子、零れた物は舐めちゃダメ」

「ムムム!」

 青子が床に零れたジュースを平然と飲もうとしたため、抱っこして止める。青子は不服そうに頬を膨らませる。

 ご機嫌を取るために頭を撫でると、へにゃっと笑って、後頭部をコテンと胸に置いてリラックス。

 その間にロクサーヌたちに代わりのテーブルと飲み物を持ってくるように指示する。


「ジークよりちょっと弱いくらいか! どんな強さか戦ってみてえな!」

 バトル母さんは怒り心頭のラファエル母さんを放っておいて豪快に笑う。


「笑っちょる場合じゃないぞぃ!」

「ジークが怪我をしたら、ワシらはどうやって生きて行けばええんじゃ!」

 タマモ母さんとリム母さんは、まだ何も始まってないのに大泣きする。


「催眠術や幻術は効くか?」

 激怒する三人をしり目に、ブラッド母さんは冷静にジル母さんに訊ねる。

「効く奴と効かない奴が居る。本当にバラバラの強さなんだ。得意なことも違う」

「ならば催眠術や幻術は勇者たちに効かないと考えて行動したほうが安全だ……面倒な奴らだ」

 ジル母さんがため息を吐くと、ブラッド母さんは難しそうな顔で唸る。


「いずれにしろ、虫人や獣人では返り討ちにあう可能性がある訳か。ジークを守るためなら必要な犠牲だが、心が痛むな」

 優しいベル母さんは悲しそうに頭を振る。


「母さんたち、落ち着いて」

 精一杯、明るく笑いかける。


「ジル母さんに確認だけど、勇者たちがどこに居るか分かる?」

「大気の震え、地面の揺れから地下で召喚されたことは分かる。だがどこに居るのか分からない。私の探知魔法すら誤魔化す強力な結界に居るようだ。アトランティス皇帝が呼び出していることは分かっているから、皇都だとは思うのだが……」

 ジル母さんの探知魔法を誤魔化す。簡単に言うが、とんでもないことだ。結界魔法の才能だけなら僕より上かもしれない。


「次に、これが一番重要なんだけど、勇者はジル母さんの居場所が分かるの?」

「分からないはずだ。あいつらは強力な魔法を使うが、私も強力な結界が使える。現に今まで一度も居場所はバレなかった」

「なら勇者たちとジル母さんは何を切っ掛けに戦ったの?」

「奴らは性奴隷となっているエルフやペットなっている猫娘を虐殺する! それが合図だ!」

 ジル母さんが拳を握りしめるとともに、殺気で窓ガラスは粉砕し、壁に亀裂が入る。

「ジル母さん。落ち着いて」

 ジル母さんの背中を撫でて落ち着かせる。


 その間にロクサーヌたちが目まいで倒れかけたため、いったん下がらせる。

 また、確実に、ゴルドー国の住民たちが心臓麻痺等で死にかけているため、スクに蘇生の炎で国を覆ってもらう。


「何度も何度もあいつらを殺してきた! だが奴らはまた呼び出される! 何度も何度も魔物たちを助けたのに、また虐殺する! 私をおびき寄せるための道具として、どこかで飼っている! 許せない!」

 ビリビリと城や家屋、城壁に亀裂が入る。国に亀裂が入る。倒壊しないように、ベル母さんの虫たちで、ひび割れ等を補強する。


「すまない」

 ジル母さんは重いため息とともに肩を落とす。

 ジル母さんがブチ切れたのは5分くらいだった。それだけで、暴れたわけでもないのに、ゴルドー国は廃墟になるところだった。

 こんなに強いジル母さんに挑み続けるなんて、勇者たちは馬鹿なのかな?


「怒って良いよ。僕も許せないし」

 ギュッと抱きしめると、ジル母さんはおいおいと大泣きする。

 とても、辛かった。




「話を纏めると、アトランティス皇帝を殺して、勇者たちを殺せば解決するのかな?」

 ジル母さんの顔色を伺う。


「アトランティス皇帝を殺すだけではダメだ。あいつ以外にも勇者召喚の方法を知っている者が居る。なぜなら、以前、私は前アトランティス皇帝を殺した。それでも勇者召喚は止まらない。つまり、勇者召喚の方法を知っている者すべてを殺す必要がある」

「そうなると、アトランティス国を滅ぼすのが先決だ」

 ジル母さんが息を荒げると、ブラッド母さんは冷淡にはっきりと言う。


「過激で流血するけど、それが一番手っ取り早いね」

 背もたれにグッと背中を押し付けて背伸びをする。バキバキと背骨が鳴って気持ちいい。


「でもそれは最終手段にしよう」

「なぜじゃ?」

「先手必勝じゃ!」

 タマモ母さんとリム母さんがしかめっ面になる。


「一番大きな理由は、僕たちは勇者の居場所が分からず、相手もジル母さんの居場所が分かっていないこと」

 頭に血が上っている母さんたちに理由を説明する。


「勇者たちはアトランティス国の皇都に居るか、まだ分かっていない。それに居たとしてもいきなり勇者たちの本拠地に乗り込むのは不味い。僕たちがどんなに強くても、相手は勇者。何も分かっていない状況で行動するのはダメだ」

「おお! ジーク! 天才!」

 青子がクルリと膝の上で振り返って、良い子良い子と撫でる。


「時間的な猶予はある。なにせ相手はジル母さんの居場所を知らない。なら僕たちに危害を加えることもできない」

「しかし、それでは囚われたエルフたちが殺される……」

 ジル母さんは声を落とし、下を向く。


「手はある。ベル母さん、虫たちの目を通して世界中に不審な人物や怪しい建物が居ないか探して」

「怪しい人物や建物とは?」

「強力な結界を張っている建物、または強力な結界を纏っている人間。ジル母さんが見つけられないほどの結界だ。そんな場所は一つしかない」

「承知した。数日で見つかるだろう」

 ベル母さんは恭しく頭を下げる。


「ありがとう。次に、ラファエル母さんとタマモ母さんとリム母さんは古の森の警護をして。万が一、勇者たちに先を越された時のために」

「分かりました」

「任せるんじゃ!」

「たまには会いに来ておくれよ? 寂しくて死んでしまうわい」

 リム母さんが耳を悲しく垂れると、タマモ母さんとラファエル母さんも寂しげにしょげる。


「当番制にするから、拗ねないでね。次にジル母さんとバトル母さんとブラッド母さんと青子は僕と一緒にゴルドー国で待機」

「必ず勇者を殺す!」

「安心しろ! ジークは俺が守る!」

「勇者の血がどれほどの物か、味わいつくしてやろう」

「守る!」

 ジル母さんは憎らしげだけど、バトル母さんとブラッド母さんと青子は誇らしげに笑った。


 これでようやく方針が決まった。長い夜だった。




「しかし、勇者のせいで商売や交易を制限しないといけないなんて。ムカつくな」

 寝室に戻るとため息を吐く。


 ゴルドー国を支配した。事業を拡大して、交易も強化して、たくさんの人を呼び込むことができるはずだった。機を見て魔物の国の設立を世界に宣言できる予定だった。そうなれば僕の国は完成する予定だった。


 これからが面白い時だった。


 それが勇者を警戒する関係でストップすることになった。忌々しいことこの上ない!


「お怒りですね」

 扉を開ける音とともに、ロクサーヌたちが入ってきた。


「ああ、ごめん。緊急事態でちょっとイライラしちゃったよ」

「あなた様のお気持ち、私の心の臓に伝わっております。とても悲しいです」

 ロクサーヌが僕の上に跨る。そして、僕の両手を手に取って、己の首にかける。


「ジーク様。あなた様のお怒りを鎮めたい。どうか私を勇者と思い、その両手で絞殺してください」

「何を馬鹿なこと言ってる!」

 首から手を放す! とんでもねえ言葉で張り倒すところだった!


 だがロクサーヌはボロボロと涙を零し、悲痛に顔を歪める。まるではらわたが抉られたかのような顔だ。


「私は自分が許せません。どうして私は役に立たないのでしょう? 私に力があれば今すぐにでも勇者たちを皆殺しにしたのに! 私はそれができません! 私はジーク様のお役に立ちたいのに。なんと馬鹿な女でしょう」

 ロクサーヌは絶望に染まる瞳で、足に忍ばせたナイフを己の首に突きつける。


「私にはあなた様のお傍に居る資格などございません。ならばせめて、あなた様のお怒りが少しでも楽になるような形で死にたい。どうか、私の首を勇者と思い、切り落としてください。そして唾を吐きかけてください。そうすれば、私はあなた様に殺されたという名誉が残ります。あなた様のお怒りを和らげたという救いが残ります」

 ロクサーヌはナイフに力を込める。少しずつ、ナイフの切っ先が首に沈む。

 プツリと血が流れる。


「止めろ! お前なんか殺して怒りが収まると思うか? お前が死んだところで怒りが収まると思うか? 傲慢猛々しい!」

 怒りでロクサーヌを睨みつける。ロクサーヌはハッと青ざめると、ガチガチと歯を震わせる。ナイフはそこで止まる。


「お前たちはそこで何を突っ立っている?」

 ドアの前で立ち尽くすアレクシアやジェーン、エミリアといった総勢52人の女を睨みつける。


「も、申し訳ございません! 私たちもロクサーヌと同じことを考えていました! ですが間違いでした! 私たちの命など、何の価値も無いことを忘れておりました!」

 アレクシアたちは跪き、震える。血の気が引いているのが見て取れる。


「お前たちは僕を馬鹿にしている。勇者たちを殺せない自分が許せない? お前たちに殺してもらわないといけないほど僕が弱いと思ってるのか! 馬鹿にするな! お前たちが弱くても、僕の手で勇者たちを殺してやる! 誰一人死なせない! 奴らだけ皆殺し! 完璧な勝利! それが僕の役目だ! 僕は魔物の王で、この世界の王だ!」

 ロクサーヌの胸倉を掴み、耳元で囁く。


「お前の役目は何だ?」

「わ、私の役目は、ジーク様のお役に立つことです」

「違うな。お前の役目は僕の傍に居て、僕を愛することだ」

 唇を強引に奪い、ぐちゃぐちゃにする。

 ロクサーヌの顔色が良くなる。


「お前たちもこっちへ来い」

 跪き、ひたすら許しを請うアレクシアたちを呼ぶ。


「は、はい」

 アレクシアたちは四つん這いで近寄る。腰が抜けて立てないのだ。


「お前たちの役目は何だ?」

「そ、それは……お、恐れながら、ジーク様を愛することです。ずっとお傍に居ることです」

「何だ! 馬鹿だと思ってたけど利口じゃないか!」

 アレクシアの顎を引っ掴むと、ロクサーヌと同じく口づけをする。そして酸欠になるほどキスをする。


「次はエミリアだ」

 一人一人、キスをして唇を汚す。全員有罪だ。許しはしない。


「全く。お前たちのせいで○○〇〇がイライラして収まらない」

 ガッチガチになった物があらぶって痛い。


 これはキツイ躾が必要だ。


「今まで、53日だったけど、今日は100倍の5300日だ」

 部屋に備え付ける柱時計を弄り、時の流れを遅くする。今、部屋の中と外では時間の流れが違う。外で一夜経つころ、寝室は5300日目の朝を迎える。

 これはジル母さんが作った時間操作を可能にする時計だ。

 本来ならば歳を取るが、ブラッド母さんとスクと青子の体液を混ぜた薬を飲めば、1年間、不老不死となり、歳を取らない体となる。

 さらにラファエル母さんが作った空腹知らずの実を食べれば、一年間何も食べないで生きることができる。


「今から5300日。14年と半年かけて、お前たちを躾直す。今までに比べてさらに過酷だぞ」

「ああ! ジーク様!」

 ロクサーヌは感激の涙とともに救世主が現れたかのような笑顔となる。

 それはアレクシアたちも同じ。


「何だ? 躾けられるのに嬉しいの? びちゃびちゃに濡れてるじゃないか?」

「ああ! お許しください! 私、あなた様に躾けられる! それだけで幸福を感じてしまうのです!」

「全く、困ったメスたちだ」

 ロクサーヌの服を引きちぎる。

 そしてアレクシアたちを見る。


「躾一つ、お前たちは服なんか着なくていい。僕が許すまで裸体だ」

「ああ! 私たちは馬鹿でした! どうして私たちは服など着ているのでしょう? 家畜以下の存在であることを思い出しました。どうか、私たちを躾、あなた様の下僕にしてください!」

 アレクシアたちは隠し持つ小刀で己の服を喜々して切り裂く。


「ヴァネッサ? 君はこの躾に耐えられる?」

 薬屋のヴァネッサを睨む。彼女はセフレのような感じだった。最も、何度も僕の女になるように躾けてきたけど。


「酷い人……何度も何度も、私が泣き叫んでも止めなかったのに、今になって言うなんて」

 ヴァネッサも己の服を切り裂く。


 全員体一つの状態になった。


「さて、次のテストだ。僕に言うことある?」

「……ジーク様」

 ロクサーヌは静かに近寄ると、唇が触れる程度の軽いキスをする。そして呟く。


「愛しております。たとえ世界があなた様を見捨てても、私はあなた様のお傍に居ます」

「僕も愛してるよ」

 力強く抱き合う。


 僕は彼女たちを14年と半年間、ずっと、躾けた。

長い。

でも前半だけだとムカムカするタダの説明回だったため仕方なし。

あと今まで放置してたロクサーヌたちを少し掘り下げることできて嬉しい。

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