商売編~王女様はジークと一緒に居たい
僕の町への移民希望者はさらに増えている。やることあるのに僕まで駆り出される始末だ。
「率直に聞きますが、あなたは魔物と仲良くできますか?」
面接室でそこそこ身なりの良い青年に問う。ちょっとした貴族の息子らしい。
「できます!」
青年は自信満々に胸を叩く。
「嘘ですね。受付の猫人を鼻で笑ったでしょう。見ていますから」
「え!」
青年の顔面は凍り付いているが、構わずニッコリ笑う。
「僕の町は魔物が中心です。魔物を尊重できない方、魔物を嫌う方は出入りを許しません」
パンパンと手を叩くと、ドアを開けて冒険者が青年の肩を掴む。
「待て! お前ら俺が誰か知ってるのか!」
「知らねえよ!」
冒険者は暴れる青年を難なく摘まみだした。
「ありがとう、パトリック」
「いえいえいえ! ジークさんのお役に立てて光栄です!」
Sランク冒険者のパトリックは僕に媚びを売る。
「調子のいい奴だ」
しかし、喉が渇いたと思うと、パッとジュースを差し出す手腕は見事だった。
パトリックはその昔、一緒にチームを組んでいた。しかし僕は追放された。それ以来犬猿の仲だったが、僕がジーク商会を立ち上げると、パトリックは手のひらを返した。
今では僕のご機嫌取りと雑用係で大忙しだ。
人手が足りなかったため、一回だけど思って雇ってみたが、いざ雇ってみると意外に役に立つ。
腐ってもSランク冒険者という肩書は伊達ではない。
パトリックを仲間にしたことで、他の名だたる冒険者も雇ってくれと集まった。結果、ジーク商会の商品を盗もうなどと思う不届き者はゴルドー国内ではいない。
あと、冒険者はなんだかんだ言いながら器用だ。雑用係には最適だし、商品の運搬作業も任せられる。
「なんだかんだあったけど、君が仲間になってくれてよかったよ」
ドサリとチップとして1万ゴールド渡す。
「おお! ありがとうございます!」
「ただし! ちゃんと他の冒険者の管理もするんだぞ? 万が一冒険者で問題を起こす奴が居たら、君も自動的に首だ」
「分かってます分かってます! 任せてくだせえ!」
調子よく頭を何度も下げる。苦笑しかできないが、頼もしくもある。
こうしておけば、粗暴な冒険者たちもルールを厳守する。
出費がちょっとかさむのが難点だが、その分働いてもらっている。
「そろそろ、次の人を呼んでくれ」
「分かりました!」
パトリックは大股で部屋を出る。キビキビした動きは意外にも頼もしい。
「冒険者も役に立つな」
パトリックは僕が魔物の王であることを信じていない。獣人に好かれる金持ちくらいの感覚で、この面接もジーク商会の就職面接くらいに思っている。つまり、深く考えていない。
それは他の冒険者も同じだ。
今の関係でも充分だが、雇用を続けると隠し切れなくなる。役に立つから、機を見て、正体を明かすのも悪くはない。
「し、失礼します」
色々考えていると、素朴な女の子が入ってきた。可愛い。
「座ってください」
「は、はい」
女の子は言われた通りに椅子に座る。
「さっそく質問です。あなたは魔物と仲良くできますか?」
「が、頑張ります!」
元気が良くて素直な答えだ。
じっと女の子を観察するふりをして、物陰に潜む青子に嘘か本当か確認する。
「嘘ついてない。ここに来る前も、獣人馬鹿にしてない」
青子の答えから、合格となった。
「分かりました。お名前を伺ってもいいですか?」
「ゆ、ユーフェミアと申します」
ユーフェミア? ゴルドー国の第三王女と同じ名前だ。
「ユーフェミアさん! 僕の国へようこそ!」
まあ、他人の空似だろう。王族関係者は僕のことをペテン師と思っているから、ここに来るなどあり得ない。
「あ、ありがとうございます!」
ユーフェミアは飛び上がりそうなほどの笑顔を見せる。可愛い。
机からジル母さんが作り出した通行許可証を手渡す。
「ゲートをくぐる際は必ず携帯してください」
ゲートは通行許可証を持たないで潜ると、ワープしない仕組みが施されている。スパイが来ないようにする配慮だ。
「わ、分かりました」
ユーフェミアは通行許可証を大事に大事に胸に抱く。おっぱいがプルンと揺れたので、慌てて目を逸らす。
「これで面接は終わりです。お疲れさまでした」
「はい!」
ユーフェミアの元気な声とともに、目線を机に落とす。あと50人面接しないといけない。そう考えるとため息しか出ない。
「ん? まだ何か?」
顔を上げると、未だにユーフェミアがそこに居た。
「あの、私もジーク様のお仕事のお手伝いをしてよろしいでしょうか?」
「僕の仕事ですか?」
突拍子もないことに変な声が出る。
「そ、その、お昼から3時間くらいしか働けませんが……ダメですか?」
なぜか泣きそうな顔をする。
「いえ……やることはたくさんあるので、十分です」
今は忙しく、猫の手も借りたいほどだ。
「では! よろしいのですね!」
太陽のように表情が明るくなる。そんなに嬉しいの?
「明日のお昼にジーク商会に来てください。話は通しておきます」
「ありがとうございます!」
ユーフェミアは頭を何度も下げると、名残惜しそうに部屋から出て行った。
そして、文字が読めるか、など仕事をする上で必要な技能を聞かなかったことを思い出す。
「まあ! 可愛いから良いか!」
過ぎたことは刹那で忘れて次の面接を始めた。
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「やった! やったわ!」
ユーフェミアは自室で一人、ベッドの上でコロコロと悶える。
「これからジーク様のお傍に居られる!」
ユーフェミアは興奮冷めやらぬという感じにうっとりする。
そして熱っぽくため息を吐く。
「ジーク様……本当に素敵な人」
思い出すだけで顔が熱く火照る。
そして細い指を体に這わせる。
「もしも……ジーク様に見初められたら……」
ユーフェミアは高ぶりを鎮めるため、己を慰める。
「ジーク様……はしたないユーフェミアをお許しください」
ユーフェミアは乱れた衣服のまま、目を瞑る。
「ジーク様……愛しております」
そして再び己を慰める。
まるで永久機関のように、ユーフェミアの体は高ぶり続けた。
次回からエッチな王女も仕事に加わります




