表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/62

魔物たちはジークにメロメロです~乳離れも考えよう

 ジークが森に来て1年が経った頃。


「ジークは可愛いの~」

「べろべろば~」

 リムとタマモはジークを両隣に寝転び、満面の笑みで話しかける。馬鹿親だ。


「リム! タマモ! そろそろ私たちにジークを寄越せ!」

「お乳を上げたい!」

 猫又のニャン、ミノタウロスのミノなど、数千の獣の始祖たちがジークを取り囲む。全員、ジークに乳を飲ませるため、乳房を露にしている。全員、大国を滅ぼせるほど大きいのに、ジークのためを思って、人間の姿をしている。


「馬鹿者が! ジークはワシが大好きなんじゃ! ずっと傍に居るべきじゃ!」

「人間はか弱いからの~ワシが傍におらんとすぐに死んでしまう」

 リムとタマモはジークから離れようとしない。子離れできない親だ。


「ん! ん!」

 ジークがウズウズと悶えると、場は一気に静まり返る。

 そしてお座りして、二パッと笑う。


「「「「可愛い~」」」」

 魔物たちはジークにハートを撃ちぬかれていた。


「凄い奴じゃ! 一人でお座りできたな! さすがワシの子じゃ!」

「さすがジークじゃ! 偉いのう! 偉いのう! ワシも鼻が高いぞ~!」

 リムとタマモはジークに理性を溶かされていた。


「子離れできない奴らだ」

 乳臭い洞穴にジルが現れる。


「おうジルか! どうじゃった」

「魔物の救出は順調か?」

 一同はジルが帰ってきても、ジークに釘付けだ。一瞥もできない。


「少しずつだが、私に同調する者が増えてきた。おかげで救出は順調だ」

 ジルはジークの前に座る。

 するとジークは天使のようなニコニコ顔で、ハイハイして、ジルの膝に乗っかる。


「「「「可愛い~」」」」

 魔物たちは大はしゃぎだ。


「うう! もうハイハイできるとは! 月日が経つのは早いもんじゃ!」

「この前までは首も座らなかったのに! 立派になったの~!」

 リムとタマモは感極まって泣いている。


「大騒ぎしすぎだ」

 ジルは苦笑しながらジークを抱きかかえる。


「そろそろ乳離れの練習を始めるか」

 ジルの言葉に魔物たちの尻尾や耳がザワッと逆立つ。


「ジークはワシの乳で育つんじゃ!」

「乳離れは早い! あと1000年は先の事じゃ!」

 リムとタマモはこの世の終わりのごとく慌てふためく。


「ジーク! もうお乳飲まないの!」

「いやよ! まだ三回しか飲んでもらってないのに!」

「ジークは赤ちゃんだからお乳じゃないとダメ~!」

 魔物たちは大ブーイングだ。


「すぐという訳ではない。しかし、人間は肉や魚、果物も食べる。ジークは人間だ。それを考えれば、いつかは乳離れの時が来る」

 ジルの強い言葉に、魔物たちは耳と尻尾をシュンとさせる。


「うう~ジーク! まだワシの乳が欲しいと思うじゃろ!」

「ずっと飲みたいと思うじゃろ!」

 リムとタマモは子供のように駄々をこねる。


「全く、これじゃあどちらが子供か分からないな」

 ジルはジークを抱えて外へ出る。


「どこへ行く気じゃ?」

 ぞろぞろとリムたちがジルの後を追う。


「精霊女王のところだ。そろそろ挨拶する頃合いだ」

 精霊女王は古の森を管理する精霊だ。ジルは、彼女に断りなく樹液や果実をもぎ取るのは不誠実と考えた。


「あの女のところか……あ奴はジークを好いておらん」

「もしもジークが嫌いなどと抜かしたら、ただではおかん!」

 タマモが殺気立つと他の魔物も殺気立つ。


「ジークのせいで世界が終わりそうだ」

 ジルはジークが愛されていて、とても嬉しかった。だからジークに微笑みかけた。


「エヘヘへ」

 ジークも可愛らしく微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ