商売編~ざまぁ目標ができました
「まずは町作りお疲れ様! 皆、ありがとう!」
笑顔でパチパチと拍手すると、皆もパチパチと拍手してくれる! ノリが良くて大変宜しい!
「次は商売をしてみようと思う。だからまずは、商売における目標を皆に伝える」
屋敷の会議室で、商売を始める前に、ジェーンやロクサーヌたちに目標を共有する。
「普通、商売は利益を上げるのが目的だ。でも僕たちは違う。最終目標は僕の町に来てもらうことだ」
「来てもらうとは、商売や働きに来てもらうという意味で、間違いありませんか」
ロクサーヌが確認のために皆を代表して質問する。
こういうのは意外とありがたい。自分の考えが間違っていないか確認にもなる。
「その通りだ。積極的に働きに来てもらい、町を発展させる。人を住まわせても良い」
皆静かに傾聴している。真剣だ。やる気を感じる。
「そのための計画を説明する」
地図を広げる。
「僕はゴルドー国へ行って商売する。そこで、信用できる民衆や商人を見つける。その人たちにだけ、町の存在を教える。魔物と共存していることも。すべてを飲み込んだ人たちが町に来る。問題は起こらない。普通に商売して終わり! ほら! なんか上手く行きそうじゃない!」
とてつもなく楽天的な考えだが、今は良い。悲観的だと前に進めない。
やることは簡単だ。商売して、信用できる人を見つけて、仲間にする。それを繰り返すだけ。
繰り返せば、いずれここで働いても良いという人が現れる。その人に色々と働いてもらう。
そうすれば、少しずつ、街並みは変わる。
「ジーク様が信用する人だけ来るんだ!」
「なら大丈夫!」
ロクサーヌの妹であるバレットとイライザはパッと顔を輝かせる。
「信用できない人は来させないよ」
微笑みかけると、安どした雰囲気になる。
彼女たちは肉親に売られた。言葉にこそしないが、人間に不信感を持っているのだろう。
「計画は分かりました。私たちは何をすれば宜しいですか?」
ロクサーヌが手を挙げて質問する。
「ロクサーヌたちは商人や旅人が住める村を作って欲しい。最低限生活できる環境で良い」
「分かりました。お任せください」
迷いのない良い言葉だ。
ロクサーヌたちが来てくれてよかった。
彼女たちが居なければ、僕は今も頭を悩ませていただろう。
「ジェーンとエミリアは僕についてきて」
ジェーンは元銀行屋、エミリアは商人の家系だ。商売をする時は、何かしら役に立つ。
「分かりました」
「ありがとうございます」
二人は慇懃に頭を下げてくれた。
「さて、魔物のお供は誰にしよう?」
前回と同じメンツかな? ちょっと面白くない気もする。
他の魔物にも、人間界を見てもらいたい。
「ヤタ! 僕と一緒に人間界へ来てくれ」
「よろしいのですか!」
頭上でじっと見守ってくれていた八咫烏を肩に乗せる。
「ヤタは三年間、僕のことを見守ってくれたからね。今度は一緒に遊ぼう」
「ありがたき幸せ!」
ヤタは頭をクリクリと頬っぺたに押し付ける。可愛い。
「俺も行くぜ!」
突然フェニックスが肩に乗ってきた! びっくりした!
「おいお前! ジーク様がびっくりするだろ!」
「ジークは強いから大丈夫だ」
「様付けしろこの鳥頭!」
「お前なんかに言われたくないね烏頭!」
また喧嘩だ。なぜか仲が悪い。
「喧嘩しない! さあ行くよ!」
強引に喧嘩を止めて、ジル母さんが作ったゲートへ入る。
「ジル母さんは凄いな。1000kmの道のりも一瞬だ」
ゲートを抜けると、ゴルドー国の空き家に到着する。
前準備として買っておいたが、そこそこ良い家だ。十人くらい住める広さ。商品棚も何もないけど、それは後で揃えればいい。
ここが拠点だ。
「大通りに面していて、商店街にも連なっている。絶好の立地だ!」
外へ出ると人並みに圧倒される! 小綺麗な衣服に清潔感漂う身だしなみ。香水の匂いもする。ドレスを着た人までいる!
出店もやっていて、大きな店もある。浮浪者は見えない。
皇都とは比べ物にならないほど活気がある!
「凄い……一瞬にしてゴルドー国へ……」
「ゲートの通行料だけでも巨万の富になる」
なぜか後ろに居るジェーンとエミリアが目を回している。
「は! 人間は馬鹿だな! 魔物はこれくらい朝飯前よ!」
「頼むから心臓を止めないでくれよ? 俺の血はジークにしか飲ませないって決めてんだ」
ヤタとスクがカチカチと口ばしを鳴らして笑う。ピッとデコピンしてお仕置きする。
「仲間なんだから笑わないの」
「は、はい。すいません、つい」
「へーい。反省してまーす」
スクは相変わらずだ。苦笑しかできない。
「ジーク様。まずは町を見て回りましょう」
エミリアに腕を抱きしめられる。柔らかく小ぶりなおっぱいが腕に密着する。
「私はこの町のことを知っています。ご案内いたしますね!」
ジェーンにもギュッと腕を抱きしめられる。柔らかく大ぶりなおっぱいが腕に当たる。
両手に花だ!
「全く、人間の雌が馴れ馴れしい」
「俺のほうが付き合い長いのになー」
なぜかヤタとスクに頬っぺたを頭でグリグリされる。
両肩に鳥? どういう状況?
「皆、仲よく見て回ろう」
兎にも角にも、観光だ!
「ゴルドー国は職人の町です。多種多様な製品を作り、輸出しています。また交易路としても栄えています。今は大陸の経済動脈とも言われていて、通行税だけでも相当なお金を得ています」
ジェーンがテキパキと町の案内をする。
「大飢饉を免れたって聞いたけど、それと関係してる?」
「大飢饉は害虫が原因。害虫は鉄や宝石を食べませんから」
「でも、職人の町で交易を重視しているなら、外から食べ物を輸入してるんじゃないの?」
「ゴルドー国の王はこういう時のために備蓄していたのです。ですから住人は飢えませんでした」
中中に頭の良い王様だ。もしかすると仲間に引きずり込めるかも。
「補足させていただきます」
エミリアがギュッと、痛いくらいに腕を引っ張る。
「ゴルドー国は他国の借金を肩代わりする代わりに、食料を輸入しています。ですから備蓄品が無くなっても経済が回っています」
おっと、エミリアの指摘も最もだ。
備蓄品だけでは減る一方。どこからか取ってくる必要がある。
ゴルドー国の王は相当したたかな奴らしい。場合によってはタマモ母さんたちの手を借りたほうがいいかも。
しばらく市場を眺めて回る。美味しそうな串焼きやフルーツ、綺麗なドレスやアクセサリー、武器まで売っている。
そしてなぜか、ギリギリと、二人に腕を引っ張られている。
「あら! 美味しそうなフルーツです! 見てみましょう!」
エミリアにグイッと引っ張られる! でもジェーンにガッチリ反対の腕を捕まれてるから動けない!
「ジーク様! 美味しそうなお饅頭がありますよ!」
ジェーンに引っ張られる! でもエミリアがガッチリ反対の腕を掴んでいるから動けない! ちょっと痛い!
「あら! あちらに綺麗な洋服が売っています! とても珍しいです! お母さまたちのプレゼントはいかがでしょう!」
エミリアがさらに強く引っ張る!
待って! 結構強い力! 二人とも相当強くなってない! 二つに分かれる!
「お前らいい加減にしろよ?」
「お前らはジークの雌だろ? 独占欲出してんじゃねえ」
ヤタとスクが二人を睨む。
二人は固まると、シュンと力を緩める。
「申し訳ございません」
「ごめんなさい」
二人は世界の終わりかのような落ち込みようだ。
「謝ってくれれば良いんだ! さあ、元気出して! 町を見て回ろう!」
「あれ~? ジークじゃねえか!」
ふざけた声が遠くから聞こえた。
「おいおい! あのジークが女侍らせてるぜ!」
さらにふざけた声が聞こえた。
「ハボックにパトリックか」
ハボックは皇都以来の再会だ。パトリックは三年ぶりの再会だ。
両者とも、嫌な思いでしかない。
「久しぶりだな!」
パトリックはでかい図体で娼婦を侍らせている。
「なんでこんなところに居る? 性奴隷たちの乳を吸ってたんじゃねえのか!」
ハボックまで娼婦を侍らせている。後ろにはハボックの取り巻きが居る。そいつらも娼婦を抱いている。
「ハボックはあの時以来だね! パトリックは三年ぶりか! 元気してた?」
「とっても元気だぜ! 何せSランクだからな!」
パトリックは娼婦の胸を自慢げに揉む。形が崩れてるけど、もしかして豊胸ブラ?
「Sランク! 凄いね! 三年前はAランクだったね!」
「ああ! 荷物持ちしかできない屑を雇ったのが三年前だ!」
パトリックはご機嫌な様子で、下品に笑いながら、娼婦とキスをする。
「あんときはマジで焦ったぜ! 魔物なんて怖くないって大法螺吹いてよ! 仲間にして、ドラゴンと出会ったら、武器を捨てちまった! アホだろ!」
「え~? 馬鹿?」
娼婦まで笑う。安物の化粧だと小じわは消せないぞ。
「あのドラゴンは迷子の小竜を探してただけ。知らないって言ったらすぐに飛んで行ってくれた。それが分かってたから、武器を捨てたんだ」
「ほらこの減らず口! 俺が注意してやったのに聞く耳持たずだ! あの時はAランク、今はSランクの俺様の説教を聞かねえんだぜ!」
パトリックは大通りに響くくらいため息を吐く。煙草の煙は人に吹きかけない。連れの娼婦までせき込んでるぞ。
「うわ~子供って嫌い! 実力も見えないなんて何様~?」
娼婦はパトリックに媚びるようにしなだれかかる。だから小じわが見える。あと鼻毛も。
「あの時、ドラゴンに腰抜かしてたAランクは誰だったかな?」
パトリックの目の色が変わる。
「ん~? ちいとそよ風が吹いたか? 今、ふざけたことを言った奴が居たような?」
こめかみに青筋ピクピク。こっちがピクピクだよ。
「あのドラゴンはかなりの強者だった。あそこで武器を持っていたら確実に死んでいた。自分の実力を自覚したほうがいいよ?」
パトリックを睨みつける。こいつは、クエストが失敗した原因を僕に押し付けた。それでチームを追放されたんだけど、実力も分かっていない奴の傍に居るなんて嫌だったから、喜んで出て行った!
「ふざけんなよこら!」
パトリックが剣に手を伸ばす。
「待ちな、パトリックの旦那」
ハボックがパトリックを止める。
「今こいつをぶっ殺したら、国を追い出されちまう。せっかくのもうけ話がパーだ」
「……そうだったな」
パトリックはすんなりと身を引く。ヤタとスクに八つ裂きにされなくてよかったな。二人は殺気満々で今にもお前たちを肉塊にしそうだ。
「儲け話? 興味があるな」
ここで引き返しても良いが、ハボックたちがここに来た理由を知りたくなった。皇都から100kmは離れている。なんでこんなところに?
「おいおい! まさか俺たちの仲間になりてえって言うのか! 冗談はよしてくれ! これはな、Aランク以上の冒険者しかできねえ高難易度クエストだ! 報酬もたんまりよ!」
ジャラッとゴールドの詰まった袋を見せる。
僕は500億ゴールド以上持ってるけど、それよりも明らかに少ないね。
「結構な報酬だね! それで、何をやってるの? もう帰るの?」
「帰らねえよ! またクエストがあるからな! 俺たちは金持ちだ!」
本当にうるさいな。ヤタとスクがガチガチと口ばしを動かしているのが見えないの?
「どんなクエスト?」
「うるせえよば~か!」
中指を立てる。手は洗おう。
「おい! お嬢さん! そんな一物の小さい奴よりも俺んとこ来いよ!」
「そうそう! 頭の悪いクソガキの相手なんて止めてよ!」
突如ハボックとパトリックが、ジェーンとエミリアに手を伸ばす。
ムカッとした!
「き、気持ちわる~い!」
「何なのこの人たち! ゴミよりも汚い!」
そしてジェーンとエミリアが大声で罵倒した!
「何そのじゃらじゃらした格好? それで私を口説くの? ガラス玉で作った偽物の指輪なんて見せないで! 私の目を腐らせるつもり? ネックレスも金箔! 中身は真鍮製! 恥ずかしくないの? 顔が悪いのだからアクセサリーくらいお金をかけたら?」
「言葉遣いは悪いし態度も悪いし顔も悪いし、あなたたちってどこに良いところがあるの? ジーク様よりどこが優れてるの? もしかして頭の悪さコンテスト? ああそれならジーク様は勝てないわ!」
エミリアとジェーンの罵倒で呆気にとられる。パトリックとハボックも同じだ。
「連れてる女も下品! 私なら召使にも雇わない!」
「皆40代の婆ね。ジーク様の良さも分からない腐れ女に腰振るなんてかわいそうな男!」
エミリアとジェーンの罵倒は止まらない。ヤタとスクまで固まっている。
「て、てめえら!」
「調子に乗ってんじゃねえぞ!」
パトリックとハボックが鞘に手をかける。
「きゃ~! 助けて! この人たちが嫌らしい物を見せようとしてるわ!」
「すっごい小さ~い! しかも洗ってないし皮被り! 助けて! 犯されるわ!」
エミリアとジェーンが悲鳴を上げると、大通りが騒がしくなる。遠くから騎士が迫る音が聞こえる。
「て、てめえら覚えとけよ!」
「絶対に泣かしてやるからこのくそ女ども!」
パトリックたちは一目散に逃げ去った。
「雑魚が! ジーク様に女の扱いで勝てる訳無いだろ!」
「ジーク様から私たちを寝取る? 天地がひっくり返ってもあり得ねえよ! いっぺん死んで来い!」
二人は逃げ去るパトリックたちに中指を立てて、鼻を鳴らした。
「な、なかなかの啖呵だったね。面白かったよ」
凍り付いた顔で笑う。
二人は、あっと顔を覆う。
「も、申し訳ありません! あの男たちがあまりにも無礼で!」
「頭に血が上ってしまいました!」
二人は土下座する! ちょっと待って! 路上では止めて!
「二人とも顔を上げて! 怒ってないから!」
「そうだぞ!」
「人間のくせに面白いやつだ!」
慌てていると、ヤタとスクが二人の前に下りる。
「いい声だった! さすがジーク様の雌だ!」
「魔物じゃできない罵倒だ! 惚れ惚れしたぜ!」
ヤタとスクが二人を認めた。
「そ、そうですか?」
「やっぱり二人とも頭に来てたのね!」
そしてジェーンとエミリアは笑顔になる。
「……まあ、いいか」
とりあえず、観光は終わりだ。
「あいつらを泣かせれば、商売は成功したって感じだな」
あいつらは金を求めてここに来た。つまりあいつらの裏には商人が居る。
あいつらの雇い主に勝つ。最初の目標としては良いだろう。
「パトリックにハボック! どっちが上か試してみようぜ!」
今からワクワクする!
さあ! やろうか!
長い!
もう少し短く書きたい。




