商売編~ジークは勝ち確です
町を大きくする。そのために商売をすることになった。
だけど僕は商売をしたことがない。お金も運用したことは無い。
だから、その道のプロを迎えに行く。
「ジーク様!」
「ジェーン! 一ヶ月ぶりだね!」
アトランティス中央銀行に勤めるジェーンと出会う。
連絡なしでいきなり銀行へ行ったから、驚かせてしまった。ジェーンの大声で皆に注目を浴びてしまったから、シーと指で静かにするように言うと、あっとジェーンは口を噤む。ちょっと可愛い。
「奥のお部屋へ」
「分かった」
いつも通り奥の客室へ向かう。
僕はここでも王様扱いだ。
「ジーク様? 何か御用で?」
豪勢な客室に入ると、さっそくジェーンは本題に入る。僕の顔色から、真剣な雰囲気を読み取ったのだろう。
とても空気が読める。
「町が完成して落ち着いたから、商売を始めようと思ってね。僕はやったこと無いから、ジェーンの知恵を借りたい」
「私ですか?」
「ジェーンは銀行に勤めていたからね。お金の管理や納品の期限とかを管理して欲しい」
「でしたら! ついに私もジーク様の町へ行けるのですね!」
ジェーンは町へは呼ばず、アトランティス中央銀行で職務に没頭するように命じていた。
町が出来上がっていなかったのが理由だ。
「もちろんさ! 母さんたちもジェーンの働きを認めてる」
「ありがとうございます!」
ジェーンは本当に嬉しそうにガッツポーズする。そこまで嬉しがるとは思わなかった。
「そんなに嬉しいの?」
「とっても嬉しいです!」
目をキラキラさせる。
「ジーク様の町は資源の宝庫です! 魔物の労働力! 蜂蜜など高価な素材! 魔物の素材! 薪木や小麦! すべてが国を動かせるほどの力を持っています! 私はジーク様が世界にどんな影響を与えるのか見てみたかった! それが見れる! とても光栄です!」
「大げさだな。僕は世界の支配者になるつもりは無いよ?」
「ジーク様? あなた様は支配者になってしまうのです。なぜならあなた様は無限の資本があるから」
ジェーンはクスクスと悪い顔で微笑む。
「あれま、悪い顔だ」
「仕方がありませんわ。必ず勝つゲームが嫌いな人間はいません」
ジェーンはゾクゾクしたように体を震わせる。
その様子を見ると、何となく楽しくなる。
「勝つゲーム? 商売に絶対の成功は無いと思うけど?」
「絶対はない。確かにそうですね。ですがそれは資本に限りがあるからです。あなた様には当てはまらない」
「資本ね? なぜそれがあるから勝てると?」
「商売に限らず、この世界は資本でなりたっています。奴隷は体力という資本を買い主に提供し、見返りとして食事などを得る。農家は米や小麦を対価に金を得る」
「なるほど。僕も冒険者だった。冒険者は剣術や魔術など体を資本に対価を得る」
「ご理解が早いです! しかし資本には限りがあります。そして資本は何もしなければ減ります。それは自然の摂理。だからこそ人は資本を増やすために戦います。資本が無くなった時、人は負けるのです」
「僕は広大な古の森の王だ。そう考えると、資本は無限にある。たとえ負けても最後は勝ってしまう」
ジェーンはうっとりとした表情になる。
「無限の資本を持つあなた様に勝てる相手はいません。それは国が相手でも同じ。だからこそ、あなた様がどのように勝ち上がるのか見てみたい!」
「どうせなら美しく勝ちたいね。誰もが心躍るような勝ち方をしたい」
「お手伝いさせていただきます」
スルリとジェーンは僕の隣に座り直し、耳元で囁く。
「ジーク様……町へ行く前に、私の初めて、受け取ってもらえますか?」
ジェーンの頭を撫でてキスをする。
「良いの? 僕、ジェーンのことを無茶苦茶にしてしまうかも?」
「構いません」
ジェーンは僕に口づけを返す。
「なら、すぐに外へ出よう」
「ああ……申し訳ありません。まだ仕事中でして」
ギュッと、痛いくらい体を抱きしめる。
「僕の命令が聞けない?」
「ああ! ジーク様の命令は絶対です!」
ジェーンと熱いキスを交わした後、高級宿屋へ移動し、食事も忘れて愛し合った。
「商売を行うならゴルドー国が宜しいかと」
汗ダラダラでベッドに倒れていると、ジェーンは僕の上に跨ってキスをする。
「ゴルドー国? ここじゃダメ?」
「大飢饉の影響で世界中、治安が悪くなっています。皇都も例外ではありません。商売をしていたら、強盗に入られる。そんなことも考えられます。一方で、ゴルドー国は唯一、大飢饉の影響を免れた国です。あそこなら商売が成り立つでしょう」
「ありがとう。ジェーンを味方につけて、本当に良かった」
褒めるとジェーンの口づけは激しさを増す。
「まだ欲しいの?」
「ええ……まだ足りません」
「欲張りだな」
グッと力を入れると、ジェーンは泣く。
「あなたを味わえば味わうほど! 離れられなくなる! もっともっと欲しくなる! こんなの信じられない!」
僕たちは朝まで過ごした。
「ジーク様……愛しています」
「僕も、愛しているよ」
朝、クタクタになっても、僕とジェーンはキスをしていた。
作者として商売編は結構難しい。
ジークが勝つのは確定しているから、詰将棋のように、いかに美しく、面白く勝つかが見せどころ。
しかし変に気張ると説明描写ばっかでテンポが無くなる。でも説明描写が無いと意味不明になる。
匙加減が難しいが、一生懸命頑張るしかない。
ちょっと流れが分からないな、適なことがあれば、気軽にコメントして頂けると勉強になります(喧嘩にならないように気を付けます)




